これまでのこと、ブタフィーヌさんのこと。

第9回 たかしまさん、「ブタ子さん」を描く。

── 立ち入ったことを
ずいぶんお聞きしてしまいました。
ここから、やっと、
イラストレーターたかしまてつをの章に入りますよ。
たかしま はははは。
── たかしまさん、絵を描いて、
二科展に出されるじゃないですか。
あれは、どういう気持ちなんですか。
たかしま 絵を描く仕事って、画家かイラストレーターか、
っていう感じで、分けられると思うんですけど、
イラストレーターになった当時の気持ちは、
画家よりも、イラストレーター、
商業イラストレーターに憧れたんです。
広く広くいろんな人に見てもらって、
好きだって言ってもらえたら、
すごくうれしいと。
発注してくださった方も
その人がイメージするものを、
「こんなんじゃないですか」
っていうふうに書いたときに、
「その通りだ」
って言ってもらえるのが、
すごくうれしいって気持ちで
ぼくは、商業イラストレーターっていう仕事が
ほんとにやりたいっていう気持ちだったんですね。
── はい。
たかしま ところが、いろいろ、絵を描いてるうちに
だんだん、だんだん、
絵に対して欲が出てきたんです。
自分の中から表現したい、
湧き出るものを表現したい
っていう欲が出てきて、
そういう絵っていうのは、
商業イラストレーターのカテゴリーではない
絵になってしまうので、
じゃあ、そういうのは、
どこで吐き出したらいいかって
いうふうに考えると‥‥
かと言って、ひとりでもくもくと描いて、
誰にも見せない絵っていうのは、
やっぱり、つまらないなと思って。
描いたら誰かに見てもらいたい。
で、「いいな」って言ってもらえたら
うれしいって気持ちはあるんで、
どこ、持って行こうかっていうので、
それの一つが二科展なんですね。
── なるほど。
たかしま 自由に描いて、発表する場ということで。
── そして、最近、大学にも入られた。
武蔵野美術大学の2年に
編入されたんですよね。
たかしま はい、通信制です。
もともと、絵は好きで来たし、
イラストレーターになれたけれど、
きちんと勉強したことは一度もないんです。
知識と技術がきちんとあったら
もっと表現したいことが表現できるかもと思い、
通信制で勉強しなおすことにしました。
これも、そういう道があると知って
突然思い立って、この夏から、なんですけど。
── 思い立つと、やらずにはいられないんですね。
では四コマまんがは、どういう経緯だったんですか。
あれ、ホームページで発表したんですよね。
「ほぼ日マンガ大賞」にお送りくださった
ブタ子さんとタコパンダちゃんは。
たかしま あれを描くきっかけになったのは、
都庁でのグループ展で、でっかいキャンバスに描いた
「ブタ子さん」なんです。
── はい。
青い髪の毛のあるブタ子さん。
たかしま 「ブタ子さんに話してごらん」
っていうタイトルで描いたんですけど、
これを見た人が、たったこんだけの絵なのに
なにか、ストーリー的なことを、
ぼくに逆に語ってくれたりするんです。
「きっとこの子はこういうところに住んでるよね」
みたいに。
── このときは、ただの、と言ってはなんですが、
物語ではなく、絵だったんですね。
たかしま そうです。
ただ、ぼくの中でも、
ちょっと前後しちゃうんですけど、
『ブタフィーヌさん』の5巻に
「ほぼ日ストア」の特典として
つけてくださることになった
「おばけやしき」の設定はあったんです。
そもそも、順番で言うと、
一番最初に描いたのは、
この絵なんですよ。
たかしま これはですね。
ぼくの住んでる部屋が
「東京R不動産」による
リノベーション物件で珍しいってことで、
NHKが取材に来たんですよ。
照明さんが置きわすれていった紙なんです。
── たぶん、ライトを淡くするやつですよね。
たかしま これだけ届けるもんでもないかな、と思って、
ただ、ちょっとおもしろい質感だったんで、
捨てるに忍びないってことで、
作業机の上に置いておいたんですよ。
ぼくは、夜中にお酒飲んで、
酔っ払って絵を描くのが好きなんですね。
たのしいなぁと思っていつもやってるんですけど、
わーっていろいろ描いたあとに、
アクリル絵の具が余るじゃないですか。
で、余った絵の具ももったいないんで、
いろんなところに描いたりするんですが、
あ、この紙になんか描いてみようと思って、
描いたのがこれなんですね。
── 生まれたんですね。
たかしま 生まれたんですね。
── まず、丸描いてますよね。
たかしま まず丸描いてますね。
── 丸描いて、丸描いて、丸描いて、みたいな。
たかしま 順番で言うと、ブタの鼻になったのは
一番最後なんじゃないかと思うんですよね。
── 鼻がないと、
ちょっと昭和っぽい女の子になりますもんね。
たかしま で、そのときは、
余ってた絵の具で塗ってるんで、
ぼくの全部好きな色なんですよ。
水色と白と黄色とピンク。
一番使う色なんですね。
その色で構成されてるんですよ。
翌日、酔いがさめて、見て、
あれ、こんなん描いたんだと。
自分でもなんか気になったというか、
おもしろかったんで、棚のところに、
磁石で止めて貼っておいたんです。
これは、もう、そのままなんもなく
タイトルもなく、ずっと貼られてたんです。
2008-12-18-THU
(つづきます!)
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