1982年。
「内山田洋とクール・ファイブ」の
メンバーだった前川清さんの
ソロ第一作となった歌のタイトルは
「雪列車」といいます。
作詞は糸井重里、
作曲と編曲は坂本龍一さんでした。

この曲は、初のソロアルバムとなった
「KIYOSHI」に収められました。
ちなみに「KIYOSHI」には、ほかに
矢野顕子さん、加藤和彦さんと安井かずみさん、
伊勢正三さんなど、そうそうたるメンバーが
前川さんに曲や詞を提供しました。
アルバムのアートディレクターは
浅葉克己さんでした。

そこから時が経ち、
前川清さんと糸井重里は、
このたび二十数年ぶりの再会となります。

糸井重里は、ずいぶん前から
いつか「ほぼ日」で
歌についてのコンテンツを
やりたいと言っていました。
そして、そこでできれば
前川清さんとお会いして
話したいと考えていたのです。

どうして、歌を? そして、なぜ
前川さんに会いたくなったのか。
そのことは、これからはじまる対談で
糸井が話していきます。
そして、ここで話されることが
これから実現するのか、
実現するとしても、具体的に
どういう姿になるのか、わかりません。
(なにしろ、こののんびりした
 ふたりのペースですから)
でも、こんな歌が聴きたいなぁ、というものを
いつか作ってみたいという気持ちは
きっと持ちつづけるのでしょう。

また、糸井重里は、6月29日から毎週火曜日、
ラジオのニッポン放送の上柳昌彦さんの番組で、
歌をテーマにしたトークセッションコーナーに
出演することにしました。
「ほぼ日」とはちょっとちがった糸井重里の話を
お聞きいただく機会になれればいいな、
と思っています。

さて、今回の対談は、前川清さんが
「ほぼ日」のオフィスである
青山の東京糸井重里事務所に
足を踏み入れるところからはじまります。
どうやら、とても、きょとんとされてるようで‥‥。

では、これより対談がはじまります。
どうぞごゆっくりおたのしみください。

(ブブーー‥‥1ベルの音)


糸井 前川さん。今日はどうも。
前川 糸井さん、
よろしくお願いします。
糸井 対談するのはこの部屋なんです。
入りましょうか。
一同 (迎え入れの拍手)
前川 ‥‥‥この状況は、なんですか。
糸井 ここは、普段は会議室ですけど。
前川 はい。
糸井 うちの社員が、会議室に
セットを作ったんです。
ふだん会社で使ってるライトやソファに
こういうもの(ミラーボール)を
5000円ぐらいで買って足して‥‥。
前川 あ、これ、え?
ここは普通の会場ですか?
糸井 普通の会社です。
前川 で、みなさんは?
一同 (笑)
糸井 これは社員です。
この人たちは、
入場料払ってるわけでもなんでもなくて、
いまは仕事をさぼって座ってるだけです。
前川 え?
ということは、糸井さん、
ここの‥‥?
糸井さんの会社ですか。
糸井 そうです。
ぼく「の」というより、
ぼくが代表をやってる会社です。
前川 で、(改めて)、
みなさんは?
一同 (笑)
前川 社員というのは
わかったんですけども。
糸井 はい。
前川 糸井さん、
何の仕事してるんですか?
糸井 はははは。
前川 糸井さんはね、テレビ出られたり、
もちろん作詞なさったり、
「雪列車」もお世話になったりして。
糸井 いやいや(笑)、こちらこそ
ありがとうございます。
前川 あの‥‥、ぼくなんかは「歌い手だ」って、
一応、イメージがあるじゃないですか。
糸井さん、もともとはあれですよね、
キャッチコピーをお書きになる‥‥
糸井 そうです。
広告屋です。
前川 そうです、広告、広告。
で、いまは?
糸井 広告はしてません。
前川 おやめになったんですか。
糸井 というか、もう全体的に
「頼まれ仕事」は、やめたんです。
前川 じゃ、いまはご自分が好きな仕事をなさってる。
糸井 はい、自分が好きな仕事をしています。
前川 自分の好きな仕事で、
こういうふうに、人がたくさん‥‥?
(ここで、お茶が出ます。
 お茶出しするのも、もちろん社員です)
糸井 飲みものはたぶん
お茶だと思います。
前川 (ぽっかーん)
あ‥‥どうもどうも、
わざわざありがとうございます。
ケーキ?
ケーキに豆?
一同 (笑)
糸井 そら豆。メニューがめちゃくちゃですね。
前川 豆はこういったお店の定番ですよね。
いや、しかし‥‥おもしろいなぁ。
あの‥‥、糸井さんは、
おもしろい仕事を
なさってるんですね。
糸井 前川さん、ご存知なかったんですよね、たぶん。
前川 いや、ぼくはなんにも知りません(首を振る)。
広告のコピーをお書きになって、
作詞家もおやりになって、
いろんな面でご活躍されてます。
うちに息子がいるんですけど、
そいつが糸井さんをあこがれと思ってまして。
というのは、彼は非常に釣りが好きで。
糸井 はい。
お聞きしたところによると、
そうみたいですね。
前川 で、あの‥‥、釣りの番組が
あるじゃないですか。
糸井 はい。
前川 その番組を見てて、
「オレ、知り合いなんだぞ」
なんて言っても、
息子は信用しないわけですよ。
糸井 ええ(笑)。
前川 というのも、長いこと、
お会いしてませんでしたからね。
糸井 はい。
前川 だけど、よくよく考えたら、
そういう釣りだって‥‥。
糸井 釣り、仕事じゃないですね。
前川 ‥‥ですよね?
一同 (笑)
前川 ですから、考えてみると、
仕事をしてる糸井さんって、
会ったことないんですよ。
糸井 そうか(笑)。
前川 糸井さん、なんなのか、つかめない。
正体不明。
ぼくなんかだと、現場に行って
歌を歌わないと、お金にならないわけですよ。
‥‥だから、要するにですね、
(会場にいる)みなさまも、
仕事といっても、なにを?
(つづきます)

