黄昏 た そ が れ  日光・東北編       南伸坊さんと、糸井重里。昔なじみのふたりが、始終しゃべりながら小旅行。前回は鎌倉の名所をめぐりましたが、今回は日光、松島、花巻あたりを回ります。ゆっくと変わる風景と、めくるめく無駄話。いったいいつまで続くのかな‥‥? そしてこの不思議な企画は、なんとすべてをまとめて本になるのです。いえ、ほんとの話です。
第23回 子どもは、おもしろくない。
糸井 昔の話をするとよくわかるけど、
子どものころの自分たちっていうのは、
主役としての「格」が、まだないんだね。
南 「格」。
糸井 うん。いまの自分からさかのぼって、
「バカなことをしたもんだよ」とか
そういうことを言えるぐらいのもんでさ。
本人がおもしろくしようと思って
やってたわけじゃないでしょ。
南 その当時に?
糸井 そうそう。
だから、実もフタもない言い方をすると、
子どものころの話は、
懐かしくはあっても、
おもしろくはないというか、
クリエイティブがない。
南 あー。結果的に、当たりはあっても。
糸井 うん、受け身なんだよね。
さっきの伸坊の弁論部の話も受け身じゃん。
「こりゃ、おもしろい話になるぞ」と思って
弁論部に入ったわけじゃないでしょ。
南 そうね。
糸井 誰でも、思い出せば
こんなバカなことやって怒られた、
みたいな話はあると思うんだけど、
そりゃ、「あるよ」って話でさ。
だから、
「ちっちゃいときから、
 オレはおもしろかった」っていうのは、
つくり話なんじゃないかな。
南 ああ、なるほどね。そうかもしれないね。
糸井 そう思うなぁ。
その話をおもしろくしてるのは、
いまの自分の目線なんじゃないかな。
南 それで思い出したのは、
赤瀬川さんがどこかに書いてた話でね。
あの、藤森(照信)さんが、
小学校に入ったとき、最初に先生が
「好きなところに座りなさい」
って言ったらしいんだよ。
こう、机とイスがあってさ。
糸井 うん。
南 で、「好きなところに座りなさい」
って言われたもんで、藤森さんは、
窓枠のところに座ったんだって。
こう、開いてる窓のところに。
糸井 うん、うん。
南 そこが好きなところだったから。
で、みんなはやっぱり
ふつうに机に向かって座ってるわけ。
で、最初は窓のところに座ってたんだけど、
しばらくしたら、なんか、
違うかもしれないと思って。
ほんとは窓枠がいちばん好きなんだけど、
どうやらここじゃないのかもしれないと思って、
机とイスのところに行って座ったと。
まぁ、そういうことを赤瀬川さんが書いててね。
それは、藤森さんらしいと思うんだけど、
いまの話を聞いてなるほどなと思って。
つまり、ずーっと意地を張って、
窓枠に座っているっていうのとは違う。
糸井 そうだね、そうだね。
南 違うことしてやろうなんて、
まったく思ってないわけだからね。
糸井 そうそうそう。
で、そういう出来事を
子どもがしたっていうのを
親から見たらおもしろいと思うんだ。
南 そうだね。
糸井 でも、子どもにとっては、
自分がこういうことしたって話は、
いくら親から見てユニークでも、
本人は正当だと思ってやってるから、
おもしろくない。
南 なるほどね。
糸井 常識がまだできてないから。
南 それがふつうだから。
糸井 うん。たとえばね、うちの社員の子どもで、
小学生低学年の男の子なんだけど、
お姉さんたちのおっぱいを
虎視眈々と狙ってる子がいるわけ。
南 はははは。
糸井 こんなちっちゃいのに、
こう、子どもの振りをして、
なんとかおっぱいに触ろうとするんだよ。
「ちょっとバンザイしてみて」とか言って。
南 はははははは。
糸井 で、それはものすごくおもしろいんだけど
本人からすると、たぶん、
おもしろいと思ってやってるわけじゃない。
南 ああ、なるほどね。そうかもしれないね。
糸井 ちょっと、それはいま、整理がついたな。
いい話とか、悲しい話とかは、
ほんとうかもしれないけどね。
つまり、親がケンカしてたときの
どうしようもない悲しさなんかは、
むしろ、子どものころのほうが
混じりっ気のないものかもしれないけど。
南 うん。
(なるほど。つづきます)

2009-10-26-MON

前へ 最新のページへ 次へ

(C)HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN