冒険王、 横尾忠則。   横尾さんの展覧会で、横尾さんにお会いしました。 「‥‥あなたという人は!」と 何度も叫びそうになりました。すごいです。 さぁ、みなさん。ご本人といっしょに 横尾忠則さんのすばらしい冒険の記録を 見て回りましょう。
005 毎日やらないと、溜まらない。
 
糸井 この「うろつき夜太」の挿絵も
すごく憶えています。



当時はホテルにかんづめになって
仕事なさってたんですよね。
そのホテルの図までお描きになったりして。
横尾 あれはホテルの人に怒られたなあ。
部屋の番号まで描かないでください、って。
糸井 これは、そのホテルで朝食を食べる
ロン毛の横尾さんとシバレン
(柴田錬三郎)さんです。



横尾さんがすごいのか、
絵がすごいのかわからないけど、
いま、柴田錬三郎さんの名を知らない人がいても、
その挿絵を描いていた横尾さんのことを
知ってる人は多いです。
あ、この浅丘ルリ子さんはたしか
平凡パンチの付録ですよね、
挟み込み式の。

横尾 違う、違う、違う。
糸井 挟み込みじゃありませんでしたっけ?
横尾 ただの「見開きページ」だったよ。
糸井 じゃ、当時のぼくが
雑誌からはずしたんですね。
部屋に貼ってましたから。
横尾 このとき、平凡パンチは
日本の雑誌ではじめて
見開きで、カラーで絵を載っけたんです。
写真は何度もあったけど、
絵ははじめてだったんだよ。
糸井 第1号ですか。
だから、当時のぼくは
付録のような気がしたんですね。
横尾 きっとそうだったんだね。
こんな名画じゃない絵がねぇ。


糸井 この絵には
「ダーイスキ! 浅丘ルリ子さん」って
描いてあるんだけど、
当時の発言としては、
それは俗っぽかったんですよ。
ほぼ日 そうなんですか。
糸井 だから、(日活映画の)浅丘ルリ子さんや
(演歌の)美空ひばりさんを
好きだと言うのは、
アート行為に見えたんですよ。

ほぼ日 ほー。
横尾 ほー。
ほぼ日 (横尾さんまで「ほー」‥‥?)
糸井 この時代は、例えば
「ビートルズと一緒にいた横尾さん」のほうが、
人の目には多く触れているわけです。
それと同じ人が、浅丘ルリ子さんを好きです、と
言ってることに、すごい自由を感じたんですよ。
だから、みんながふわーっと、
横尾さんについて行っちゃうんです。
ほぼ日 はああ、なるほど。
横尾 ふふふ、こういうときは、何も言わないの。
ふふふふふふ。

糸井 この点描も、すごいなあ。
別冊太陽の「人生劇場」ですね。
‥‥毎日毎日仕事してないと、
こんなふうには溜まりませんね。

横尾 毎日、やってたからね。
もうこんなことは、
いまは全然できなくなっちゃったけど。
糸井 こういうタイプのことは、
この時期しかやれないんでしょうか。
横尾 いまは、できない。
技術的にもできない。
もう粘着力がないね。
糸井 このときは、こうしないと
いられなかったんでしょうね。
横尾 したかったんだろうね。
しめきりのことなんて
考えないでやってましたからね。
ぼくが絵を描いているすぐ横に
編集者がいるわけです。
「もう、そんなとこの線一本、
 引かなくてもいいですよ」
という感じで、そこにいるんです。
そんなことは口に出しては言わないけど、
その人の顔に書いてあるわけ。
そうすると、意地になって、
シワの数とか、増やしたくなってくる(笑)。
糸井 これが、一冊の雑誌の特集に
入ってたんですもんね。

塚田 鬼気迫りますよ、
この線、この点描‥‥。
2年がかりで
横尾さんの作品を2000点くらい、
ずっと見ていったんですけれども、
このあたりの絵を見ながら、怖くなりました。
なんだろう、これは、って。
横尾 はい、ほか行きましょう。
糸井 褒めはじめると、また、
逃げますね(笑)。

  (続きます!)
 
2008-06-02-MON
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