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糸井 |
人を採るっていうのは、簡単じゃないですよね。
採用される側だけじゃなく、採用する側にとっても。 |
しりあがり |
「自分がいっしょに働きたいと思う人」といっても
人によってそれは違いますしね。
そもそも会社とか組織って、
そんなに単純なものじゃないですし。
漫画に出てくる軍隊みたいな組織じゃないですからね。
なんていうか、会社って、
ひとつの生態系みたいなところがありますよね。
こっちの人が吐いた息を、
あっちの人が吸ってる、
みたいな影響がつねにあって。 |
糸井 |
うん、うん。 |
しりあがり |
それは、いまの自分の会社でもそうで。
うまくいってるなと思っていても
ひとりが辞めるとガタガタになったりとか。 |
糸井 |
「ちょうどいい」って、ないんですよね。 |
しりあがり |
「ちょうどいい」はないですよね。
会社を計るメーターの中に
「ちょうどいい」っていう、目盛りがあるとしたら、
一瞬だけ針がそこに来て、また通り過ぎるみたいな。 |
糸井 |
そうそうそう。
ふらふら行ったり来たりするんだよね。
だから、針が「ちょうどいい」の近辺で
ふらふら往復してるくらいのところが
組織としては理想ですよね。 |
しりあがり |
そうそうそう。 |
糸井 |
それって、なんだろう、
ルールでは縛れない問題ですよね。 |
しりあがり |
そうですね。もっと属人的なこと。
だから、対処しようと思ったら、
それぞれの人に対して
対応していかなきゃいけないんですけど、
組織が大きくなったらもう無理ですよね。 |
糸井 |
だから、止まってないんですよね。
さっきしりあがりさんが
「生態系」っていいましたけど、
ほんとに会社って、生きて、動いている。 |
しりあがり |
ルールで縛って
コントロールできるものじゃないですよね。 |
糸井 |
その一方で、就職という問題を考えるときは、
採る側にとっても採られる側にとっても
いちおうのルールを設けないと
接点がつくれないわけだよね。
ああ、そうか、そうか。
しゃべりながらわかってきましたけど、
両方が止まって出会うしか方法がないから
むつかしいんですね。
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しりあがり |
ああ、そうですね。 |
糸井 |
採る側も採られる側も、本来は動いているのに、
「いっしょに歩きながら互いを見る」
ということができない。
いまのあなたと、いまの私が、
止まって出会うから不自由なんだ。 |
しりあがり |
止まって、しかも向かい合ってるって、
そうとう特殊な状況ですものね。 |
糸井 |
そのとおりですね。
あの、うちのスタッフが、
「最終面接を合宿にしちゃったらどうですかね」
って提案してきたことがあるんですよ。
それは、いまのところ保留にしてるんですけど、
どういう意図でそう言ったかというと、
「ひと仕事、いっしょにやんないとわかんない」
っていうことで。 |
しりあがり |
なるほど。 |
糸井 |
つまり、それは、
動きながら互いを見たいということですよね。
実際の会社でもそうですよね、
バカなことばっかり言ってるやつが
最後のところで取り返したとか。
失敗したけど、ちゃんと謝ったとかね。 |
しりあがり |
そうですね。
そのときどきのことじゃなく、
動いていく中で。 |
糸井 |
ええ。それこそ、生態系ですよね。 |
しりあがり |
それは、書類の審査と面接ではわからないですね。 |
糸井 |
だからもう、最初に言っちゃうしかないよね。
あなたは、失敗したとき謝れますか? って。 |
しりあがり |
(笑)
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糸井 |
止まって出会うしかないなら、
そういうことを、もう、
応募条件に盛り込むくらい前面に出して。 |
しりあがり |
そうか、そうか。
じゃあ、「○○不問」みたいに
門戸を広げるんじゃなく、逆に、狭くして。 |
糸井 |
長い目で見れば、
そのほうが互いに幸せなんじゃないですかね。
だってさ、「○○不問」みたいなことって、
「あなた、女なら誰でもいいのね?」
っていうようなことじゃないですか。 |
しりあがり |
そうそうそう(笑)。 |
糸井 |
そんな男はだめだよ。 |
しりあがり |
ですね。そうだ。
だから、より詳しい条件を、つけて。 |
糸井 |
そうそう。
かといってべつに、
雇用差別につながるような条件じゃなくてね。
「ちゃんと謝れる人、募集!」みたいな。
あ、それも、ダメなのかな? |
しりあがり |
(笑)
(続きます) |