糸井 |
立命館大学が
学生を迎えて春夏秋冬を繰り返してるところには、
新しい仕事は、とくに生まれない。
「出る人がいて、入る人がいる」だけの循環です。
でも「滋賀に新しいキャンパスをつくろう」って
決めたときから、仕事がどんどん増えていった。
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今村 |
ええ。
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糸井 |
言い換えれば、仕事が「つくれた」わけです。
APUにしたって
「別府でよけいなことをはじめる」ことこそが
「仕事をつくった」と言わるわけで。
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今村 |
そうですね。
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糸井 |
もうひとつ特徴的だなあと思うのは
ここまでは「大学の話」なので
極端に言うと「もうけが要らない」んですよね。
つまり、企業の場合には
「別府の山の上に大学つくるって言うけどさ、
それっていくらもうかるの?」
と、かならず問われるじゃないですか。
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今村 |
ええ、ええ。
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糸井 |
でも、大学の場合には
「こんなにも、もうかりますよ」って説明は要らない。
ここが、重要だと思うんです。
つまり
「利益を出さなければならない」という使命があると
安易に仕事が「はじめられなくなる」んですよ。
別府の山の上の大学が、
地元の人、学生、職員みんなによろこばれながら
十分に利益も出すというのは、
実際はどうあれ
計画している段階では難しいと思われますから。
途上国からの学生の奨学金だって、ありますしね。
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今村 |
APUの学費は、九州では高いほうです。 |
糸井 |
あ、そうなんですか。
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今村 |
残念ながらというか、申し訳ないというか。
でも、そのなかから
奨学金を出していかないと、維持できない。
開学のときに集めた「約40億円」の奨学金は
もう使っちゃったので。
さらに努力をしなければいけないんです。
APUの多文化環境は、いわば「宝」ですから‥‥。
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糸井 |
宝。
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今村 |
そう思うんです。
あの大学が持つ多文化の環境というものを
維持するためには、
やっぱり、現状では、
高い学費の負担をお願いせざるを得ないんです。
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糸井 |
今の話を、企業が言ったらどうなりますか。
「奨学金としていただいたものは、
使っちゃいました。
でも、あの大学は宝ですから」
という説明は、
利益を中心に考えてたら言えないんですよ。 |
今村 |
そうでしょうね。
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糸井 |
大学だから言えたと思うんですが、
じつは「ほぼ日」でやっている仕事のなかにも
そういう仕事が、けっこうあるんです。
たとえば、東北関連の仕事。
「あれって、利益どれくらい上がってます?」
と聞かれたら
正直に言っちゃえば、ぜんぜん上がってません。
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今村 |
ええ。
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糸井 |
でも、直接的な利益は生んではいないけど、
よろこんでくれる人だとか、
コンテンツを読みに来てくれる人だとか、
東北のことを知ってくれる人だとかを
「生み出している」わけです。
「10万円、20万円の黒字が出ました」
ということよりも
「100万円、200万円、1千万円の赤字が出ました」
と言って得たもののほうが、
実は、たくさんの仕事をしている‥‥というほうが
ぼくは、おもしろいなと思ってるんです。
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今村 |
なるほど。
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糸井 |
だから、いまの今村さんの話は
もし営利目的の企業なら「クビ」でしょうね(笑)。
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今村 |
でしょうねえ。まずやらないです。無理です。
いま、日本の大学経営というのは、
収入のほとんどを
「学費」に依存してしまってる構造なんです。
具体的には「7~8割」か、それ以上を、
「学費」が占めているんですね。 |
糸井 |
ええ。
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今村 |
そういう状況で
学生の半分が留学生であるということから
奨学金を
たくさん用意しなければならないのが
APUです。
これは、すごく大きなハードルです。
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糸井 |
そういうことですよね。
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今村 |
学生が収めてくれる学費というのは
そのほとんどが
人件費、教育費、管理費に消えます。
だから、大きなビジョンにたいして
「おもしろい」「やろうよ」
と言ってくれる人が
大学の内外にいてくれてはじめて成立するんです。
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糸井 |
ゴールドラッシュのときみたいに、
お金に対してみんなが欲望する時代があったのは
たしかなんだけれど、
今は「おもしろいぞ!」ってキラキラしていると
「俺にも手伝わせてくれ」みたいな、
ビジョンのゴールドラッシュみたいなことが
起こり得る時代だと思うんです。
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今村 |
うん、うん。そうなんですよね。
開学の構想には、
多くの企業が賛同してくださり、
奨学金や
さまざまな協力を得ることができたのです。
「いいよ、ちから貸すよ」って。
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糸井 |
そうですか。
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今村 |
やはり、本当の「ビジョン」というのは
教育像や大学像を
書き換えてしまうくらいのものであるべきだなあと。
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糸井 |
なるほど、なるほど。
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今村 |
大きく言ってしまえば
われわれは「教育を根底から変えてやる」
くらいの気持ちがあったので、
とことんまでやらないと、駄目だと思いました。
「いま、これが大事なことなんだな」って、
いろんな立場の人が
認めてくださったことが、大きかったです。 |
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<つづきます> |