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december 20142014
十一月のテーマは サフィレット

季節感のあるジュエリーとは、贅沢なものである。
クリスマス・モチーフのブローチは
その最たる例のひとつで、イギリスでは
身につける期間といえば
12月はじめから、せいぜいクリスマス・ツリーを片付ける
顕現日の1月6日までといったところだろう。
その後はまた長い間、宝石箱にしまわれることになる。

普段づかいできるデザインの品と比べて、
ちょっともったいない気がするかもしれない。
金銀宝石が使われたジュエリーなら、なおさらだ。
しかし、出番の短いアイテムだからこそ、持ち主の、
(この場合は)クリスマスへの愛情を後押しする
大切な役目を担っていると言えるし、
そういうジュエリーは、手にしたとき
顔がほころぶような姿形のものであってほしい。
さらに、何かハッピーなメッセージを秘めたものなら、
楽しさも増えるにちがいない。

そんな理想を頭に描きつつ、毎年12月が近づいてくると
アンティークのクリスマス・ブローチを求めて
私はイギリスの骨董市を探し歩く。けれども、
なかなかどうして、これというものには出合えない。

12月25日がキリストの降誕を祝う日だということは
重々承知しているが、十字架や天使といった
宗教色が濃すぎるモチーフは
敬虔なクリスチャンでない限り使いづらいし
現代のひとにもわかりやすい
クリスマスツリーやサンタクロースの形のブローチは、
20世紀に入ってから、とくに1940年代以降に
量産されるようになったものであり、残念なことに
それらはたいてい過剰にカラフルだったり
合金やラインストーンでテカテカしているのだ。

では、どんなモチーフなら、という話になる。
上の写真のブローチが、
先ごろ私が巡り合えたふたつである。

銀製のほうは、1901年以前にイギリスで作られた
アンティーク・ブローチで、ヤドリギを持つ手が印象的な品。
ヤドリギはクリスマスに魔除けとして、
家の中や玄関先に吊るす植物だ。

もう片方は金製で、
同じくヴィクトリア時代、1890年ごろのもの。
キリストの受難と信仰を象徴するコマドリと、
ヤドリギと同じようにクリスマスに魔除けとして
飾られる、聖なる植物のヒイラギ、
旧約聖書に登場するどんぐり、そして教会のベル。

クリスマスを迎えるにあたり、デコラティブなジュエリーを
イギリスの女性たちが身につけるようになったのは
19世紀の後半からという。
パーティーや職場などに、大人がわざと
おもちゃのようなブローチを着けていく遊び心も
私は好きだが、伝統的なクリスマスの慣習に
静かに心を寄せられるこうしたジュエリーは、
1年の最後の月に相応しく、良いものだと思う。

 
2014-12-24-WED

 
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(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN