怪・その6

「ベッドの下で」



小学生の頃の話です。

当時、1段目を引き出す形の2段ベッドを
妹と使っていましたが、
それぞれの部屋がもらえることになり、
わたしは上の段のベッドを使うことになりました。

新しい部屋に移り、
ベッド下のスペースには
衣装ケースを入れようと思いつつ、
初日は片付けもそこそこに眠りにつきました。

その日の夜中、ふと目を覚ますと、妙な音がします。

ギイーッ、と何かを引っ掻くような音です。

同じような音がいくつか重なって聞こえてきます。

寝起きのぼんやりした頭で、
何の音だろう‥‥と考え、
爪の音だ、と気づきました。

ベッド下のスペースから、
フローリングの床を
爪で引っ掻く音が聞こえるのです。

眠気は吹き飛び、
恐怖でパニックになりながらも、
起きていることを気づかれてはいけないと
必死に気配を殺して
心の中でうろ覚えのお経を繰り返し唱えました。

最初は小さくゆっくりだった音が
徐々に速く大きくなり、
ベッド下全体をものすごい速さで動き回った後、
突然消えました。

しばらく汗びっしょりで
身動きできずに固まっていましたが、
気づくと眠っており、
目が覚めるといつも通りの朝でした。

家族と一緒にベッド下を確認しましたが、
特に傷もなく、
ただフローリングの床があるだけでした。

急いで衣装ケースを入れて
ベッド下のスペースを埋めましたが、
怖くてしばらく
ベッドで寝られなかったのを覚えています。

もしあの時、ベッド下のスペースを覗いたら、
一体何が見えたのか。
想像すると鳥肌がたちます。

あれ以来、ベッドは必ず
下にスペースがないタイプを選ぶようにしています。

(あさがお)

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