黄昏 た そ が れ  日光・東北編       南伸坊さんと、糸井重里。昔なじみのふたりが、始終しゃべりながら小旅行。前回は鎌倉の名所をめぐりましたが、今回は日光、松島、花巻あたりを回ります。ゆっくと変わる風景と、めくるめく無駄話。いったいいつまで続くのかな‥‥? そしてこの不思議な企画は、なんとすべてをまとめて本になるのです。いえ、ほんとの話です。
第41回 SLと濁流とダム。
糸井 SLっていうのはさ、
昔、こう、エロティックなシーンに、
そういう行為の隠喩として
突然、使われたりしたもんだよな。
南 へぇ(笑)。そうなんだ。覚えてないな。
糸井 使われてたんだよ。
たとえば、その、
連結器が「ガッチャン!」って
つながるところだとかさ。
南 ああー、なるほど(笑)。
糸井 石炭をがんがんくべて燃え上がって
加速するピストンの動きなんて、
わかりやすいでしょ。
南 「ボッ、ボッ、ボッ、ボッ!」って。
糸井 うん。その力強く動く様子とかね。
上下に揺れるやら、左右に動くやら、
回転するやらで。
南 ははははは。
糸井 なにが言いたいかというとね、
デジタルの時代、CGの時代には、
ああいう表現がなくなったね。
南 わざわざ、
そんなことを言いたかったのか(笑)。
糸井 うん(笑)。
南 たしかにね。SLで、そういう行為をね。
あの、「ボーーー!」っていうのも、
そういうふうに使う場合にいいね。
糸井 いいだろう? 
なんていうか、わかりやすいだろう?
南 「シュシュシュシュシュシュ
 シュシュシュシュシュシュシュ‥‥
 ボーーー!」だもんな。
一同 (笑)
糸井 SLマニアとか、いるわけだよね。
だってオレ、子どものころ、
蒸気機関車が鉄橋渡るときの
「ボーーー!」で
おしっこもらしたことあるもん。
南 えっ、ほんと?
糸井 鉄橋のそばで川遊びしてたらさ、
「シュシュシュシュシュシュ」って
蒸気機関車がやって来てね、
「ボーーー!」ってなったときに
「ジャーー!」って。
一同 (笑)
南 へぇ、すごいね、その話。
糸井 それくらい、あの音とか迫力は、
ボディーにくるものだということですよ。
花火とか近くで見るとさ、
やっぱりボディーに響くでしょ。
南 うん、そうだね。ドーンと。
糸井 子どもたちは、ああいうものに接することで、
「世の中には、かなわないものがあるんだ」
っていうことを学ぶんだよ。
「ぼくは子どもだから小さいんだぁ」
みたいな気持ちを、わかっていくわけだよ。
南 なるほど(笑)。
糸井 雷とか、台風とかさ。
台風のあとの川の濁流とか、
すごかったじゃない?
南 うん、うん。
糸井 オレは台風のときの増水した川に
ブタが流れてきたのを見たことがあるんだから。
南 川を、ブタが。すごいね。
糸井 すごいよ。「おわぁー!」だよ。
南 濁流って、オレも子どものころは好きで
なんだか知らないけどよく見てたなぁ。
板橋の駅前のところに、
いわゆるドブ川があって、
「ゴォー」って流れ込んでる
場所があるんだけど、
その濁流を、じぃっと見てた。
糸井 濁流ファンだね。
南 あ、濁流ファンだったのか、オレ。
糸井 オレは、濁流ファンだよ、わりと。
このあいだ、
『放流』っていうDVD買ったもん。
南 なにそれ。
糸井 ダムの放流シーンだけを集めたDVD。
こう、溜めに溜めたものすごい量の水を、
「ド、ド、ド、ド、ド、ド!」と。
南 ははははは。そういう場面ばっかり?
糸井 そう、延々続くんだ、と思うよ?
じつは、まだ観てないんだ。
南 ははははは。買ってはみたものの。
糸井 うん。観るのかな、あれ。
というか、ダムの放流ってのも、
かなりエロティックだと思うな。
南 ああー、なるほどね。
糸井 マニアにはたまらないんじゃない?
南 放流マニア。
糸井 そうそう。
放流マニアと濁流マニア。
南 どっちかっていうと、オレは濁流かなぁ。
(もうちょっと、つづきます、けど)

2009-11-16-MON

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