喪に服すとき身につけるジュエリーのことを、イギリスでは モーニング・ジュエリー(mourning jewellery)と呼ぶ。 英語の「mourn」とは「悼む、弔う」という意味だ。 (※発音は、モウンに近い)
モーニング・ジュエリーの存在は 少なくとも16世紀にはすでに確認されていたが、 人々に広く認識され、大量に製造されたのは、 ヴィクトリア女王が喪に服した1861年から 彼女が亡くなった1901年のより少し後の 1920年ごろまでと言われている。
必ずしも黒いジュエリーだけを指すのではないが、やはり ジェット、ブラックオニキス、エボニー、ボグオーク など、黒や黒っぽい素材が主流だった。
中でも、いちばん代表的なものといえばジェットである。 ジェットは木炭が数百年を経て化石化した宝石の一種。 ボヘミア製の、フレンチジェットと呼ばれる ジェットを模した黒いガラスも、 ジェットと比べて値段が手頃という理由から多用され 非常に普及した。
写真の品は、1920年ごろに作られたフレンチジェット製のピン。 本来はスカーフや帽子などにさして使うものであった。 未使用品のため傷みはほとんどないが、 製造工程でできた(左側の)ビーズと台座の接着面に 少しずれがみられる。
こうした当時の黒いジュエリーは、今では単純に、 普段の装いにシックな雰囲気を加味する目的で 使われることも多い。
大きさは、73mm x 12mm x 10mm
(つづきます)