糸井 寄付金について、無税にしてほしいという、
その交渉が行われたわけですよね。
木川 ええ。
いままでの税の論理で言うと、
「そんなのは一企業の勝手でしょ、有税です」
で終わりなんです。
糸井 そうなんでしょうね。
木川 最大限に無税の枠を使っても、
それは22億ぐらいまでだったんです。
われわれが寄付したいのは130億ですから、
百十数億は課税の対象です。
日本の税率は高いですから、
50億ぐらいは取られてしまいます。

そうやって、
被災地に届くお金が税金で減ることに対して、
我慢ができないわけですよ。
それで、1カ月半、粘り強く交渉しまして‥‥
糸井 具体的には、
誰と交渉をするわけですか。
木川 それはもう、財務省です。
糸井 はぁー、当局との戦いっていうのは、
もう、伝統ですね。
木川 いや(笑)、
今回、対立はまったくしてないんですよ。
交渉をしただけです。
糸井 よくなったわけですしね、結論は。
木川 財務省は、よく話しを聞いてくれて、
財務省も「ヤマトの志はわかる」と。
しかし税法というルールがある以上、
ヤマトという一企業のために
それを壊すわけにはいかない。
壊してしまったら
真似して悪いことをする者が出てくる、と。
糸井 つまり、税逃れが出てしまいますよね。
木川 「だから一企業のために
 そんなことはできないんだ、わかってくれ」
と言われました。
でも、「いや、わかりません」(笑)。
糸井 何とかしてくれ(笑)。
木川 「何とかしていただきたい」と言い続けました。
そうしたら、
どんどんどんどん応援団が増えてきたんです。
「ヤマトの言ってることはいいことじゃないか」
と各方面から様々な声が集まって、
ついに‥‥。

ですから、これはですね、
日本の歴史上、税の領域で言うと、
とてつもないことが起きたのではないかと。
一民間企業の多額の寄付が、全額無税ですよ?
糸井 できてしまったわけですね。
木川 かたちとしては
ヤマトが直接寄付するのではなくて、
まず『ヤマト福祉財団』という
小倉昌男さんがつくった
公益財団法人に寄付します。
ヤマトがこの財団に寄付する段階で
無税にしていただきました。
ただし、ここからあと、
何につかうかについては、
ヤマトはもう口出しをしない約束です。
糸井
あとは第三者が考える。
木川 そうです。
『ヤマト福祉財団』はヤマトからの寄付に加え、
広く一般からも寄付を募ります。
そして第三者委員会をつくり、
公平に助成先を選考します。
それによってこの財団への寄付を、
「指定寄附金」に指定していただいた。
ヤマトの活動を
日本赤十字や赤い羽根共同募金と
同じ土俵にあげてくださったというのは、
画期的だと思います。
財務省をはじめ、
我々の強い思いを受け止めていただいた
すべてのかたがたに、本当に感謝しています。
糸井 「そういうことはあり得ない」
という知識がぼくにはあったので、
寄付についてはむずかしいと思ってました。
木川 たしかにそうです。
ふつうはあり得ないことです。
糸井 やっぱり木川さん、
銀行にいらっしゃったことが
生きてるんでしょうか。
木川 いやぁ、それはどうでしょう?
糸井 「流す」という意味では、
いわば、お金のロジスティックスですよね。
木川 ああ、そうですね。
お金のロジスティックス。
どうやって集めて使うべきか、
それを考えるのも、うちの仕事だと思います。
糸井 ですよね、うかがっていて、
これもロジスティックスの話だと思ったので。

なるほど、ということは‥‥
ぼくらも何かを思いついたら、
ヤマト福祉財団に言えばいいんですね。
木川 そうです。
公募もしていますから。
糸井 すばらしい。
木川 そこに出していただければ、
さっき申し上げたように
目的が明確に限定されます。
地元の水産漁業と農業、
そして学校や病院のためにつかわれる。
そういうところに100%行きます。
まぎれもなく100%。
ホームページですべて公表していきます。
(つづきます)


2011-08-25-THU