「やさしくないタオル」のつくりかた。

その5 柔軟剤をたっぷり使ってみた

「水を吸わない」タオルをつくるには、
柔軟剤をたっぷり使うといいらしい、
ということで、その実験をしております。

用意したのは2枚の、
新品の「やさしいタオル」です。
同じ洗濯機で、1枚は、乳白色の柔軟剤を使い、
もう1枚は、柔軟剤を使わずに仕上げました。

同じようによく乾かした2枚のタオル。
上から、水滴をたらしてみます。
ごらんください、このちがい!


柔軟剤を使って洗濯したタオル。
水を吸収できずに、水滴が繊維に乗ったままです。


柔軟剤をつかわず、洗濯したタオル。
ふりかけた水を即座に吸収しました。

一目瞭然。こんなに違うんだ‥‥。

でも、この吸水スピードの違いで、
「吸水が速い=使い心地がいい=やさしい」と
言うのは、ちょっと早急です。
というのは、すばやく水を吸収できても、
吸収した水で繊維がべちゃっとして
タオルがぐっしょり濡れてしまったら、
使い心地がいいとは言えません。

「沈降法」という吸水性のテスト、
つまりタオルを水の上に落として、
水槽の底まで何秒で沈むかを調べるテストをすると、
いちばん早く底に沈むのは、
使い古して薄くなった使い古したぞうきんなんです。
その理屈でいくと、使い古したぞうきんこそが
「やさしい」ことになっちゃいます。

じゃあ、使い古したぞうきんと
「やさしいタオル」の違いって、なんなんでしょう?
大窪さんは言います。

「それは、綿蝋ですね」

めんろう。
今回、はじめて出てきた言葉です。

「綿蝋というのは、綿の糸に含まれている
 天然の油分のことですよ。
 綿は、そのままでは水をはじくんですが、
 含まれている綿蝋を精錬漂白することで、
 吸水性が出てくるという仕組みなんです。
 でも、綿蝋を取りすぎると、
 綿のふっくらした感じとか、
 やわらかさ、すべすべとした風合いが失われる。
 タオルに使う綿は、
 そのバランスを調整しながら、
 じょうずに綿蝋を残しています。
 世の中にはいろいろなタオルがありますが、
 高級タオルと言われるものは、
 そのバランスに非常に気を配って、
 綿の精錬漂白工程を行なっているはずですよ」

ちなみに、「やさしいタオル」に使っている
特殊なLA加工のほどこされた
超長繊維綿のスーピマコットンは、
ほどよく油分を含んでいます。
風合いと吸水性のバランス、
吸水スピードと保水パワーのバランス、
使い込んでいくうちに出てくる吸水力のバランスを
考えぬいてつくっているんです。

それでも、綿蝋は、洗濯を重ねると、
徐々に抜けていきますので、
柔軟剤や柔軟剤の入った洗剤を使わなければ、
吸水性があがっていくということになります。
使っていく過程で、
タオルの吸水性に注目してみると、
きっと、そのことを
実感できると思いますよー。

その2

洗濯の仕上げに柔軟剤をたっぷり。
そうすると、水をぴちぴちはじく
「やさしくないタオル」になる。

吸水性を高めるには、
柔軟剤や柔軟剤入り洗剤を使わないのがいちばん。

<イラスト:陽イオンが表面をおおっているような図>

こんかいは実に真面目な感じの
レポートになりました。
次回は「ゴワゴワ」について、です!

【コラム】 タオルのスペシャリストが語る 「やさしくないタオル」
その2
色あせて、色落ちて。
愛用して洗濯を繰り返していくうちに
色落ちや色あせをするのは、
仕方がないことです。
それもタオルの味のひとつにもなります。
「やさしいタオル」の場合も、
デザインによって色の落ち方は違ってきますから、
いちがいに言うことはできませんが、
過剰に蒸れたところは、注意してください。
じつは、ぼく、真夏、車のトランクに、
ビニールに入ったタオルを入れておいたら、
過剰に色落ちしてしまったということがあるんです。
高温、高湿がタオルの色を分解させてしまうんですね。
めったに起らないことではあるけれど、
ないわけではないので、
気をつけてくださいね。
使ってすぐに洗濯、乾燥すれば
ほとんど問題はないですから。
2009-12-28-MON
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(c)HOBO NIKKAN ITOI SHIBUN / Illustration:たかしまてつを