怪・その4

「島の宿」



20年ほど前、
私はダイビングにハマっていました。
海で知り合った気の合う仲間と、
毎月のように日帰りや数泊で
あちこち出かけていました。

ダイビングの本数
(使用したタンクの本数が経験値となります)を
増やしたくて、多少天候や海況がよくなくても、
気合で潜る! というほど。
もちろんインストラクターさんのガイド付きですが。

その日は仲間の男性と2人、
梅雨の曇天のO島に一泊、
翌日ダイビングの予定でした。

そんな天候で平日ということもあり、
広いペンションに泊まり客は私たちだけでした。

長い廊下の崖側と庭側に部屋が5つずつくらい、
同じく2階にも部屋がありましたが、
2人なので、一階のいちばん手前の崖側に男性、
庭側に私ということになり、
明日のダイビングに向けて荷ほどきをしていました。

常駐している女性スタッフがひとりいらして、
お風呂や食事の面倒を見てくださいました。
ゲストは私たちだけなのに、
2階の廊下をパタパタと
スリッパで歩く音が聞こえたので、
彼女が何か取りにでも行ったんだろうな〜、
くらいに思っていたら、
直後に一階から
「お風呂の支度ができましたのでどうぞ〜」と
彼女の声が‥‥。

「???」と思いながらも、
ふだん霊感などない私はお風呂に入りましたが、
その浴室がもうなんとも言えない
ど〜んよりした空気に包まれていて、
シャンプー中も目をつぶったら
何かに体を乗っ取られそうな? 感じ、
とでも言いますか、もう急いで出て、
慌てて仲間のいる食堂に行きました。

私たちの食事が用意されていて、
少し離れた場所に彼女がいたので、
3人しかいないんだから一緒に食べようと誘い、
雑談の後に、
先ほどの話を恐る恐る
(気を悪くされるといけないので)したら

「○○さん、霊感強いんですか?」
と逆に聞かれ、
いえこんなこと初めてです、と言うと
「あ〜、それでもわかっちゃうんですね〜」と‥‥。

いる、そうです。
彼女は慣れたと言っていました。

そんなことを聞いて部屋で怖くて、
ずっと電気とテレビをつけっ放しだったので、
翌日のダイビングはあまり楽しめた記憶がなく
私はそれ以来、日帰りでしか行っていません。

(楽しい美容室)

こわいね!
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