糸井 |
困ることがないと潜在力は出ない。
ただ一方で、
ぜんぶのことで困っていると、
立ち往生してしまうこともありますよね。
もしかしたら、
宮大工の小川三夫さんが
「弟子と一緒に暮らすこと」
をものすごく重視しているのは、
ぜんぶのことで困らなくていいように、
「ここは目をつぶってもできる」
ということを増やしたいからかもしれません。
一緒に暮らしていろんなことを肌で感じて、
いちばん困るべきことを探してゆくというか。 |
池谷 |
はい。
困ることは、
確かに脳のアクセルになりますけど、
困るだけでは、路頭に迷いますから。
やはりいちばん重要なのは、
あえて言葉で言うと……
問題意識だと思うんですね。
自分が何に困っているかがわからなければ、
何も解決できないわけです。
困った状況の中で糸口が見つけられるのは、
おそらく「自分を見られている」というか、
状況判断ができているかどうかだと思います。 |
糸井 |
ぼくは若い頃は、
何でも困るぐらいの状態が平気だったんです。
世の中ぜんぶ新鮮に見えるぐらいでなければ、
自分の動機がかきたてられないみたいなことも
思っていたわけですが、
しかしそれは漫画の中の話に近いというか、
ぜんぶで困るより、だんだん状況が見えてきて
「これで困ってる」と認識できていたほうが、
やるべきことができるに決まっているんですね。 |