これまでのこと、ブタフィーヌさんのこと。

第8回 たかしまさん、結婚する。そして離婚する。

── たかしまさん、結婚はいつですか?
たかしま イラストレーターとして独立した直後です。
29か、30か、そのくらいでした。
最初の会社の同期で、
大阪と東京で遠距離恋愛でした。
けっこう反対されたんですけどね、
会社辞めるとき。
── そりゃそうでしょう。
たかしま 経過は話してなかったんですよ。
言うと反対するし、と思って。
東京にたまたま、遊びに来たときに
日比谷公園で、
「ごめん、実はもう辞めるって言っちゃった」
みたいな話をしたら、
ものすごい泣いて怒って。
── また無茶な。
たかしま はははは。
でも雇ってくれて。
── 怒られてばっかりですね。
たかしま ははは、ほんと怒られてばっかりですね。
最終的には、けっこう理解してくれて
結婚したわけですけどね。
── 息子さんの「そらくん」が生まれたのは。
たかしま そらが生まれたのは、98年です。
結婚して、1、2年ですね。
── 妻子を養っていたんですね。
イラストレーターとして。
たかしま そうですね。
仕事は一応、彼女も辞めなかったんで、
ふたりで働いてたんですけど、
マンションを買ったんですよ。
── ええ!
たかしま ローンとか、
一応ぼくが払ってたので、
そのぐらいには生活できていました。
── なぜ離婚したんですか。
たかしま シンプルに言うと、
ぼくがわがままでした。
行きあたりばったりで、
結局、自分のやりたいことしか
見えていないわけですから。
根本的に、お互いの生き方を
理解できず、変えることもできないまま、
ぶつかる機会が増えていったんです。
── 変な言い方だけど、離婚までの道って
大変なことだったんじゃないですか。
たかしま はい、とても大変でしたね。
話し合いでらちがあかなくて、
お互い離れた方がいいと思ったんで、
最初はぼくが出て行ったんですよ。
そして話し合いをしても、
平行線なんですよね。何度話しても。
ぼくとしてはしばらく別居生活を続けても、
このまま、やっていけるんじゃないかと思っていた。
ぼくは親父が、たまにしか帰ってこない
親父だったじゃないですか。
そういうスタイルで、子どもに会いに来て
また、仕事に行くみたいな、
そういうスタイルもありなのかな、
ということを考えていました。
でも、それは理解はされないですよね。
「マグロ漁船に乗ってる
 船員さんみたいなもんだと思ってくれれば」
なんて言っても、本気で怒られました。
結局、ふたりの話し合いじゃ無理だ、
っていうことで、
家庭裁判所にお願いすることになりました。
ただ一番ネックだったのは、
最終的にはお金の問題でした。
── 慰謝料、ローン、養育費。
たかしま マンションを買ったときは、
「いつでも売りたくなったら売れますよ」
みたいな話だったんですけど、
いざ査定してもらったら、
とんでもない話で。
どうしようかって悩みつつ
別居生活をしてたんですけど、
そこで、奇跡的に、
『ビッグ・ファット・キャット』
の話がくるんです。
── 幻冬舎さん。
たかしま はい、幻冬舎の編集者さんから
今度英語の本、実用書を作るんだけど
ちょっと変わった本にしたい、
絵をいっぱい入れたいと。
その人も元MacFanの編集者だったんです。
この本は、爆発的に売れる本じゃないけど、
丁寧にみんなで作って、息の長い本にしたい
っていう話を聞いて、
「ぜひやらせてください」っていうことで、
やらしてもらうんですね。
それが、もう誰も予想していなかった
ミリオンセラーになってしまったんです。
── それで、いろいろなことが
解決に向かっていったんですね。
ということは、そんな前じゃないですよね。
たかしま 2000年です。最初の本が売れたので、
そのストーリーを膨らませて、
絵本みたいなのを一緒に作れたらいいね、
という企画も通って、
何年もかけて、7巻までで完結の話になって、
最終巻が出たのは、2004年の暮れかな?
── いまも、そらくんとは、週末はいっしょに?
たかしま 月に1、2回っていう感じですね。
会うときは、たいてい、
元の奥さんもいっしょに、
3人で遊びに行ったりとかしてるんです。
向こうもいま仕事続けてるんで、
お互いのスケジュールが合って
そらも学校が休みのとき、ってなると
なかなか日が取れないんで、
だいたい月に1、2回、
会えればいい感じですね。
── 10歳ですか。
たかしま このあいだ11になりましたね。
いつかは、ちゃんと、こう‥‥
腰を据えて話したいとは思ってるんですけど。
もしかしたら、ぼくよりも
はるかに、察してると思うこともあるんですが。
この間も、突然、3人で
車乗ってたら、なんかの話の流れで、
「そんなんだから、ふたりは離婚しちゃうんだよ」
みたいなこと、ポロッと急に言ったんですよ。
離婚っていう言葉、一言もふたりからは
言ってなかったのに。
そらも、もうちょっと大きくなったら、
普通に、ひとりでも電車に乗って
遊びに来てくれるような感じに
なったらいいなと思ってるんですけどね。
2008-12-17-WED
(つづきます!)
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