デビュー当時は「ぜんぜん、うれなかった」って
ちょっとビックリですが
今では、キティちゃんのグッズって、
ちいさい女の子のいる家庭なら
「大概ある」と言って過言ではないと思うんです。
まあ、そうかもしれないですね。
我が家にも5歳の娘がおりまして、
今のところ
とくに「キティちゃんキティちゃん」とは
騒いではいないので、
自分では買ってあげた記憶がないんです。
だから
「まあ、うちにはないよな」と思ってたら、
リュック、ポーチ、マグ、髪留め、歯ブラシ、
スプーンとフォークと箸のセット‥‥など、
出るわ出るわという感じで。
きっと、おじいちゃんやおばあちゃんが
買ってくれたりしてるんですよね。
生活のなかにスッと入ってきてると言うか、
娘さんに何かを買おうとするとき、
必ず、選択肢のひとつに入ってると言うか。
買った覚えがないのにいつの間にかあるって、
すごいキャラクターだなあと思いました。
ちなみに、
若田さんの「思い出のキティちゃん」って、
何かありますか?
はい、とくに気に入っていたのは、
白と黒の、モノトーンのキティちゃんです!
幼稚園のころ、
モノトーンのキティちゃんのポシェットを
買ってもらって、本当にお気に入りで。
どの写真を見ても、
そのポシェットを肩から下げているんです。
あれは、高校生のためにつくったんですよ。
あ、そうなんですか。
あるときに高校生から、手紙をもらったんです。
「友だちや両親から、キティちゃんって
子ども向けのキャラクターだから、
もう卒業しなさいって言われるんですけど、
わたし卒業したくないんです」って。
なんて素晴らしい子‥‥。
「だから、子ども向けだけじゃない、
わたしたち高校生に向けたキティちゃんも
つくってほしいんです」って。
じゃあ、ファンからのリクエストで。
当時、 1980年代の半ば過ぎというのは
高校生はみーんな、原宿で遊んでいたんですね。
今みたいに、渋谷じゃなくて。
いわゆる「デザイナーズ・ブランド」が
次々と立ち上っているころで
「お洋服はモノトーン」って時代でした。
なるほど。
女子高生はみんな、
放課後になると、モノトーンの洋服に着替えて、
制服はコインロッカーに突っ込んで
原宿に遊びに行くというような時代だったので
「これはキティもモノトーンだな!」と。
こまごましたステーショナリーではなく、
バッグやアパレルなど
ファッション寄りのアイテムを開発したら、
ものすごく、うれました。
あの有名なピンクキルトシリーズも
子どもじゃなく、若い女性に受けましたよね?
そうですね、あれも、はじめは女子高生向け。
当時、キティのサイン会なんかをすると
女子高生たちが
たくさん来てくれてたんだけど、
みんな、
海外の高級ブランドの財布を持ってるんです。
えー、そうなんですか。
「どうして、そんな高い財布が買えるの?」
って聞くと、
みんな
「オジサマにオネダリしてー」みたいなことを
あけすけに言うんですよ。
す、すごいですね。
それで、これは何だかよくないなあと思って
「じゃあ、キティで、ピンクだけど
みんなが持ってるような
大人っぽいお財布が出たら自分で買う?」
って聞いたら
「それだったら買う、買う」って。
はー‥‥。
「じゃあ、がんばってそういうのをつくるから
これからは、
オジサマにオネダリっての、やめてくれる?」
みたいな。
あの大ヒットシリーズには、そんな裏話が。
当時、私、中学生だったんですけど、
ピンクキルトは、とにかく衝撃的でしたね。
ひと目で「わあ、かわいい! ほしい!」
って思って、
まわりでも、ほとんどの子が持っていました。
でも、そもそも子ども向けだったわけだから、
「モノトーン」にしても
「ピンクキルトシリーズ」にしても
高校生に向けてつくるって、
ひとつの「チャレンジ」だったんでしょうか?
ええ、モノトーンを開発したときも
会社的には「テスト」っていう感じでしたね。
ピンクキルトの携帯電話ケースが
OLにうれたときも
「え? キティがOLにうれるの!?」って。
それまでは考えられなかったことだと。
そのうちに「主婦も買ってるよ」って聞いて、
「ええ! 主婦が?」みたいな。
だから、OLとか主婦とかになると、
ほしいと思うグッズが
高校生とは、ちがってくるだろうなと思って、
キッチンまわりの商品や
トイレタリーなどをどんどん開発したんです。
そうやって、対象が広がっていったんですね。
キティちゃんって、
昔からずっと変わらない部分もありつつ、
実は、時代のうつりかわりを
ものすごく敏感に反映していますよね。
そこは、かなり意識していますね。
私、ものすごく衝撃を受けた出来事があって、
それは
1990年代当時、ナンバーワンアイドルだった
アムロちゃん(安室奈美恵さん)が
テレビで「恋人います宣言」をしたんですよ。
ええ。今どきは、けっこうある話ですが。
でも当時は、大人気のトップアイドルが
「私、彼、います」
「一緒にディズニーランドに行ってます」
ってテレビで言うなんて、
私にしてみたら
「えぇ~っ?
そんなことテレビで言っていいの!?」
って感じだったんです。
なるほど。
それまではみんな、ひた隠しに隠して
彼氏がいても
「彼氏なんか、いません」ってウソつくのが
ふつうだったから。
はい。
その後、堰を切ったように
次々と恋人宣言するアイドルが出てきました。
それで「これじゃキティはダメだな」と。
はい?
つまり、それまでは、
「キティって
ボーイフレンドはいるんですか?」
と聞かれたときには
「さぁ、いるんだか、いないんだか。
よくわからないんです」
と、答えることにしていたんです。
どうしてかって言うと、
それまでのアイドルが「隠して」いたから。
キティちゃんも同じように隠そうと。
でも、アイドルたちが、あんなにも
明るく恋人宣言する時代に
「キティに
恋人がいるかいないかわからないなんて
絶対ダメだな。
時代に遅れをとってはならぬぞ!」と思って、
1999年に
「キティちゃん、彼氏います」宣言を
したんです。
おお。
そのときに生まれたのが
「ダニエル・スター」という「彼」なんです。
<つづきます>