2010-06-28-MON



ラジオのニッポン放送で
月曜から金曜の13:00〜17:40に放送している
『上柳昌彦 ごごばん!』
トークセッションコーナーに、
糸井重里が週1回、レギュラー出演します。
トークのテーマは、「歌」です。
特に、歌謡曲をはじめとする、
大好きな「歌う歌」を中心に、
毎回いろんな切り口で、お話していきます。
(おそらく、とてものびのびと
 おしゃべりさせていただくのではないか、
 毎回、しゃべり足りないという感じ
 なのではないだろうか‥‥と予想します)
どんな歌がかかるのか、
たのしみになさっていてくださいね。
また、「こんな歌はどう?」という
みなさまからのご意見もお待ちしています!

*糸井のコーナーは、
 毎週火曜14:00からの予定ですが、
 生放送ですので、前後することもございます。

東京、神奈川、千葉、埼玉に
いらっしゃるみなさま、パソコンから、
radiko.jpでもおたのしみいただけます。

2010年6月23日に発売された、
前川清さんの新曲は
「ゆれて博多で」です。
「そして、神戸」「東京砂漠」につづき、
前川さんの歌に登場する3つめの土地は、博多。
この連載の中にも出てきますが、
「歌いづらい」という3文字の地名です。
博多の3文字を、
どんなふうに前川さんが
歌っていらっしゃるのでしょうか。
こちらのページで試聴もできます。
カップリング曲「南風通信」も
あわせて聴いてみてくださいね。
アマゾンでの購入はこちらでどうぞ。

2010年7月15日より、
前川清さんと藤山直美さんの新作喜劇
「『気になる二人』〜持ちつ持たれつ〜」が、
前川さんの故郷、佐世保を皮切りに、
9月15日の札幌まで、全国公演します。
前川さんは、蒸発した妻とのあいだの
3人の子どもを育てながらネジ工場に勤める、
実は秘密の過去を持つ男‥‥を演じます。
前川さんの名曲の数々も聴けるそうですよ!
くわしくは、こちらをごらんください。

糸井さん、仕事っていうけど、
いったいなにを?
2010-06-28-MON

わからなくても、その世界に
近づくことはできる。
2010-06-29-TUE

突然、歌が耳に響いて響いて、
どこかへ連れていかれそうになった。

2010-06-30-WED

最近わかったこと、それは
握手しないお客さまのこと。
2010-07-01-THU

「ありがとう」は、ほんとすぎるし
嘘で使ってる人もいる。
2010-07-02-FRI

歌も嫌いだし
自分自身も嫌い。
2010-07-05-MON

「5分前です」と言われて、
眠くなる自分。
2010-07-06-TUE

クール・ファイブの
メンバーのおかげで。

2010-07-07-WED

お客さまが
いない夢。

今日の2010-07-08-THU

心を込めない前川清が
心を込めずに出すものが。

2010-07-09-FRI

この歌はいつまでも歌い継がれる、
そのことだけがわかる。

2010-07-12-MON

あとから追いかける歌、
「そして、神戸」。

2010-07-13-TUE

しあわせじゃない日が
しあわせを歌う。

2010-07-14-WED

嘘のつき方に、
「ほんとう」が現れる。

2010-07-15-THU

歌は、たくさん
生まれない。〜おわりに

2010-07-16-FRI