糸井 |
「暗記しようと思えばできる」
と逃げないようにしてみたら、
計算ドリルとか、暗記ドリルとか、
だんだん成績があがるんですよね。
自分でも予想していなかったんだけど。 |
池谷 |
頭の中に自然にできあがっていた
ブレーキを取り払ったのでしょうね。 |
糸井 |
そうそう。
「暗記や計算はできない。
おもしろいことしかできない」
というのは、過去のぼくには
「自慢のブレーキ」だったんでしょう。
自己評価や自分の像というものを、
描きすぎていたんだと思うんです。
「暗記や計算の苦手な自分」
と、決めつけすぎていたわけです。
だけど、人が言う暗記のコツとかを
実行してみると
ほんとに効き目があったりするわけで。 |
池谷 |
柔道を習いはじめるという時も、ほんとは
派手な投げ技とかがやりたくて仕方がないのに、
最初の一年は受け身ばかりだったりしますよね。
たぶん、勉強も、まったく同じだと思うんです。
むずかしい問題をガンガン解きたいわけですが、
最初は、九九みたいなところをやるんですから。
最初に、九九みたいなことをやる意味って、
やっている最中は、わからないじゃないですか。
「なんで、こんなことをやっているんだろう?」
そこを、いい意味の「馬鹿」な人は、
平気でそのままやってしまうんです。
今、糸井さんとぼくがこうしてお話をしている
薬学部の研究室にいるのは全員東大生ですけど、
彼らも、みんなそういう「馬鹿」なんですよね。
親からやれと言われたことを素直にやった人間。
しかも課題を飲みこむことができた人間の結晶。
もちろん世間では、それがあることで
東大生はつぶしがきかないとか言われますし、
何とかかんとか叩かれたりもするわけですが、
しかしぼくの身近な研究の世界を見ていると、
やはり「馬鹿」であるべきだとは思うんです。
研究も、はじめは、
地道な処理の練習の積み重ねです。
それを厭わずやれるかどうかが入口ですから。 |
糸井 |
一度、受験を通った人の強さというのは、
ぼくも、ふだん、よく感じますね。
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