タモリ |
Y字路にさしかかるまでは一緒に進む。
そして、いよいよ
祐天寺と目黒不動に別れるときに、
ふたりは最終決定して、
「それじゃ」ってそれぞれの道を行くんだけど、
Y字路ですから、急には
距離感は広がっていかないんだよね。 |
糸井 |
(笑) |
タモリ |
まだ、なんか、余韻を残しつつ。 |
糸井 |
背中を向けてないんですよね(笑)。 |
タモリ |
そう。
余韻を残して別れてくっつうのがね、
またよくて……。
直行する道路っつうのは、
お互いに何の影響も及ぼさないでしょ?
わたしはこっち、あなたはそっち、と。
おたがい、
何のコミュニケーションもとらないし、
もう、ああ、これはまったく
違う人だというような……。
でも、Y字路を見てると、
なんか、今言ったようなことを思うんです。 |
糸井 |
(笑)つかず離れずの道。 |
タモリ |
そのへんの曖昧さとか、
影響しあうところが、
なんか想像するとおもしろい。
江戸時代からある道を調べると、
Y字路も「右 大山 / 左 なんとか」と
書いてあったりする。
道が別れるところまで一緒にきて、
いよいよここであんたとお別れ、
ということになるんだけど……。 |
糸井 |
タモリさん、
ほんとにY字路好きの人ですねぇ。
なんか、好きな理由が伝わりました。
……ただ、横尾さんだって、
「ぼくはY字路そのものは好きじゃない」
とは言っているけど、キライなのに
こんなには追っかけきれないと思うんです。 |
横尾 |
まあ、それは同じ場所ばっかり
描くわけにいかないから、
できるだけいろんな場所を
発見して描いてみたいなぁという興味だけで。
タモリさんの今の話なんかは、
そういう状態を絵に描きこむって、
むずかしいじゃないですか。
文学かなんかだったら
表現できるかもわからないけども。
だからぼくは、絵を通して
Y字路を人に気づかせるだけなんです。
「こういうものです」と。 |
糸井 |
結果的には、
ものすごい数のY字路の絵が
できているわけですよね。 |
横尾 |
そんなにないです。60点ぐらい。 |
糸井 |
60もあるんですか? |
タモリ |
たいへんなもんですよね。 |
糸井 |
すごいです。
おんなじY字路を、
いろんな絵で描いたりしていますよね。
飽きた飽きたといいながら、
そこまで進んでいるんだ……。 |
横尾 |
でも、ほんとは飽きてるんですよ。 |
糸井 |
だとすると、
絵に飽きていないっていうことなんですか? |
横尾 |
確かに、絵には飽きてないけど。 |
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(つづきます) |