糸井重里
・引用文からはじめます。
こんなことをするのは、生まれてはじめてかもしれない。
引用元は「青空文庫」なので、このあとの全文も読めます。
(カナはカッコにいれ、少々改行を加えました)
”西暦一千九百二年秋忘月忘日白旗を
寝室の窓に翻(ひるが)えして下宿の婆さんに
降を乞うや否や、婆さんは二十貫目の体躯(たいく)を
三階の天辺(てっぺん)まで運び上げにかかる、
運び上げるというべきを上げにかかると申すは
手間のかかるを形容せんためなり、
階段を上ること無慮(むりょ)四十二級、
途中にて休憩する事前後二回、
時を費す事三分五セコンドの後この偉大なる婆さんの
得意なるべき顔面が苦し気に戸口にヌッと出現する、
あたり近所は狭苦しきばかり也、
この会見の栄を肩身狭くも双肩に荷になえる余に向って
婆さんは媾和(こうわ)条件の第一款として
命令的に左のごとく申し渡した、
自転車に御乗んなさい”
句点と読点の使い分けがよくわからないし、
難しそうに見えるけど笑わせる気満々のこの文は、
夏目漱石の「自転車日記」という随筆の書き出しである。
大仰な文体と落語のような語り口を混ぜ混ぜにして、
吾輩の文章の技を嫌というほど味わってくれたまえ、
みたいな調子が、このままずっと続く。
要するに、自転車に乗ることになったのだけれど、
ああしてもこうしてもダメでもうイヤだイヤだの話である。
それが、なんていうか、新築の家の欄間の彫刻みたいに、
専門の職人の大層な仕事ぶりのように書かれている。
なにせ夏目漱石だから、なにせ偉人だから、お札の人だし、
明治の文豪なんだから、こんなの左手ですらすらと
いたずら書きでもするように半分居眠りしながらでも
書けちゃうのかもしれないのだけれどね。
いやぁ、そんなこたぁねぇと思うよー。
遊びだとか趣味の心も含めて、真剣に刻々と書いてるよ。
ま、ぼくがなにか反省するというわけでもないんだけどね。
今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
これは、漱石35歳英国留学中のこと。俺は自転車乗れるよ。
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