笑福亭鶴瓶の落語魂。
その世界のすべてを愛するということ。

第29回 初舞台の場所。

鶴瓶 こないだね、
白の全身タイツ着たんですよ。
ナイナイの番組で。

顔だけ出して、バレないように、
箱のなかでじっとしていたんです。
ほんで最後、見つかって出されるんですよ。

でも、ずーっといて、
長いこと箱の中にいてると、
これ、いっぺんぬくぅなってたら
おもろいやろなと思って。
全身タイツやし。

それで、ぬくなれ、ぬくなれって
ずーっと箱の中で思ってたら、
ほんとに、ぬくぅなったんですよ。
糸井 (笑)
鶴瓶 出てきたら、
全身タイツでぬくぅなってるからね。

ナイナイが
「なに前をぬくぅしてる!」って(笑)
……あれは、ぬくぅなりましたね。

まぁ、こっちが、
「これがふつうの時間です。
 あなた、大きさ、わかんのんか?」
と言えばいいわけです。

ふつうの時間もこんなんです。
ぬくいんです。
いつもぬくいぐらいのあれですよ、と。
糸井 (笑)
鶴瓶 有事の時には、
いつでも動くで、いうやつですよ。
糸井 (笑)すごいですね。
五三歳で、
テレビに映る場面で、大きくしてる人って。
鶴瓶 いつも、
「こんな五三歳、ないでぇ」
っていうのがぼくの目標ですね。
糸井 そういえば、たまに、
日本国の法律で生きてないみたいな人が、
いっぱいいるじゃないですか。

大阪とかには今でもいますよね。
売れるはずがないものばっかり置いてる店とか。
鶴瓶 もう、ぼくらの初舞台のところが、
そういうとこだったんです。なに置いとんねんと。
糸井 うん。片っぽの草履みたいな。
鶴瓶 そうそう。
そういうのが集まってて、
ちゃんと売れてんのよね。
「なに置いとんねん」といっても
店の人は、「売れてるやん」って。
そこがぼくの初舞台の場所だったんですよ。

眉毛、マジックで描いてる
オバチャンがいつも座ってはって、
その人に求婚してるオッサンがおるんです。

串カツ屋の犬が、
ときどき、おらんようになるんです。
毎回、犬が変わっとる。
そんなところです、初舞台は。
その楽屋へ入る入口が、えづきそうになる臭さで。
糸井 (笑)
鶴瓶 こんなもん、人を笑わす状態やない。
そこ通って、
かならず「ウッ!」てなって、楽屋へ行く。
そういうところで育っとんねや、ほんまに。
糸井 その臭いは
今でもきっと脳の中に残ってますよね。
鶴瓶 今でも、そこへ行きゃ臭いますよ。
糸井 あはははは!
鶴瓶 臭いますよー。
臭いですね、人間って。
人間が出す臭いって、臭いなぁ。

そこがおもろいんやけどね。
それが何年も通うと
懐かしい臭いになってくる。

もちろん、臭いの。
だけど、その臭いが、
イヤじゃなくなる鼻があるんですよね。

もう、今行ったら、
またイヤかもわかりませんよ?
でも、そういうところでやってるとき、
そこは新花月いうところですけど、
そこの臭いのところに行くと、
自分は、また奮い立って
何かをしようって思うというか。

どういう場所かというと、
昼の日中ですよ、
神社でそのマジックのおばちゃんと
誰かが交尾してるような。

「……え?」て思たもん。神社やで?
ごっついおばちゃんでね、
いつもパンツはいてはれへんのですよ。
糸井 それを口説いてるオッサンがいて、
時には交尾もして……。
鶴瓶 それをタクシーの中からフッと見てしまう。
それも神社で。
わかってやっとるんか? っていう。
  (つづきます)


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2005-01-11-TUE

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