糸井 |
神経細胞が触手をのばす姿、
なんだか、感動しますよね。 |
池谷 |
はい。
ネットワークを作ろうとする
本能を持っているところには、
人間に近いものを感じているんです。
人間もたぶん本能として
ネットワークを作ろうとしていて……
なんだか神経とそっくりなように
ぼくらはプログラムされているんだな、
と思います。 |
糸井 |
神経細胞には
善も悪もないわけですけど、
とにかく手をのばしていって
チャンスを増やそうという行為は、
われわれ人間が
善と呼んでいるものに
とても似ています。 |
池谷 |
ある程度の
本能に従うことは
もしかしたら善なのかもしれませんね。
あ、今ぼくは本能と言いましたが……。 |
糸井 |
本能って、使いづらい言葉ですよね。 |
池谷 |
ほんとにそうです。
本能は言葉を変えれば「欲」ですが、
たとえば科学のなかでも
食欲、性欲、睡眠欲に共通するのは、
満たされたら
それ以上は欲しない、満足を知る、
というものだとは言われています。
たくさん食べたらもう食べたくなくなると。
たとえば
金銭や出世の欲は
満足することがないから、
これは本能ではないと
説明されるわけですけど……
ぼくは科学者だからかもしれませんが、
何かものを知りたい欲があるんですね。
知的探求心というか、この欲求は、
かなり、満足というものがなくて
エゴに近いものだと実感してます。
知っても知っても
またその先が知りたくなるんです。
本能というのは曖昧な言葉ですが、
なんか、そんなことを思いました。 |