高平 |
マイルス・デイヴィスの『バグス・グルーブ』。 |
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高平 |
このセッションのときに
マイルスとモンクがケンカしてるって
エピソードがあるんだよ。
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── |
ケンカしながらレコーディングですか!? |
高平 |
うん、マイルスが
「オレがラッパのソロを演奏しているときは
ピアノを弾くな!」ってさ、
モンクに注文をつけたらしいとか、なんとか‥‥。 |
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── |
それで、険悪な雰囲気に? |
高平 |
まぁ、そういう逸話が
語り継がれるほど、名盤とされているんだよね。
なにより、メンバーがすごいし。 |
── |
えっと、たとえば‥‥? |
高平 |
トランペットはマイルスでしょ。
テナー・サックスには、ソニー・ロリンズ。
ピアノは、ケンカ相手のモンクと
ホレス・シルヴァー、
ドラムはケニー・クラーク‥‥。 |
── |
そうそうたるメンバーなわけですね。 |
高平 |
うん、いわゆるオールスターセッションだよね。
モダン・ジャズの名盤。
それと、この
マックス・ローチの『ウィ・インシスト!』。 |
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高平 |
これ、なんで
「オレたちは主張する!」っていう
タイトルかって言うと‥‥。 |
── |
「ウィ・インシスト!」、ええ。 |
高平 |
まぁ「ジャズ」って、ひとつにはさ、
人種差別にたいする黒人たちの抵抗というか、
怒りの表現でもあったわけだ。
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── |
はい。 |
高平 |
で、その抗議行動のひとつである
「シット・イン」の光景を模したのが
このアルバムジャケットと
タイトルだって言われてるんだよね。 |
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── |
ははぁ‥‥それで「オレたちは主張する!」と。 |
高平 |
ビル・エバンスも入れとこう。
植草(甚一)さんも、好きだって言ってたやつ‥‥。 |
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高平 |
ああ、これだこれ、『アンダーカレント』。
『ポートレイト』とか、
『ビレッジ・バンガード』とか、
ほかにも、たくさんいいアルバムがあるけど‥‥
俺は、このジャケットが好きなんだよなぁ。 |
── |
天才ピアニストと呼ばれた人ですよね。
じゃ、高平さん、リクエストしてもいいですか?
ボーカルが入ったやつで
おすすめのものが、なにかありましたら‥‥。 |
高平 |
文句なくすごいの、あるよ。
コルトレーンが
ジョニー・ハートマンとつくったやつ。 |
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高平 |
これ、ほんとに、かっこいい。気持ちいいしね。
1曲目の「They Say It's Wonderful」なんて最高。
ボーカルもののアルバムとしては
とくにおすすめだし、
見開きの紙ジャケットもイイんだよ、これが‥‥。 |
── |
ふん、ふん。 |
高平 |
あとね、
絶対はずせないのがアート・ブレイキーだよね。 |
── |
あ、60年代当時、高校生だったタモリさんを
ジャズに目覚めさせたという、
アート・ブレイキー&ジャズメッセンジャーズですね! |
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高平 |
アート・ブレイキーといえば、
「モーニン」と「チュニジアの夜」と‥‥
「ブルースマーチ」なんかが、代表曲。
で、この3曲が入ってる
『サンジェルマン・デュプレ』ってアルバムが
日本でもいちばんよく売れたんだ。
‥‥でも、それを検索したらさ、
2枚組で5,000円もするっていうから、やめた。 |
── |
より、リーズナブルなものを
おすすめして下さってるわけですね! |
高平 |
だから、今回、選んだのは
ブルーノート盤の『モーニン』。
おそらく、日本にモダン・ジャズを
最初に根付かせたのが、彼ら。
‥‥昭和20年代の終りぐらいかな?
当時は「黒い旋風」とかって言われてたね。 |
── |
日本で大ヒットしたとき、
そば屋の出前の人までが
「モーニン」を歌いながら自転車をこいでいた、という
「そば屋のモーニン」伝説を聞いたことがあります。 |
高平 |
うん、もちろん日本だけじゃなくて
パリなんかでも
ものすごくモダン・ジャズが流行ってね。
トリュフォーだ、ゴダールだって
ヌーベルバーグの旗手だった人たちがみんな、
モダン・ジャズを好きになっていったんだ。
たとえば、そうだなぁ‥‥ルイ・マル監督の
『死刑台のエレベーター』っていう映画なんか、
なかでも、有名な作品だよね。
そうそう、それとさ、
ジョン・コルトレーンとかも、挙げとかなきゃな‥‥。
ほら、日本でも流行ったでしょ?
あのJRかなんかのCMで、
「そうだ京都、行こう」なんてやつでさ‥‥。
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‥‥と、こうして
高平さんの「はじめてのJAZZ」CD講座は、
このあとも
日付が変わるくらいまで続きました。
残念ながら、この連載では
すべてを詳しくご紹介することはできそうにないので、
残りのぶんは、
最終回の明日、まとめて掲載いたしますね。
どうぞ、おたのしみに! |
<続きます> |
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