糸井 |
前に
「山下さんのお宅に
十五人ぐらい集まって、
めいめいそこに転がっている楽器を
勝手に演奏して、それをテープに録る」
ということを、やりましたよね。
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山下 |
やったねー。
「フリージャズの実験」って言って。
糸井さんは、
すごい勢いでピアノを弾いていたよ。
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糸井 |
山下さんがその時、
「なんでもやれ! 自由にやれ!」
って言うんです。
だからうれしくなって
興奮して自由にやっているうちに……
不自由になったんです。
だんだん、自分の持っている
パターンに陥っていっちゃった。
でも、山下さんが
いろいろやっているのを見ていると、
それはパターンになっていないんです。
「自由ってむずかしいんだ!」と思いました。
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タモリ |
そうなんですよね。
自由って、
ひとつのカセになってくるんです。
逆に、ある程度カセがあると
自由になれるかもしれないですよね。
ほんとに自由にやるには、
やっぱりもちろんテクニックも
相当に要るし、それ以上に精神も……。
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糸井 |
同じことをしないと決めた時に、
ふつうの人間がやれることには限度があって。
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タモリ |
限度、ありますよね。
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糸井 |
山下さんは、
一時間半でも二時間でも、
なんでもやれちゃうんでしょう?
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山下 |
いろいろなものの
組みあわせみたいなことだと思うんですけど、
それが音楽的におもしろければ
続くわけですよね。
ただ、自分でおもしろくない、
と思っちゃえる人は、
まぁそれなりにセンスがあるから
そう思うわけで、
それで煮詰まっちゃうんです。
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糸井 |
ぼくは、すぐに
おもしろくなくなりました。
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山下 |
(笑)途中で、わかっちゃったのね。
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糸井 |
自分の限界が
悲しくてしょうがないんです。
で、新しい楽器をもらうと、
ちょっと、うれしいんです。
だけどすぐに自分が
同じリズムに入っちゃって、
いいかげんになっていく、
というのがイヤでした。
山下さんは「自由」を
ナメくさっているかのように、
たのしんでいて、羨ましかった!
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タモリ |
自由って、ほんとにむずかしい。
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糸井 |
ジャズを追求していく中では
「フリーっていうのはなんなんだ?」
というところには、
かならず行くものなんですか?
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山下 |
そうですね。
ジャズとは、
「その場で即興演奏をしなさい」
という音楽ですから。
ただ、ジャズも
非常に厳密な即興の仕方ではあります。
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(つづきます) |
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