タモリ ぼくが音楽を好きだというのは、
意味がないから好きなんですね。
糸井 意味がきらいだと(笑)。
タモリ うん、意味の世界はきらいなんです。
糸井 だけど、意味がきらいだっていうのは、
意味の世界の向こう側にしかないから。
つまりそれは、あとで発生することですよね?
タモリ そうですね。
山下 きっとタモリさんは、早い段階から、
意味の世界を知りつくしたんですね。
タモリ 知りつくしてはいないんですけどイヤです。
いまだにそうです。イヤなんです、意味が。

小学校の3年生ぐらいのころのことを、
いまでも思い出すんだけど、
教室で誰かの書いた文章を読んでいて、
先生が
「さて、この作者は
 何を言いたかったんでしょうか?」
と聞いたんです。

え? 言いたいことは
すべてここに書いてあるじゃない……
そういう質問は、
今でも、不思議に思うんです。

我々の世代が、
なんか言わなきゃいけないと
感じているのは、
教育からもきているのかもしれない。
作者は、別にそれほど言いたいとは
思っていないかもしれないし。
たとえば、ただ、
おもしろいものを書きたいだけで。
山下 (笑)そうだね。
糸井 つまりさ、姑が嫁に対して、
「まあ、薄味がお好きなのね?」
というのは、
その意味は、探るべきだと思うんです。
タモリ そうそう。その意味はね。
山下 深い意味だよ。
糸井 でも、そんなことをおたがいにやりあっても
ほんとうは、しょうがないですもんね。
タモリ ずっと疑問だったんです。
それからだんだん意味がきらいになってきた。

大島渚さんがお元気なころ、
若者と討論があって……。
『戦場のメリークリスマス』のときに
若者が質問したんです。

「大島監督は、この映画を通じて、
 反戦ってことを言いたいんですか?」

そしたら大島さんは激怒して、

「そんなことは思ってません!
 ぼくは顔も売れてますし、文章も書くから、
 反戦なら、反戦!
 大きく紙に書いて出しますよ!」
糸井 (笑)あはははは! いいなぁ。
山下 しかもモノマネできける。豪華だなぁ。
糸井 ジャズも、音楽の中で、
かなり意味がない音楽でしょう?
だから、ぼくは好きになったんです。

歌には意味がありますけれども、
ジャズボーカルは一分野ですし、
ジャズの比重は楽器にきますから。
だから、好きなのかもしれませんね。

すべての人間は
意味の世界にいるわけでしょう?
もうなんでもかんでも、
意味の連鎖性の中に生きているみたいで……
それに、我慢ができないんです。
タモリ こんなにも、意味がない音楽なのに、
意味ありげにいうやつが多いんです。
糸井 (笑)
タモリ 「そんなことを
 言ってるんじゃないんだよ」

「モンクも少し垣根を越えて、
 なんか悟ったみたいだねぇ」

……しゃらくせぇ、っていうんだよね。
山下 (笑)はっはっはっは!
(ご愛読、ありがとうございました)


山下洋輔・タモリ・糸井重里による今年はじめの打ちあわせ鼎談はこちら!


2005-05-21 (c)Hobo Nikkan Itoi Shinbun 2005