エナガのねぐら。  カワイイ小鳥の観察記 フロム富士山麓
 
今年の繁活レポート 観察日 2012年3月1日 − 2013年5月31日
 

エナガファンクラブの皆さん、こんにちは。

写真集「エナガのねぐら」の制作は最終段階です。
今頃は印刷工場でドバーッと印刷・製本されて、
出荷されるのを今や遅しと待ち構えていることでしょう。
製本されて積み上げられた大量のエナガ写真集…
ああ。印刷屋さんの倉庫をコッソリのぞいてみたい…

さて今回は、エナガ達の今年の繁活をレポートします。
鼻息を荒らげながら、ごらんください。

今年見つけた巣は全部で7つ。
そのうち無事巣立ちまで確認できたのが1つ。
見てないうちに巣立っちゃった(らしい)のが1つ。
3つはカケスなどの天敵に襲われて失敗し、
残り2つは途中で放棄しました(原因不明の失敗)。
繁殖の成功率は最低1/7=14.3%、最高2/7=28.6%で、
このあたりの森林地帯の平均値と思います。

写真をならべてみました。

驚いたことに、昨年と営巣場所がまったく違います。
昨年はすべての巣が直視できない位置(クマザサの薮や、
針葉樹の高いところ)にあったのですが、
今年は4/7個が落葉樹の木の又に作られたため、
直接目で見たり、撮影をすることができました。
年によって流行する営巣場所が違う、なんてこと、
あるんでしょうか? それともたまたま…なのかな。
あと10年くらい観察すれば、年ごとに流行が有るのか
(もしくは無いのか)わかるかもしれませんね。

(※巣の観察にあたっては、エナガを刺激しないよう、
 20〜30メートルくらい離れたところからコッソリと
 行っております。また、巣を狙う天敵のカケスや
 カラスに気づかれないよう、細心の注意を払っています。
 みなさんも小鳥の巣を観察する時は、決して近づかず、
 ひっそりと静かに、暖かく見守ってくださいますよう、
 よろしくお願い申し上げます!)

写真集では2号の建築工程を掲載しておりますので、
ここでは7号の工程を紹介いたしましょう。

7号を発見したのは2013年5月3日の早朝で、
「いままさに巣を作りはじめた」場面に出くわしました。
すごく面白いので、日付順に紹介しまーす。

▲2013年5月3日 土台にする部分をお腹でグリグリ。

最初に木の又のところに蜘蛛の卵嚢をこすりつけ、
その上にコケを運んで来て、このようにお腹を使って
グリグリグリグリと押し付けていました。
そのグリグリする仕草が可愛くて可愛くて可愛くて、
観察しながら「もうだめだ」とかつぶやいていました私。

 

▲2013年5月4日 湯船くらいになりました。

蛾類の繭をほぐした糸でコケをしばりつけるようにして、
どんどん壁を立ち上げて行きます。

 

▲2013年5月5日 湯船が深くなってきました。

どんどん壁を高く積み上げます。

▲2013年5月6日 一羽は入り口を作っていて、
 もう一羽は外で待っています。

天井のアーチを作って、あっというまにできあがり。
驚いた事に、たったの4日間で完成です。
普通このあたりのエナガは3月から
数週間かけてのんびりと作りますので、
5月3日から作りはじめて
あっというまに出来たこの巣は、
たぶん今期2回目の営巣だと思います。

この7号、このあと産卵と抱卵までは
確認できたのですが、
5月31日、カケスに巣と卵が壊されて
失敗に終わりました。
食って食われてが自然の摂理。頭ではわかっていても、
「俺のエナガになにすんじゃい!」とカケスの野郎に
文句のひとつも言いたくなるってものです。ぶつぶつ…

おほん。

気を取り直して、繁活の成功事例を紹介しましょう。
5月10日、いつものように3号の様子を見に行くと、
巣にエサを運んできた親鳥が、とまどっています。
巣の中にヒナがいないみたいです。
そこで周囲をじっくりと見回してみると…

