糸井 |
思うんですが、
「はたらきたい」という言葉にたいしては
みんな、どうしても
「就活」のことばかり頭に浮かべるんです。
つまり、
「うまいこと就職するには」みたいな話に
「はたらく」という言葉が
ちいさくまとまり過ぎてるなと思っていて。
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今村 |
ええ、ええ。
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糸井 |
ぼくが「はたらきたい」というテーマを考えたのは
みんながみんな同じ色のスーツを着て
ぞろぞろと
どこかの会社へ入っいくのを目撃したときに、
「こういう、
同じような人ばっかりいる会社に入って
いいんだろうか」
と、思ったからなんです。
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今村 |
なるほど。
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糸井 |
つまり、
「みんなと同じ服を着て、よく言うこと聞いて、
みんなと同じような答えをする人を
どんどん面接して入れちゃうような企業って、
あやうくないか?」と。
学生のほうにしても
「私は逆らいませんよ」という顔をして
歩いてるのを見て、
そんな国になったらイヤだと思いました。
ようするに、「はたらく」って
もうちょっとおもしろいことなんじゃないのと
思ったんです。
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今村 |
ええ、ええ。
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糸井 |
みんなが「食っていくこと」を、
ずいぶん難しいことのように言いますけど、
「食っていくだけ」を考えたら、
案外、それはできることなんだと思います。
でも、そこには
「食っていくだけじゃイヤだと思うのが
人間なんだ」
という、もっと大きな問題が潜んでいて。
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今村 |
ええ。
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糸井 |
今村さんのお話を聞いていて思ったのは
「はたらく」って
「自分が何をするか」ということに組み換えて
考えていくことなんじゃないかなあと。
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今村 |
なるほど。
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糸井 |
「はたらく」というのは
「仕事をつくることなんだ」というふうに、
僕は、自然と思っていました。
たとえば毎日、家の前を掃除している人がいて、
それは、お金にはならないけど、
「ありがとう」って思われること自体が
「はたらく」じゃないですか。
APUの「RA」の子たちもそうでしょうけど、
「はたらく」って、
「給料」の問題だけじゃないんですよね。
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今村 |
うん、うん。そうですね。
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糸井 |
でね、ぼくは、これまで
いろいろと仕事を「つくって」きたんですけど、
何でそうできたかって言うと、
「ひとまず、もうけのことは、あとから考える」
というやりかたをしてきたからなんです。
そして、これからの時代は、個人も法人も
「はたらきかた」って
そうなっていくんじゃないかなあと思ってます。
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今村 |
うん、うん。
ぼく、人から「好きなことしかしない」って
言われ続けてきたんですけど、
自分なりに言い訳すると
いちばん大事なことをしてるつもりなんです。
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糸井 |
ああ、なるほど。
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今村 |
誰かとまったく同じ仕事をしているだけでは
自分がはたらく意味がないと思って。
だから、人とはちがう目線で考えて
「これは大事だから、やろう」って言っても
実際、とまどう人も、いたんですね。
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糸井 |
ええ。
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今村 |
でも、そうやって仕事をずっとやってきて、
「自分の力でやってるんだ!」
という自負も多少はあったんですけど、
でもそれって、
理解してくれる人たちや、
おもしろがってくれる人たちがいなければ
できなかったということに、そのうち気づいて。
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糸井 |
そうなんでしょうね。
それは「はたらく」を考えるというときに、
すごく大きな要素ですよね。
つまり、
「おまえがそう言うんだったら、
そんなに賛成じゃないけど、手伝うぞ」
という人がいるかどうか。
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今村 |
あるいは「やらせとけ」とかね(笑)。
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糸井 |
パソコンに向かってパタパタやってたり
真剣な顔して帳面めくってたり、
そんなことばかりが仕事だと思われがちだけど、
実は
「おまえのやってること、おもしろいな」って
言ってもらうこととか、
そういうことが、ぜんぶ「仕事」なんですよね。
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今村 |
最近では、東北支援にも少し関わっていますが
どうしてはるばる、
京都にある大学から東北へ行くのかと‥‥。
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糸井 |
仕事を増やすわけですもんね。
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今村 |
でも、学生たちはやっぱりよろこんで
行ってくれるんです。
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糸井 |
それこそ「利益は関係ない」どころか、
「持ち出し」になる可能性だってある。
その上で「得たものは、何?」と聞かれたら、
「自分の中に生まれた満足だ」と言えます。
お金を使っても得られないことが、得られる。
それも「はたらく」の重要なかたちですよ。
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今村 |
「100万円あげるから、黙って座ってろ」って
言われれても、苦痛なだけですもんね。
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糸井 |
いやですよ。
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今村 |
そういう意味では
ぼくたちの関わっている「教育」という仕事も
すぐには結果が出ない。
それこそ10年、20年、30年‥‥
つまり
「後の世代に未来を託す仕事」と言いますか。
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糸井 |
ええ。
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今村 |
でも、そこが、おもしろいところなんです。
<つづきます> |