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ほぼ日手帳

糸井重里

・この時期には京都に来ます。
 そういう習慣になっているので、今年も来ました。
 夏がはじまるという合図のようにもなっています。
 なぜか、この国では、あるいはぼくには、
 夏というのはいちばん死者を考える季節です。
 
 人は、生まれた時を覚えます、誕生日として。  
 そして、他の人たちが、その人が死んだ時を覚えます。
 それが命日と呼ばれています。
 たぶん、その人の命を忘れないためにあるのでしょう。
 毎年、新たな命日が増えていくなぁと思っています。
 生きているときにはなかった命日が、死ぬと生まれます。
 誕生日も命日も、誰も思い出さなくなるまで残りますが、
 思い出す人がいなくなったら、それも無くなります。
 人はみんな固有の二つの日付を持っているとも言えます。
 ぼく自身は、まだじぶんの命日が欲しいとも思わないけど、
 いずれそれができるんだということが、わかります。
 「いい命日」というのは、ちょっといいコンセプトだな。

 そういえば、四月に亡くなったクマちゃんから、
 手紙をもらったんですよね。
 いや生き返って手紙を書いたというわけではなく、
 命日の日の、その場面にいた近い人が、
 クマちゃんに頼まれていた手紙を送ってくれたんです。
 早い話が「とうとうそのときが来ちまったけどな」
 みたいな、その場の架空の対話のような文。
 「いよいよだなぁ」というほんとにそういう時に、
 あいつに手紙を出してやれと思ったんですよね、きっと。
 ありがたいことだなぁと、こっちも思いました。
 そのあたりの日に会いに行く約束していたけど、
 クマちゃんの体調悪くなって延期になってたのです。
 会えても会えなくても、「いい命日」だったと思うよ。

 みんながそんなに「いい命日」を得られるものか
 わからないけどそういうつもりで生きるのはいいな。
 ああ、思えば、そのときには悲しかったとしても、
 のちに「いい命日」に仕立て直せることもあるなぁ。

今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
岩田さん、ソブちゃん、クマちゃん、死んでも生きてるぞ。

昨日のコラムを読み逃した方はこちら。

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