▲いた!ちんまいのがいたよ!(2羽写っていますね)

巣のすぐ近く、ツツジの薮の奥深くに、巣立ったばかりの
エナガのヒナ(巣立ちビナ)が4羽、
てんでばらばらに隠れておりました。

おもしろいことに親鳥は、
いつものクセでエサを巣へ運んで行ってから
「あ、そうだ、巣立ったんだった」
と思い出すみたいな感じで、
すぐそばの薮のヒナ達にエサを運ぶ、
という行動を2度くりかえしました。
ひょっとして、巣立ったことを忘れちゃったんじゃなく、
巣立った後の居残り確認をしていたのかもしれませんね。

▲尾羽短い! 真面目な顔つき!

羽が短いので、まだうまく飛べません。
それでも薮の中をピュイピュイ言いながら移動して、
枝の上に集まってギュウギュウに…

▲巣だったのは四羽の兄弟でした。ホゲー。

黄色いクチバシをホゲーっと開いてこっち見たりして、
かわゆいのう。かわゆいのう。

▲日が暮れてだんだん薄暗く。

この日はずっと日暮れまで、
巣立ちビナのあとをついて歩きました。
四羽で仲良くギュウギュウになって、
寝たり、起きたり、体操をしたり。
ふーーーーーーーーー。

ところがこの四兄弟、
翌日見つけたときには、
三羽に減っていました。

▲三羽に減っちゃった!

いなくなった一羽は体が弱かったのか、
それとも天敵に襲われたのか、
理由は定かではありませんが、
これも、自然の厳しさです。

幸い、三羽兄弟はスクスクと育って成鳥になりました。
今ではもうこの三羽の見分けはつきませんが、
たぶん、うちの近所をテリトリーにしている冬の小群に
混じって暮らしていると思います。

この三羽兄弟が揃ってノビーっとなっている写真が、
写真集『エナガのねぐら』のカバー裏になっています。
ぜひごらんくださいね。

今年ハッキリと営巣〜巣立ちを観察できたのは
この兄弟だけでしたが、
他の(未発見だった)巣から十羽ほどのヒナが巣立って、
元気に飛び回っているのが確認できました。

エナガ達は、数々の苦難を乗り越え、
今年も立派に繁殖してくれています。
ありがたやありがたや。
願わくば未来永劫、エナガが繁栄いたしますように。

以上、今年2013年の繁活レポートでした。

来週は、今年の夏から現在までの様子をお届けしまーす。

写真集『エナガのねぐら』紹介のコーナーです。

下にご紹介している表紙は、正確に言うと「カバー」です。
カバーは写真集をクルリと包んでいる「別の紙」。
そのカバーをはがすと出てくる本体の「表紙」を、
ここにご紹介します。


▲写真集『エナガのねぐら』の裏表紙+背表紙+表紙。

淡い単色で印刷された森の遠景、小さなエナガが一羽。
涼しげで、とても品のある表紙となっております。

本体の表紙を見るためにカバーをはずしてみる、
というのは本(とその装丁)が大好きな人の常です。
みなさんもぜひ、お手持ちの本のカバーをはずして、
表紙とか裏表紙とか、いろいろなところをながめて、
ブックデザイナーさんのこだわりを楽しんでくださいね。

写真集『エナガのねぐら』の
ブックデザインを担当してくださった葛西恵さんは、
この夏に発売となった私の写真集、
『ミナミコアリクイ』のデザインも担当して
くださいました。
(ついでにいうと『りすぼん』も!)

ミナミコアリクイの表紙はコレです。


▲写真集『ミナミコアリクイ』の裏表紙+背表紙+表紙。

ミナミコアリクイの背中のモフモフした感じを
うまく表紙に持ち込んでくれました。
本をお持ちの方は、いますぐカバーをひんむいて、
表紙を確認してくださいね。モフモフ。

ちなみにカバーはこんな写真です。


まだお持ちで無い方は、こちらでどうぞ(笑)。
『ミナミコアリクイ』イースト・プレス/1365円(税込)

2013-12-06-FRI
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