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糸井 |
聞いた話なんですけど、
ある会社に、ものすごく才能のある人がいるんです。
困ったときにその人に任せれば、
絶対になんとかしてくれるというような
誰しもがその才能を認めるような人で。
ところがその人は、人間的に、まあ、
たいへんに問題がある。 |
しりあがり |
ああ、はい(笑)。
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糸井 |
それこそ、その人専用の部署をつくって、
一般の社員とは離しておかなきゃならないくらい
問題がある人がいるそうなんです。
しりあがりさんだったら、そういう人はどうです?
つまり、そういう才能ある問題児と、
ふつうの人がいるとして、社長としては、
どっちの人を採りたいですか? |
しりあがり |
うちの会社ということであれば、
それほど悩まないです。
ふつうの人ですね。
というのは、うちの事務所は
超絶テクニックを必要としてないので(笑)。 |
糸井 |
ああ、なるほどね。 |
しりあがり |
ほかの一般的な会社はどうだかわかりませんけど。
でも、それは、社風というようなものよりも
採る人の決意とか、姿勢によるのかな、
という気もするんですけどね。
ぼくは、会社員時代に面接をして、
いまも学校で授業をしている関係で
どういう人を残すのか、みたいな場所に
居合わせることがあるんですけど、
やっぱり、「この人がいい」っていうのは
本当に、人によって違うんですね。
「伸びしろがある」とか、
「センスがいい」みたいな話になると、
どうしても意見は分かれるんです。
そうなると、けっきょく最後は、
「誰が面倒を見るのか」っていう話になるんです。 |
糸井 |
あーー、なるほど。 |
しりあがり |
意見が分かれると、
最後の落としどころはそういうことになってしまう。
その人がいいのか悪いのか、
ぼくにはわかんないけど、
あの人が何年か面倒見るっていうんなら
それはいいですよ、みたいな。
実際にその人が面倒を見るシステムがなくても。 |
糸井 |
うん、わかる、わかる。 |
しりあがり |
だから、人間として問題がある人がいても、
その人の才能を認めて「面倒みる」っていう人がいたら
その人は採用されるんじゃないかな。 |
糸井 |
本当に、しりあがりさんは正直なことを言うね(笑)。 |
しりあがり |
そうですか(笑)。
糸井さんだったら、どうしますか。
その、才能ある問題児と、ふつうの人と。 |
糸井 |
ぼくはね、答えとしてはちょっと卑怯だけれども、
どっちでもいいんです。
どっちでもいいんですけど、
「人をバカにしない人」であればいい。 |
しりあがり |
「人をバカにしない人」。 |
糸井 |
うん。つまり、超絶で、変わり者で、
もう、年中パンツ一丁で過ごすような人でもいいから。 |
しりあがり |
はははははは。
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糸井 |
それでも、ほかの人をバカにしない人であれば、
おまえはそのままパンツ一丁で行けって言いますよ。
で、平凡でマジメなだけが取り柄っていう人でも、
平凡なまま、人をバカにする人っていますから。 |
しりあがり |
ああ、なるほど。 |
糸井 |
そっちのほうが重要ですよね。
他の人がやってくれたことに対して
ちゃんとありがとうって、言ったりね、
さっきの話じゃないけど、
失敗したときにちゃんと謝ったりね、
そういうことってほんとに大切だと思うんです。 |
しりあがり |
うん、うん。 |
糸井 |
もっというと、そういうことが大切なんだって
きちんと気づける人、ですね。
それができたらね、あとはもう、
どんなに変わり者でもなんとかなりますよ。
その人専用の部署でも座敷牢でもつくりますよ。 |
しりあがり |
はははははは。 |
糸井 |
もう、その場合の座敷牢は、経費です。
設備投資ですよ。 |
しりあがり |
いや、でも、まあ、座敷牢は大げさにしても、
そういう人を受け入れられなくなったら、
組織としてはつまらなくなるのかもしれないですね。
まあ、一長一短かもしれませんが、
昔の会社って、だめな人が
けっこういたじゃないですか。 |
糸井 |
そうそうそう。 |
しりあがり |
だめな人がいても、
その人の特技が活かせるように
ふつうの仕事を減らしてあげて
そのかわり別のところで助けてもらうような
仕組みが自然とできてたり。 |
糸井 |
まさに、会社という生態系として。 |
しりあがり |
そうですね。 |
糸井 |
いまのしりあがりさんの会社も、
そういう感じなんでしょうか。 |
しりあがり |
そういう自然な感じにしたいとは思ってるんです。
みんな、それぞれが好きなことやってるけど、
なんとなくそれがお互いに助けになってる、
みたいなのがいいなと思ってて。
かといって、自由にやらせることが
いちばんいいというわけじゃないと思うんです。
自由にさせるっていうのは
あくまで手段のひとつなんですよね。
厳しくしたほうが、みんなが働いて、
会社がうまくいくんだったら
厳しくしたほうがいいだろうし、
自由にやらせたほうが力を引き出せるんだったら
そうしたほうがいいと思うし。 |
糸井 |
うん、うん。 |
しりあがり |
そういう意味でいうと、
自由がいいとも、厳しいのがいいとも
いえないと思うんです。 |
糸井 |
しりあがりさんのところは、
自由にしているほうがうまく回るから、
そうしている、と。 |
しりあがり |
そうですね。
あと、もうひとつ、自由にしてもらってる理由としては
ぼくが、人に対して責任を持つのが苦手なんですね。
育てるとか、教育するとか。 |
糸井 |
うん、うん。 |
しりあがり |
なんていうのかな、こう、
「私の一生をどうするつもりですか」
みたいに言われるのがすごく苦手で(笑)。
だから、結果的に自由にしてもらっている
ということもあるんですけど、
それが逆に不自然だなと思うようなことも、
ここ2、3年、増えてきていますね。 |
糸井 |
その自然さをキープするのは
なかなかたいへんですからね。
でもそうしたい気持ちはよくわかるし、
ひょっとしたら、しりあがりさんの
社長としてのつぎのステップに、
ぼくや、いまの「ほぼ日」があるのかもしれない。 |
しりあがり |
ああ、そうですね。
糸井さんのところは、いま何人くらいですか? |
糸井 |
いまはもう、30人以上になりましたね。
だから、ぼくはもう、
しりあがりさんのようにはできなくて、
会社らしくやる部分は、やるしかない。 |
しりあがり |
なるほど。
その覚悟がね、いるんですよね、やっぱり。 |
糸井 |
覚悟なのか、なんなのかわかりませんけど、
わかりやすいところでいうと、
人には家族ができますからね。
社員に子どもとか、できますから。
そうするとね、どこかにおもしろい人がいて、
その人に「うちの会社に来ない?」って誘うことが
以前ほどは気軽にできなくなりますよね。
だって、「うち来ない?」の延長に、
子どもがいるわけじゃないですか。 |
しりあがり |
ええ、ええ。
その子どももいっしょに雇ってるような。 |
糸井 |
そういう気持ちになりますよね。
で、またね、社員に子どもができたら
うれしいんですよ、これが。
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しりあがり |
(笑) |
糸井 |
子どもができたとか、結婚するとか、
いちいち「よかったなー」なんつって。
もうね、絵に描いたような中小企業の社長で。 |
しりあがり |
はははははは。
(続きます) |