ほぼ日刊イトイ新聞プレゼンツ モノはコトなり、コトはモノなり。 そしてコトバは、すべてをつなぐ。 |
世界一小さい歯車を生み出した 樹研工業の社長、松浦元男さんの話は とどまるところをしりません。 昨日の放送では世界一の中小企業の秘密を いろいろと話していただきました。 聴き逃してしまった方、 もう一度放送内容を味わいたい方、 放送のダイジェストを今日もお届けしますので ぜひどうぞ! ※2月10日放送内容のダイジェストはこちらからどうぞ ※2月11日放送内容のダイジェストはこちらからどうぞ (今日はいよいよラジオでは最終日! こちらもぜひ聴いてみてくださいね。 放送の詳細はこのページの下へ) ●値段競争はしない。技術力で勝負する! 今夜は、松浦さんの会社のお話というのを、 じっくりおうかがいしたのです。 糸井(糸井重里) 最初に会社、屋根がなかったってとこから、 僕は聞きたいんですけども。 松浦(松浦元男さん) お金がなかったから屋根を張るトタンがなかったんです。 それで、ちょうど運良く台風だったんです。 台風済んだあと、 もうひとり開業のときからいるヤツと一緒に トタンを拾いに行ったんですよ。 ちょうどうまいこと集まりまして。 それを2人で打って工場が完成したんです。 よくみんなそういうのを見て 「苦労されたんですね」っていうけど、 僕らぜんぜんそう思ってないですよ。 「うまいこと屋根集まったなぁ」って喜びなんです。 糸井 そのあたりは、根っ子にやっぱり、 バンドマンの心が‥‥。 柳井(柳井麻希さん「GOODS JOCKEY」アシスタント) 音楽をされてらっしゃったんですよね。 松浦 あんまり明日のことを心配するような 世界じゃありませんからね。 逞しく生きていこうっていう気持ちは みんな持ってますけども。 あの世界はね、腕が勝負でしょ? ビジネスもやっぱり技術力が勝負なんです。 値段競争なんかやってたら、会社潰れますから。 それを避けるためにはね、人のやらない技術を開発する。 昔、マンボって流行ったでしょ? あのころオーケストラにトランペットが 4人もしくは5人いたんですよ、マンボオーケストラ。 最後のひとりがいちばん高い音出すだけなんです。 で、この人が1音でも高い音が出ると、 給料が上がったんですよ。 糸井 わかりやすいですね(笑)。 松浦 わかりやすいでしょ? 我々も人の作らないものをやれば 必ず値段競争から避けれるんですよ。 これ、大事なことだと思うんですよ。 糸井 大きい企業が、大きい企業同士で1円でも安く、 って30銭、20銭の戦いをしちゃいますよね。 松浦 あれはもう、ぜんぶ潰れますよ。 糸井 ほんっとに自分の首を締めてるような気がするんですよ。 松浦 だって、集まってる人たちが、能無しばっかりだもん。 糸井 あいたたたたたた。 ●職員室の中で育った会社?! 松浦 ペーパーテストをやって会社に入れるでしょ。 そうすると、商売のうまい人じゃなくて、 ペーパーテストの上手な人が入るわけでしょ? 糸井 いわゆる勉強のできる人ですね。 松浦 ええ。で、昇格試験やるでしょ。 そうすると、なんか平等みたいだけども、 実は試験のできる人が偉くなってるわけですよ。 日本でいちばん有名な自動車会社は ないんですよ、その試験が。 糸井 やっぱり、なんかあるんですね、あの会社にはね。 僕の知ってる、確か船井電機さんの社長さんも、 トヨタに研修に行かせて、 そこから伸びたって話をなさってましたね。 松浦 なるほど。 トヨタさんはね、同じ愛知県の中ですけど あそことかスズキさんとかは、 もうなんか社員も社長も言いたい放題言ってるね。 ぜんぜん官僚じゃない。 柳井 それは松浦さんの会社でも共通するところですよね? 松浦 我々はちょうど愛知県の豊橋でやってるでしょ? 西向けばね、みんなトヨタ系。 東向けばホンダだ、スズキだ、ヤマハだ、 もう職員室の中で仕事やってるようなもんで(笑)。 立地条件としては、とってもいいと思うんです。 糸井 商いを考えるのに、すごくいい土地なんですね(笑)。 松浦 そうなんです。もう、どっかの真似してりゃあ なんとかなりますから。 糸井 でもちょっとでも余計にいろんなこと知れば知るほど、 自分を不自由にしていくっていうのが、 秀才の常じゃないですか。 松浦 僕らは幸か不幸か、そういうところ知りませんから。 もうやっただけ得っていう感じでね。 樹研工業社長 松浦元男さん ●会議は誰でも自由参加、しかも弁当付き。 糸井 先着順の入社っていうのもそうだし、 役員会っていうのもないんですか? 松浦 もともと役員会っていうのはあったんですよ。 そこへあるとき台湾籍の女の子が 「ひとこと言わしてくれ」というもんだから 「来て言ってみろ」といったら、 けっこう面白かったんですわ。 「それじゃあみんな入れちゃおうか」ということで、 掲示板に「会議、誰が来てもいいから、 来たヤツには弁当をサービスするよ」と(笑)。 はじめは弁当食いに来たヤツが多かったんですけど だんだんだんだんみんな参加するようになって。 今8割方の人間が来ますね。大きな会議になっちゃって。 糸井 自由参加性の会議といっていいんでしょうかね? それはウチもおんなじだな、そういえば。 松浦 そうです。中には11半ごろ来て弁当だけ食って、 「ちょっと昼から用がありますから」って 帰ってくヤツもいますけど、 僕はそれはそれでいいと思うんです。 来てちょっと様子見て 「ああ、俺はお呼びじゃないな」と思ったら帰って、 それでいいんですわ。 そうやってコミュニケーションを積み上げてくことが とっても大事なことだと思うんです。 糸井 必要な人が集まって、 俺も聞きたいと思った人がまた来る、みたいな。 それは小さい会社の利点ですよね。 松浦 利点だと思いますねぇ。 糸井 3万人いる会社でそんなことできないですもんね(笑)。 松浦 できないもんねぇ。 柳井 私、昔、いわゆる普通の企業に勤めていたときに、 逆に帰されましたからね。 最初に参加して、「もういいから」って 言われちゃうのは、 すごくやっぱり社員としては‥‥。 松浦 嫌ですよねぇ。 柳井 ほんとにね、あんなに気分が‥‥。 糸井 お、柳井、本気で怒ってるねぇ。 柳井 もうねぇ、その瞬間に「この会社辞めよう」って 思っちゃいましたもん(笑)。 ●定年? くたばるまで辞めさせないぞ。 松浦 それは定年もいっしょですよ。 ぜんぶ物事を憶えて、何十年も一緒にいたのが もう60歳になって辞めてくってのは、 僕はもう泣けちゃってね。 「頼むから残ってくれ」って 言いたくなるのが僕の心情で。 だから60歳になると、多少記念品を渡して、 手紙を添えてやんの。 「ウチはもうヤクザといっしょだから 抜けられないぞ」っていって(笑)。 糸井 あはははは、脅かして。 柳井 すごいお手紙を頂けるんですね。 もうとにかく「もう頼むから辞めさして」って 言うまでは「もう辞めさせないぞ」って。 松浦 いやそんな「辞めさして」って言ったって 辞めさせない。「くたばるまでダメだ」って。 最近は女性の出戻りの社員。 つまり子どもさんから手が離れて少しずつ入ってくる。 それから男の社員の息子さんたち。二世が入ってくる。 あと5年か10年経ったら、出戻りと二世に、 みんな分捕られちゃうと思うんです。 これはやっぱり僕は、ほんっとに嬉しい。 結婚して辞めていった人が帰ってきてくれる。 子どもが突然来て「おじさん!入れてよ!」 「どこの子だ!?」「ワシはあれの息子だ!」って。 こんな小さいときから知ってますよ。 それで、もう来て一人前になってるでしょ。 ま、オヤジはビックリするわ(笑)。 だけど息子さんが来てくれるっていうのは、 そらぁ嬉しいですよ。 糸井 何年もやってる喜びってありますねぇ。 松浦 あります! ●会社は年功序列。 兄貴分は絶対追い越されるな! 柳井 とにかく会社に、ルールもないし、 あとは出勤時間というのも基本的には‥‥。 松浦 だいたい朝8時半ぐらいに、 みんなやってるみたいですけど、 私はその時間いませんから、 ほんとにやってるかどうか知りませんよ? だいたいやってるだろうと思いますけど。 終わりはバッと5時半に終わりと。 柳井 残業というのは? 松浦 はじめはいい加減に、アナログで、 終わりはデジタルだっていってやってますから(笑)。 柳井 それはきっとその、出勤時間だけじゃなくて、 全てにおいて、ま、お仕事もそうですよね。 松浦 そうです。もちろんサービス残業だとか そういうことは絶対いかんということで、 キチッと払いなさいと。 あんまり残業が多いと張り倒すぞー、 なんてやってますけどね(笑)。 こんど内緒でやるヤツがいたり。 今の若い人は働かないとか、現場嫌いだなんていうのは、 僕ら見ててね、信じられないです。 だって、その小さいギア(100万分の1グラムの歯車)を 作ったヤツだって、僕の知らないうちに 朝4時から来て格闘してたっていうんだよ。 糸井 ストーブがついてるんで、何だろう? と思ったら、 そいつが。朝早く来てやってた。 松浦 知らなかったんですよ。 で、本人はケロッとして「できましたよ」と。 イキなもんですよ。 柳井 カッコイイ! 社長さんビックリっていう 充実感というか、「どうだ!」って。 やっぱり社員の方はそこでモチべーション 上がりますよね。 松浦 そうなんですよ。心意気なんですよ。 糸井 やっぱりそういう風土の会社っていうのは、 歳をとって頑固になるってことは、 できにくいでしょうね。 いつでも競争ですから。 松浦 そうです。今、すぐ成果配分とかいろいろ言うでしょ? 僕らぜーんぶ年功序列なんです。 兄貴分は兄貴分、そのかわり絶対追い越されるな! 親分は親分。子分に負けるな! もうこの一本やりです。 柳井 もう気は抜けませんね。 松浦 ええ。だから僕も抜かれたら終わりなんです(笑)。 糸井 はぁ〜。松浦さんはいつでも、 絶対に1番でいたいっていう欲望ですね、それは。 松浦 そうです。そうです。 柳井 あ、でも、その欲望は、 ほんっとにいっちばん大事なモチベーションですね。 糸井 年を取らせない。 松浦 これは見方によったら新撰組ですよ(笑)。 糸井 そうだね。ある意味で残酷かもしれないです(笑)。 面白い。成果主義なんて、逆に言うと甘いかもしれない。 松浦 あれはね、インチキ。 糸井 ISOみたいなもんだ。 松浦 そう。そんなもん人の力が測れますか、第三者に。 糸井 うーん。若いときだけ才能を発揮する人だっているし。 松浦 それと年取った人たちがたとえば 病気で長期休むわけでしょう? 40、50になるとそういう病気にあいますよ。 そのときに給料を打ち切ったりして、 そんなのを若い人が見てたらその会社に 帰属意識なんか絶対に生まれません。 だから僕らはどんっなに何年休んだって ちゃんと給料払います。 糸井 やってきてるんですよね、それを。 今晩の放送は松浦さんをゲストに迎えた最終日。 樹研工業はさらにどこに進んでいくのか? 興味深いお話が聴けますよ。 ぜひラジオで松浦さんの肉声を聴いてください。 明日も放送内容のダイジェストを本ページで お届けします。
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2004-02-13-FRI
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