「青空応援団」という、
社会人の応援団があります。
ほぼ日は、この方々に
応援を依頼することにしました。
がんばりたいことがあるからです。
団長の平了さん、副団長の佐々木良さんに
ほぼ日の菅野がお話をうかがいました。
- ほぼ日
- 「気仙沼のほぼ日」の事務所は、
ご存知のとおり11月1日にお開きとなります。
そこで、最後に団長の「青空応援団」に
気仙沼においでいただきたいと思っています。
- 平
- よろこんで、うかがいます。
- ほぼ日
- 団長は、東日本大震災のあと、
「スコップ団」の活動をなさいました。
いまは「応援団」。
なぜ、応援の活動をされているのでしょうか。
- 平
- ほぼ日でもこれまでとりあげていただきましたが、
おっしゃるとおり、
ぼくらはスコップ団の活動をしていました。
そのスコップ団を通じてわかったことですが、
ぼくは、人のいちばんのよろこびは、
成長だと思っています。
- ほぼ日
- 成長。
- 平
- 昨日できなかったことが今日できるようになる、
人はそれがいちばんうれしいんじゃないでしょうか。
給料が上がった、逆上がりができるようになった、
父ちゃんが元気になった、なんでもいい。
それ以外に何があるのかな?
「たのしみ」はほかにもいっぱいありますよ、
音楽聴いてもマンガ読んでもたのしいけれども、
「よろこび」は成長なんだとぼくは思います。
- ほぼ日
- たとえば大人になっても、
歳をとったからこそ
わかるようになったことがあったり。
- 平
- そうです、そういうこと。
あのとき、スコップ団で泥かきをしていて、
人が作ったカセットテープのコレクションとかが、
泥の中から出てきたりしましたよね?
あのときは泥かきしかやることなかったから、
考える時間がいっぱいありました。
「この人はどういう人生だったのかな。
テープ作ったり、いろんなことをやりながら、
今日はこんなことができたな、一歩進んだな、
そういう毎日を送っていたんだろう」
と想像できた。
泥かきをしながらぼくは、
亡くなった人たちや、その家族を
ずっと応援していきたいと考えました。
でも、「支援」って、やりすぎると、
成長の芽をつんでしまうことになります。
つまり、人から
生きるよろこびを奪ってしまうんです。
働かなくてもお金がもらえたら、
がんばらなくなってしまうでしょう?
明日から4兆円が口座にあるとなったら、どうですか。
- ほぼ日
- うれしいけれども‥‥、
- 平
- うれしいけど、たぶん、
人によっては生きる意味が急に
わからなくなったりするんじゃないでしょうか。
子どもにいつまでもお金を与えつづけたら、
自分の足で歩かなくなっていきます。
親だって「支援」から「応援」に切り替えることを
いつかはやんなきゃなんないです。
支援は一時だけど、
応援は死ぬまでできる。
死んでからもできる。
「支援じゃない、応援しよう」ということが
スコップ団をやっていたぼくの頭に浮かんできました。
もっと前はね、
スコップ団が終わったら、
自分の仕事の売り上げの一部を
困っている子どもたちの団体に
寄付しようとかなんだとか、
いろんなことを思っていました。
でも「もっとシンプルな応援ってないのかな」と
考えるようになりました。
ぼくは高校時代、応援団に入っていました。
そのときの先輩や後輩たち、
ライバル校の応援団だった人たちに
「もう一回応援やらない?」と声をかけて、
応援団をつくることになりました。
- ほぼ日
- この、社会人による
青空応援団を。
- 平
- そう。
でも、応援団ってなんだか時代遅れでしょう?
最初はみんな
「応援の依頼なんてあるのかな」って話してました。
でもいま、依頼は1年で100本を超えます。
- ほぼ日
- 3日に一度。
みなさん、ふだんのお仕事があるのに大変だ。
- 平
- いま、青空応援団の団員は80名弱。
東京と関西と島根と仙台にメンバーがそろってます。
- ほぼ日
- どんなことで依頼が来るんですか?
- 平
- 全部です。冠婚葬祭全部。
結婚式も行くし、葬式も行く。
お祭りにも呼ばれるし、敬老会にも呼ばれる。
- ほぼ日
- 敬老会で、どんな応援を?
- 平
- 敬老会はね、俺、すごく好き。
行って、応援するじゃないですか。
すると、いちばん前で見てたおばあちゃんが
「わー!」なんていって、立ったりするんですよ。
それを見て職員さんが、えらく泣いてる。
応援してるこっちは、
ただ立ちあがる、ふざけんぼのばーさんだな、
と思って、応援してたんですけど。
- ほぼ日
- ふざけんぼのノリノリの。
- 平
- そうそう。
でもね、あとで聞いたら、
じつは職員さんたち、
そのばーさんが立ったところを見たことがなかった。
いつも車椅子で。
- ほぼ日
- 応援されたのがうれしくて、たのしくて‥‥。
- 平
- 小中学校に行くことも多いです。
仙台は、東京もそうだと思うけど、学生の自死が多い。
まあ、いじめが原因だったりするよね。
それがピタッとおさまるんだ、俺たちが行くと。
- ほぼ日
- どうやっておさめるんですか。
- 平
- いじめている人たちに対して話をします。
「そんなヒマがあるならば、自分のために時間を使え」
とね。
いじめたいほど嫌なやつがいるんなら、
そんなやつのことを考えているほど、
君たちの人生はヒマではない。
- ほぼ日
- おお。
- 平
- いま、君たちのまわりは、
いろんなことがぼんやりしていて、数値化できない。
たとえばいま食べた給食の味、友達の顔、
いろんなことは数値化できません。
ただ、命だけは数値化できる。
- ほぼ日
- 命が数値化できる?
- 平
- ほんとうはね、できる。
たとえば、このあと俺が何かで死ぬとする。
1時間後に死ぬんだったら、1時間です。
- ほぼ日
- 時間ですか。
- 平
- そう。
知ってましたか、命には限りがあるんです。
10年後に死ぬんだったら10年。
だれも知らないのかもしれないけど、
命だけは、本当は数値化されています。
俺たちは絶対に、何をしても、1秒前には戻れない。
どんどん時間は流れていって、
やったことは取り戻せません。
命は時間。
時間の無駄遣いは命の無駄遣いです。
「時間つぶし」も「命つぶし」と言い換えたらいいよ。
- ほぼ日
- ああ、怖いですね。
- 平
- そんなふうに子どもたちに言うと、
子どもたちは聞くんだね、すごく。
たしかにいじめている場合じゃないんだ。
ぼくらは、全員を応援したい。
いじめてるやつも応援したいんです。
だから言う。
君の命を無駄にするなよ。
(明日につづきます)
2019-10-25-FRI
(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN