怪・その40

「上司は普通の人」


20年ほど前に勤めていた、
雑貨の製造と販売、卸しをしていた会社でのこと。

今で言うブラックな会社で、
私の前任者も体調を悪くして退職したと聞きました。
たしかに、無報酬残業の強要など、
健康でいられるほうがおかしいくらいでした。

そんなある日、私の前任者が
回復出来ずに亡くなったと知らせが入りました。

会社はブラックとはいえ、
私の直の上司は普通の人だったので、
お通夜へ行きました。

それからまる一年。
そんなことはすっかり記憶から抜け、
自分もクタクタになりながら
一人で企画書をまとめている時でした。

事務所の電話が鳴り、
「はい、〇〇でございます。」と対応しましたが、無言。

再度言ってみるも、無言。

間違い電話だな、と受話器を置いた瞬間、

"〇〇さん"

と、上司を呼ぶ女性の声が、
耳ではなく、頭の中で聞こえました。

瞬間、鳥肌です。
生きた人の声ではないと確信があったからです。

会社へ戻ってきた上司に
亡くなった前任者の一周忌では? ということと、
電話の件を話しました。

「次の休日にお線香あげに行ってくるよ」
と、言ってくれました。

翌年はどうだったかはわかりません。
私も体調不良で退職したので。

(卯年のチャム)

こわいね!
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2024-08-31-SAt