糸井 「馬鹿になってやってみる」
というおもしろさを、今ごろわかったんです。

暗記や計算をおもしろくできなかった自分が、
それこそ、つまらなかったんだろうなぁ、と。
「計算が速くできたからって、何なんだよ!」
そう言いはっている人間こそ、普通ですよね。

「計算ができたらこういうことができるんだ」
という動機を持つとおもしろくできるわけで、
ずいぶん偏った歩き方をしていたものだなぁ、
と、最近、気づいたんです。

自分は、暗記や計算とは関係のない世界で、
何かをとぎすましてきたと思っていたなら、
それで満足できたかもしれないけど、それが、
自分の動く範囲を狭くしていたかもしれない……
やっぱり今こそ、「馬鹿になれ」という話を、
あらためて、話すべきなのかなぁと思います。

池谷さんとは『海馬』で偏桃体の話をしました。
「俺は、これをすることが好きだ」と
快感を感じる部位である偏桃体が動いていると、
それは、脳がやる気を感じてやれることだから、
すごくじょうずにできるようになるわけですよね。
その話もおもしろいしほんとうだし、
「好きこそものの上手なれ」になるわけですけど、
もしかしたら、
偏桃体がおもしろがって、快感を得ることさえも、
自分の中から掘りおこしていけたとしたら、
生きることがもっとおもしろくなるかもしれない。

「好きじゃなかったもののおもしろさを発見する」
と言いますか。
池谷 それは、もう一歩進んだ考え方ですね。

(つづく)
2005-07-14-THU
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