鶴瓶 |
笑いがわからない人のほうが、
おもしろいですよ。
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糸井 |
ちがうところでは、
その人も、
ちゃんと笑ったりするんですよね。
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鶴瓶 |
それで、また、
不思議なところで、笑うんです。
それから、
ベタなことというのは、よく、
「今日の会場は全体がベタな雰囲気やった」
とかいうやないですか。
でも、そこを敢えて笑わさなあかんベタを、
「まぁ、それじゃあ、やろうか」
と、最近は、思えるようになったんです。
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糸井 |
あぁ、なるほど。
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鶴瓶 |
いままでは、
もう、それが絶対イヤだったんです。
でも、ベタって、ものすごい大事です。
こんなこと言うて笑わすのイヤやと思うから、
これまでは、避けてきたわけですよ。
だけど、敢えて、
自分がベタなところをなぞり、
まぁこれはみんなが笑うねんから、
それはもう、
そっちのほうがええねんいうことを、
ようやく、いまは、思える時期ですね。
ベタは、強いですよ。
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糸井 |
ここでみんなが求めてるし、
自分もそんな気持ちになっていいよね、と。
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鶴瓶 |
そうです。
ベタを、ものすごい言えるのは、
タモリさんですね。
タモリさんって、
あんなシュールな人ですよ。
いろんなこともわかってんねんけど、
毎回、「笑っていいとも!」が終わったあとに、
「えー、それでは、新春特別夏休み企画!
特別ゲスト、福山雅治です!」
って言うてはるのよ。
で、客がギャー言う。
「ちがいますよ?
おかしいじゃないですか。
新春特別夏休みゲストって。
こんなん信じてたら、
オレオレ詐欺にかかりますよ」
そう言わはって。
だけど、みんな、ワーッてよろこぶんです。
「ありませんよ」って言われても。
それ、もう二年三年ぐらい言うてはりますよ。
それが、すごい!
そのベタが、その場にはいちばんいいんです。
本人は、わかってるのね。
もう百も承知でやってるんですよ。
別に自分がいいたいとかじゃなくて……
あんなシュールな人が、ベタを三年間、
これがいいゆうて、ずーっとやりつづけられる。
ごっつい人ですよ、あの人。
ベタを勇気をもって言える。
ぼくらが横にいてるの知ってますよ、
また言わはるな、と。だけど言う。
そばにいてる人に、おまえらも一緒の仲間だぞ、
ということで言わはるんです。
「また言うてはる」じゃないんです。
そういうすごさなんですよ。
ぼくとかさんまは、
それは絶対、言えないですね。
言えないことで、
ええかっこしてるわけじゃないんですよ。
だけど、おんなじことをなぞるいうことは、
できないたちなんですよ。
まだぼくはヒヨコですね。
だけどタモリさんは、
あないなおんなじところに、
球を、ずっと投げつづけて……。
あの人のことは、そばでいつも見ていて、
この人、すごいなぁって、
もうほんとにそう思いますわ。
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(つづきます)
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