150年の歴史の中で、日本のカレーがどれだけ独自の手法で進化を遂げてきたのか、具体的に実感している人は少ないだろう。そもそもそんなことに興味のある人がどれだけいるかわからない。目の前においしいカレーがあって、お金を払えばそれを食べられるということが重要なのだ。あるカレーを食べた時にそれがそのおいしい味わいにたどり着くまでの軌跡を振り返る人がいたらそっちのほうが変だ。
しかも我々は、長年、少しずつ進化し続けているカレーを継続的に味わっている。ある意味、成長を間近で見ているわけだが、その分、変化に気づきにくいということもあるだろう。20年ぶりに同窓会で再会すれば、「お互い老けたよなぁ」なんて感慨も生まれるだろうが、毎年のように会う友人なら「いつまでも変わらないね」と思うのと同じだ。
日本のカレーは少しずつ進化してきた。それが150年続いたわけだから、昔と今を比べれば相当な変化を遂げたことになる。まるで別物になったようなものだ。じゃあ、具体的にどこがどう変わったのだろうか。日本でカレーをおいしくするために重要とされているプロセスは、色々とある。
1. 玉ねぎをアメ色になるまで炒める
2. ブイヨンをひく
3. 長時間をかけて煮込む
4. スパイス30種~40種をブレンドする
5. カレー粉と小麦粉をオーブンで焼く
6. 隠し味を駆使する
7. ひと晩、寝かせる
大事なことは、これら7つのプロセスは、すべてが日本で独自に生み出された手法であり、日本のカレーでしか重視されていない。意外に思えるかもしれないが、インドその周辺諸国をはじめ、世界中に存在するカレーにおいて、僕の知る限り、この7つのポイントのどの一つをとってもことさらに重視する傾向は存在しない。カレーをおいしくするために日本人だけが良かれと盲信しているのだ。このことは突き詰めれば突き詰めるほど頭は混乱する。気を付けなければ夢に出てきてうなされてしまいそうだ。