笑福亭鶴瓶の落語魂。
その世界のすべてを愛するということ。

第28回 今でも、ぬくいですよ。

糸井 タモリさんがすごいのは、
まじめな話とまじめじゃない話の境界線が、
まったく見えないところ、ですよね。
鶴瓶 別にお客さんいてなかっても、
『いいとも』で、朝会うとかならず、
まわりに誰もいなくても、
「これは、どうも、あの、
 ご挨拶が遅れましてどうも」
って、ずーっと、やらはるねんで。

俺もたのしいからずっとこたえてる。
誰に見せるわけでもなく。

誰もいたはれへんのに。
そこで近くにおもろいわぁ、
いう人がおったらええのに、
いてなかったりしますよ、
階段の途中でもそうだから。
糸井 「そういう人間のタイプ」なんだろうね。

あの……鶴瓶さん、人の食べてるものを、
「ちょっとそれ、食べてもいい?」
といって、
その人と同じスプーンで食べられます?

これをきくと、
食べられる人と
食べられない人がいるんですけど……。
鶴瓶 それは言う人によるけど、
ぜんぜん知らん人のは、いややん。
糸井 ぼくは、笑いの人って、そこのところで、
ほんとは食べない人が多いんじゃないか、
という気がするんです。

冷たいというか、クールというか、
距離を持っていたいというか……。
鶴瓶 確かに、食べないですよ。
糸井 あるいはその、
似たようなことで言えば、
懐かしい人に会ったときに、
抱きつきあうよりは、
「よう」と言いあって、
ある距離を持ったままよろこんでいる、
というのが、笑いの人だと思うんです。

もちろん、テレビカメラに映ってると、
抱きついたり握手したりするんだけど。
鶴瓶 ちょっと引いて見る人、多いですよ。
糸井 笑いみたいな仕事をしてる人って、
そういう人が多いんじゃないか、
という印象がありまして。
タモリさんは、典型的にそうですよね。
鶴瓶 俺はね、まだちょっと食べかけますわな。

ぼくはまだね、
誰か見て知ってたら食べますわ。
うまいかもわからへんし。
でも、ほとんどの笑いの人間は、
食べないでしょうね。

ぼくは「家族に乾杯」という
番組をやっているじゃないですか。
地方に行っておばさんとしゃべったりするのを
テレビ撮りながら。

あれが自分ですし、
まぁ、もともとあんな性格なんでしょうけど、
あれをずっとやれてますからね。

日常、声かけられても、
「鶴瓶さん、写真撮って!」
って言われたら、いやとは言えないやん。
ことわるんやったら、番組のカメラと一緒に
日本全国うろうろするなと言われますからね。

ぼくに対して、
「鶴瓶ちゃん、あの、ちょっと両替して」
という人、いてたよ。
糸井 (笑)
鶴瓶 まあ、イヤなんは、
「ちょっと写メール撮って」
「ちょっとチューして」
という男の人。
酔うてはるんですけど、これはちょっと。

いやや、もういややとは言います。
ちょっとええなと思う女の人に、
道で聞かれたら……それもさせませんよ。
させませんけれども。
糸井 (笑)今、複雑になってた。
鶴瓶 だんだん、ハードルが低くなってきた。
糸井 なんたってほら、
女湯を覗く番組中に、
ぬくくなった人ですから。
鶴瓶 ぬくぅなって……
あれはでも、二十代ですからね。
糸井 二十代のころって、何かとぬくいですよね?
鶴瓶 今でも、ぬくいですよ。
糸井 (笑)しょっちゅうぬくいですか?
鶴瓶 しょっちゅうぬくい、
ということはないけど、
まあ、ぬくい自信はありますね。
糸井 (笑)ここはぬくくなっては
いけないっていう場合も、
ぬくくなるほうですか?

たとえば、園遊会とかあるじゃないですか。
鶴瓶 ああ、そんなところでぬくなりません!
よぉ、そんなこと言うなぁ。
そんなところでぬくなるのは、頭おかしい。
  (つづきます)


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2005-01-07-FRI

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