糸井 困ることがないと潜在力は出ない。
ただ一方で、
ぜんぶのことで困っていると、
立ち往生してしまうこともありますよね。

もしかしたら、
宮大工の小川三夫さんが
「弟子と一緒に暮らすこと」
をものすごく重視しているのは、
ぜんぶのことで困らなくていいように、
「ここは目をつぶってもできる」
ということを増やしたいからかもしれません。

一緒に暮らしていろんなことを肌で感じて、
いちばん困るべきことを探してゆくというか。
池谷 はい。
困ることは、
確かに脳のアクセルになりますけど、
困るだけでは、路頭に迷いますから。

やはりいちばん重要なのは、
あえて言葉で言うと……
問題意識だと思うんですね。

自分が何に困っているかがわからなければ、
何も解決できないわけです。
困った状況の中で糸口が見つけられるのは、
おそらく「自分を見られている」というか、
状況判断ができているかどうかだと思います。
糸井 ぼくは若い頃は、
何でも困るぐらいの状態が平気だったんです。

世の中ぜんぶ新鮮に見えるぐらいでなければ、
自分の動機がかきたてられないみたいなことも
思っていたわけですが、
しかしそれは漫画の中の話に近いというか、
ぜんぶで困るより、だんだん状況が見えてきて
「これで困ってる」と認識できていたほうが、
やるべきことができるに決まっているんですね。

(つづく)
2005-07-11-MON
友だちにこのページを知らせる
©2005 HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN All rights reserved.