池谷 何を思っているか、
何を考えているか、
そういうことも、科学で
だんだんわかってくるんじゃないか、
というように進歩してきていまして、
たとえば、今だと、
恋愛感情とかも測定できるんですよ。

相手が自分を
愛してくれているかどうか。
それを測定する方法もあるんです。
脳はウソをつきませんから、
脳を利用して
感情を見ることができるんですね。

恋愛感情を測定する方法を
発見したのは女性の研究者ですが、
恋愛の研究をしていたわけではないんです。
「痛み」の研究をしていたんです。

熱いものを腕にあてると熱さを感じる……
痛みを感じている時の脳の状況を
MRIではかってみたわけですね。
痛みの経路は明らかにされていて、
この神経がこういうところを通って
脳のどこらへんに伝わるということは
既によくわかっていたのですけども、
脳は、痛みの経路以外のところも
活動していたんですね。

それがなんなのかは
最初は謎だったんですが、
偶然なことから見つかったそうです。

自分が痛みを感じていなくても、
他の人がたとえば熱い棒を
「ジュッ!」
と腕につけられているのを見た時、
熱いと思いますよね。
そういう時に動くのが、
痛みの経路以外のところの活動でした。

痛そうという
感覚を生みだしている場所と
思われるので、その研究者は
同情する神経という名前をつけました。

そこでおもしろいのは、
相手が痛がっているのを見ただけでは、
同情する神経は、動かないんですよね。

もしもすべてに痛みを感じていたら、
ボクシングの試合なんて見られませんもんね。
つまり、誰に対しても動くわけではない──。
糸井 なるほど。
池谷 それが、
恋人や家族だった時には、
ものすごく強く反応するんです。
これがまさに
恋愛判断に使えるわけで……。

(つづく)
2005-08-05-FRI
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