糸井 |
もう、いくら寄り道してもいい気持ちなんで、
せっかくですからうかがいますけど、
木川さんはご家族から、
どう思われてる方なんですか?
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木川 |
ぼくはね、もう、うるさい。
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糸井 |
うるさい(笑)。
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木川 |
すぐに仕切りたがる(笑)。
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糸井 |
たとえば家族旅行のときなんかは‥‥。
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木川 |
ぜんぶぼくが主導じゃないと気が済まない‥‥
となってしまうので、抑えてます。
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糸井 |
我慢をする。
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木川 |
我慢しますね。
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糸井 |
で、会社では、
近くの社員の方に対しては?
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木川 |
けっこうね、ぼくは瞬間湯沸かし器なんですよ。
とたんにバーンッて。
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糸井 |
仕切り屋さんになっちゃう性格っていうことは、
どうしたら家族がうれしいかってことを
一所懸命に‥‥
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木川 |
ええ、それは考えてます。
家族旅行はたのしいほうがいいですから。
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糸井 |
ですよね。
で、瞬間湯沸し器の部分っていうのは、
「さまざまな事情はあれども、こうしろ!」
っていう話でしょう。
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木川 |
まあ、瞬間ですからね。
カーッとして(笑)。
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糸井 |
じゃあ、フォローのときに。
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木川 |
そうそう、
言った瞬間に冷静になるんです。
そこから懸命にフォローする。
余分なことを言ったなっていうのも含めて、
言葉を替えて、修正して、
集団の雰囲気も悪くしないよう、
「言いたかったのはこういうことだよ、
勘違いしないでね」と。
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糸井 |
そこでもやっぱり自我が薄いですよねえ。
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木川 |
そうですか?
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糸井 |
個人的な質問をしているつもりなのに、
お答えがいつのまにか
チームの話に寄っていくんです(笑)。
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木川 |
ああ(笑)。
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糸井 |
木川さんの、そうしたリーダー像は、
何か勉強なさった機会があるのでしょうか。
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木川 |
いや、とくにはないですね。
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糸井 |
小倉昌男さんとお会いして、ということは?
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木川 |
小倉さんとは銀行員時代に
何回かお話したことがありますが、
ぼくが入社したときには、
亡くなられる3カ月前だったんです。
なので、直接の薫陶は受けていないのです。
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糸井 |
じゃあ、本をお読みになったり。
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木川 |
もちろん。
それと、銀行時代に、
アドバイザーの主要メンバーとして
小倉さんに来ていただいたことがありました。
「お客様第一というのであれば、
窓口でお客様を待たせすぎです。
あの窓口の数を3倍4倍にしなさい」
と主張されている姿をよく拝見しました。
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糸井 |
あー、それは、
銀行窓口でのロジスティックスだ。
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木川 |
そう、ロジスティックス。
流れをよくするという発想です。
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糸井 |
ヤマトの社員は、みなさん頭の中に、
ロジスティックスの考えがあるんでしょうか。
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木川 |
そうですね、
基本的にそうなんだと思います。
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糸井 |
うちの会社に社訓はないんですけど、
「ぼくらの仕事は、あたためることだ」
っていう言い方をよくするんです。
ヤマトさんのお話を聞いていて
うちとちょっと近いなと思ったのはこの部分で。
流れをよくするっていうのは、
人体に例えれば血の巡りの話じゃないですか。
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木川 |
たしかにそう、血の流れです。
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糸井 |
運び屋さんですものね。
血流。
血、なんですね。
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木川 |
血。
それともうひとつ加えるなら、神経です。
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糸井 |
そうか、神経。
その面もありますね。
ぼくは脳のシナプスが活動してる様子を
顕微鏡で見せてもらったことがあるんですけど、
でたらめにこう、手を伸ばすんです。
互いでたらめなんだけど、
くっつくように動いてる。
あてがないのに探り出すんですよ。
あれには感動しました。
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木川 |
そのシナプスの姿をですね、
「震災のときのヤマトの強み」
という内容で、先日話しました。
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糸井 |
あ、そういうお話を
すでにされているんですね。
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木川 |
神経っていうのは、
どこかがプチッと切れても修復されます。
それと同じように、ヤマトに頼みさえすれば、
───ここはまた自慢ですね(笑)。
ヤマトに頼めば、
シナプス同士が手をつなぐようにサーッと、
痛んだ物流を修復することができます。
それだけのネットワークを
ヤマトは日本中に張り巡らしているのです。
という言い方をしました。
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糸井 |
「日本中に」というのが実現したのは、
全体で利益を出せばいいと考えたからですよね。
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木川 |
もちろんです。
部分を考えたら赤字もあります。
でも日本中に拠点があるから、シナプスになれる。
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糸井 |
「こっちがこっちをかばう」という関係。
小魚がボール状になって泳いでいるような。
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木川 |
ああ、それも似ていますね。
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糸井 |
あれも命令伝播ははっきりとはなくて、
自己判断のかたまりのようなものです。
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木川 |
それぞれが本能で動く。
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糸井 |
日本中に張り巡らされた神経‥‥。
それを可能にした大きな会社なのに、
この邪魔にされない感じはすごいですね。
郵便局を超えちゃったら、
大きすぎて邪魔に見えると思うんですよ。
だけどみんなが、
「あ、そうだったんだ、大きいんですね」
って、ふつうに思っている。
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木川 |
いや、それは糸井さん、
ほんとに地域密着型だからなんです。
たしかにヤマトは全国規模の会社ですが、
個々のお客さんから見れば、
地域ごとにあるひとつの拠点なんです。
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糸井 |
なんだか、消防団のお話を聞いてるようです。
「火の見やぐらが何本あるから大丈夫」
みたいな(笑)。
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木川 |
それもまた似てるかもしれない(笑)。
(最終回につづきます) |