糸井 | この前、テレビ番組の収録現場で偶然 山田五郎さんに会ったんだけどさ。 |
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みうら | ええ、ええ、ええ、聞きました。 糸井さんが山田さんに 「みくびった」とおっしゃったと 聞きました。 |
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糸井 | ちがう、ちがう、 「みそこなった」 だよ。 |
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みうら | 「みそこなった」ですか。 |
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糸井 | 会ったとたん、 「山田さん、ホントのこと言って オレはみそこなったよ」 と言ったんだよ。 「なに、あのギターは? あきらかに、 あたまに毛のある人の弾き方だろ、 あれは!」 |
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みうら | しかも、特に 毛が長くないと弾けないギターです。
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糸井 | そうそう。 長い髪で、首振り回す弾き方だよね? そして、しかも あのステップは、足の長い人用ですよね? そうですよね? |
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みうら | それはそうです。 |
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糸井 | それをさぁ。 |
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みうら | そうなんですけどね。 |
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糸井 | そしたら、山田さんは 「それは濡れ衣です」 「そんな、笑わせるようなムードだったと 思いますか?」 と言いはじめたんだよ。 まるで大岡越前守の前で 農民が顔をあげるように 「年貢のことをご存じでしょうか!」 と、オレに訴えたわけ。 |
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みうら | はい、はい、 直訴ですね。 |
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糸井 | 「笑わせてはいけないムードだったんですよ」 「みんなが二枚目でなくちゃ いけなかったんですよ」 その犯人は‥‥ オレはみうらだと思う。 |
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みうら | ちょ‥‥(笑)、 ま、そうなりますよね。 |
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糸井 | オレは、山田さんにこう言いました。 「まるで吉田拓郎が降りてきたかのような みうらの歌う姿勢については、 オレは前々から批判的だったんだよ」 |
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みうら | (開き直ったように) まぁ、そうですね。 たしかにそうです。 30年ぐらい前から、そうです。 |
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糸井 | 歌詞の中に笑いを入れてすませてる、 だから二枚目に歌ってもいいと思ってるんだ、 まったく。 |
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みうら | まぁ、そうですね。 そうでした、正解です。すみません。 |
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糸井 | あのロジックは オレは受け入れられない、 そして、山田五郎よ、 君たちまでがそういう振る舞いにおよんだ。 |
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みうら | うははは。 |
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糸井 | オレは民衆を代表してそう訴えたわけ。 |
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みうら | そっちが民衆なんですね? はい、はい。 |
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糸井 | 「山田さんは ヨーロッパ帰りかもしれないけども、 いいかげんにしろよ!」 彼は彼で、 「ほんとうの悪は、みうらさんですよ」と。 みうらの歌う姿勢に対して ずっと思ってた心が 山田さんに会ったことで、 爆発しました。 |
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みうら | しかも、あのライブで 1曲しか出てない、山田さんにね? ビデオで見返して改めてわかったんですけど、 ギター弾くとき、山田さんは、 ものすごく震えてたんですよ。 |
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糸井 | そうなんだ。 |
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みうら | 山田さんは 「震えの山田」と呼ばれるくらい、 ギター持ったときにロックが降りてきて 最高の震えがくるんですよ。 |
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糸井 | つまり、 やぎが生まれて立ち上がるとき‥‥ |
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みうら | そう、プルプルって震えるでしょ? あれですよ。 音楽に対する恐れが、出てる。 そんな50代は、そうそういないですよ。 |
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糸井 | 50代ですよね。 |
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みうら | 50代ですから。 |
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糸井 | オレは、彼がやってきたことについて、 認めてるから、こそね。 みうらがどんなに 二枚目の歌を唄ってもいいけど──つまり、 おまえらよ、どうして おもしろいことの ふた言が言えないんだ! |
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みうら | わー。 |
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糸井 | オレは目を閉じるよ。 |
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みうら | 目を閉じるよ。 |
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糸井 | あのー、昴よ。 |
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みうら | 昴は歌ってない、 一曲もその歌は出てない。 |
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糸井 | 目を閉じて‥‥ |
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みうら | ええ。客席に、よく最後まで がまんしてずっと座ってらっしゃった、 ぼくはそう思いました。 (つづきます) |
2009-08-03-MON