糸井 |
タモリさんがすごいのは、
まじめな話とまじめじゃない話の境界線が、
まったく見えないところ、ですよね。
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鶴瓶 |
別にお客さんいてなかっても、
『いいとも』で、朝会うとかならず、
まわりに誰もいなくても、
「これは、どうも、あの、
ご挨拶が遅れましてどうも」
って、ずーっと、やらはるねんで。
俺もたのしいからずっとこたえてる。
誰に見せるわけでもなく。
誰もいたはれへんのに。
そこで近くにおもろいわぁ、
いう人がおったらええのに、
いてなかったりしますよ、
階段の途中でもそうだから。
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糸井 |
「そういう人間のタイプ」なんだろうね。
あの……鶴瓶さん、人の食べてるものを、
「ちょっとそれ、食べてもいい?」
といって、
その人と同じスプーンで食べられます?
これをきくと、
食べられる人と
食べられない人がいるんですけど……。
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鶴瓶 |
それは言う人によるけど、
ぜんぜん知らん人のは、いややん。
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糸井 |
ぼくは、笑いの人って、そこのところで、
ほんとは食べない人が多いんじゃないか、
という気がするんです。
冷たいというか、クールというか、
距離を持っていたいというか……。
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鶴瓶 |
確かに、食べないですよ。
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糸井 |
あるいはその、
似たようなことで言えば、
懐かしい人に会ったときに、
抱きつきあうよりは、
「よう」と言いあって、
ある距離を持ったままよろこんでいる、
というのが、笑いの人だと思うんです。
もちろん、テレビカメラに映ってると、
抱きついたり握手したりするんだけど。
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鶴瓶 |
ちょっと引いて見る人、多いですよ。
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糸井 |
笑いみたいな仕事をしてる人って、
そういう人が多いんじゃないか、
という印象がありまして。
タモリさんは、典型的にそうですよね。
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鶴瓶 |
俺はね、まだちょっと食べかけますわな。
ぼくはまだね、
誰か見て知ってたら食べますわ。
うまいかもわからへんし。
でも、ほとんどの笑いの人間は、
食べないでしょうね。
ぼくは「家族に乾杯」という
番組をやっているじゃないですか。
地方に行っておばさんとしゃべったりするのを
テレビ撮りながら。
あれが自分ですし、
まぁ、もともとあんな性格なんでしょうけど、
あれをずっとやれてますからね。
日常、声かけられても、
「鶴瓶さん、写真撮って!」
って言われたら、いやとは言えないやん。
ことわるんやったら、番組のカメラと一緒に
日本全国うろうろするなと言われますからね。
ぼくに対して、
「鶴瓶ちゃん、あの、ちょっと両替して」
という人、いてたよ。
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糸井 |
(笑)
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鶴瓶 |
まあ、イヤなんは、
「ちょっと写メール撮って」
「ちょっとチューして」
という男の人。
酔うてはるんですけど、これはちょっと。
いやや、もういややとは言います。
ちょっとええなと思う女の人に、
道で聞かれたら……それもさせませんよ。
させませんけれども。
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糸井 |
(笑)今、複雑になってた。
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鶴瓶 |
だんだん、ハードルが低くなってきた。
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糸井 |
なんたってほら、
女湯を覗く番組中に、
ぬくくなった人ですから。
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鶴瓶 |
ぬくぅなって……
あれはでも、二十代ですからね。
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糸井 |
二十代のころって、何かとぬくいですよね?
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鶴瓶 |
今でも、ぬくいですよ。
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糸井 |
(笑)しょっちゅうぬくいですか?
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鶴瓶 |
しょっちゅうぬくい、
ということはないけど、
まあ、ぬくい自信はありますね。
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糸井 |
(笑)ここはぬくくなっては
いけないっていう場合も、
ぬくくなるほうですか?
たとえば、園遊会とかあるじゃないですか。
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鶴瓶 |
ああ、そんなところでぬくなりません!
よぉ、そんなこと言うなぁ。
そんなところでぬくなるのは、頭おかしい。
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(つづきます)
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