その5 STAMP & DIARY
      つくるひと・吉川修一さんのはなし。ことしのシャツは、2種類、しかも、白‥‥だけじゃない?

きょうからは、今回の旅に参加してくださる
3つのブランドについてご紹介したいと思います。
まずは、STAMP AND DIARYの吉川修一さんに話をききました。

スタンプアンドダイアリー、と読むこのブランドは、
コンセプターでありディレクターでもある
吉川さんと、デザイナーの女性、
そして生地のスペシャリストの男性からなるチーム。
「ヨーロッパで見る、大人の恰好良さ」をテーマに
女性服をつくっています。
「ほぼ日」で紹介した
「はじめまして、タンピコです。」のバッグも、

吉川さんが日本に輸入しているんですよ。

今回、私たちが選んだSTAMP AND DIARYのシャツは、
2つの型。そのうちひとつは「白」だけじゃ、ないんです。
では吉川さんの話を、どうぞ──。

ーロッパに行った時、何が一番違うって、
やっぱり大人のかっこよさだと思っています。
「洗練」っていう言葉だったり、
「成熟」っていう言葉だったり、
大人になればなるほどかっこいい人が増えていく。
行きはじめて30年くらいになるんですけど、
そのことは、変わらずずっと思っています。

そして「洋服」については、
まだ日本がそこまでたどり着いていないっていうのを
ずっと感じていて、
まさしくそういう服がつくりたいと思って、
きょうまでやって来ています。

今回、この「旅」で2つのシャツを選んでいただきました。
ひとつはギャザーブラウス、
フランスのアンティークシャツでよくある形をヒントに、
それを今っぽくできないかな、と考えました。

前もギャザー、後ろもギャザーで、
女性らしさを出しながら、今回は思い切って後ろ身頃を
グッと伸ばしています。
それは、オーバーサイズ感を出したいということと、
体型がきれいに隠れるような
シルエットを出したかったから。

こういう服って、リラックスしながら
おしゃれが楽しめることが大事かなって思います。
とにかくゆったりしていて、
用尺(生地の量)も他のブラウスに比べると、
かなり取ってつくりました。
体をやはり締め付けない、
ゆったりしたデザインなんですけれども、
やわらかで品質感のあるギザコットン、
それもよこ糸にカシミヤを10%入れていますので、
独特のやわらかさが出ているんです。
タッチもやわらかいですし、
ちょっとフワッとするエアリーな風合いです。
この生地のおかげで繊細さがうまれ、
たっぷりした用尺が落ち感を出すので、
大きく見えすぎないっていうのが、
デザインの特徴にもなっていると思います。

ちなみにカシミア混というと、あたたかいのかな?
と思われるんですが、このくらいの混率ですと、
それはあまり実感として、ないと思います。
着方としては、ボタンを全部締めると
とてもまじめな印象になり、
ボタンを開けて後ろに落とすように
「抜いて着る」と、ちょっとトレンドを意識した
おしゃれがたのしめると思いますよ。
腕をまくるかどうかでも表情がかわりますし。

ちらはロングシャツです。
タックドレスと呼んでもいいですよね。
ワンピースには短いけれど、
シャツとしてはとても丈が長いデザインです。

すごく個人的なことなんですけれど、
僕が好きなモダニズム建築の
斜めや三角形の、あの印象をこめたくて。
「女性らしさの中に
 モダンな要素を入れたいなぁ」などと言って
デザイナーには苦労をかけちゃったんですが、
そうして完成した
バックタックでAラインのシャツです。

その印象は着たときにより出るんですよ。
横から見ると斜めになって、すごくきれいです。
使い方は人それぞれだとは思いますが、
ボタンを全部締めちゃうのもいいですし、
あとは逆に、羽織るみたいな感じの着方も。
前の表情と後ろの表情と横の表情が違うので、
角度によって見え方が変わります。
そのことがちょっと意表を突くというか、
自分で着る楽しさと、
見られる側としての楽しさもあるはずです。

生地は「タイプライタークロス」です。
こちらもギザコットンで、高密度で織っています。
さきほどのギャザーブラウスにくらべると
ちょっとハリのある生地で、
光に当たった時の陰影がきれいですよ。

今回、このロングシャツは「墨黒も」という
リクエストを、「ほぼ日」さんからいただいて、
「白いシャツをめぐる旅なのに、いいのかな?」と。
STAMP AND DIARYでは同じ形で別の色というのは
よくあることなので、いいんですけれど、驚きました。

吉川さん、ありがとうございました。
事情を説明しますと、最初、この形のシャツのサンプルが
「墨黒」しかなかったんです。
「これが白くなった形」を想像して進めていたんですが、
そのうち、すっかりその墨黒が気に入ったという
メンバーがふえ、だったら、ちょっとした遊び心で、
墨黒バージョンもちょっとだけ仕入れよう、
ということになりました。
白いシャツをめぐる旅ですが、1枚だけ黒がまじります。

(つづきます)

2016-09-06-TUE