※『かないくん』は、ほぼ日ストアのほか、大手ネット書店や全国のほぼ日ブックス取扱店でも販売いたします。
※ ほぼ日ストアでご購入に限り、谷川俊太郎さんのメッセージや松本大洋さんのラフスケッチが掲載された
「かないくん 副読本」(非売品)が購入特典としてついてきます。
2013年になりました。
2月から、松本大洋さんは着色作業に入りました。
ときどき「こんなかんじでやってます」というように、
カラーの絵をメールで送ってくださいました。
そのたびに、担当の永田といっしょに
飛び上がるようによろこびました。
2013年4月9日のメールより
先日、「IKKI」のイベントがあり、
祖父江さんに会いました。
絵本の話を少ししました。
ナカナカ進行しない旨を伝えると
[のんびりやろーよー]と言ってくれました。
実はSunnyの進行に追われ、
『かないくん』の作業がややゆっくりになってきました。
6月あたま辺りでSunnyの現在の章が終了し、
3ヶ月のインターバルをもらうので、
ここから一気に進める所存です。
大洋
大洋さんが着色している期間中も、
我々はときどきお会いするようにしていました。
大洋さんは、「ほぼ日」の
ほぼ日手帳を使ってくださっているのですが、
「一日のうちにやる仕事」を
メモのようにつけていらっしゃいます。
↑ 大洋さんの仕事メモ
「かない」や「かな」と書いてあるのが
『かないくん』の制作時間です。
この日はたまたま、『かないくん』の作業が
多かった日なのでしょう。
大洋さんは、この手帳に
「かない」と書いていらっしゃいますが、
打ち合わせ中の話しことばでも、
ときどきかないくんのことを
「このかないが、よく描けなくて」とか
「今日はこのあと、かないをやります」とか、
呼び捨てにされることが、しばしばありました。
「なんだか、身近になってきてるんですよね、かないが」
とおっしゃっていました。
季節はどんどん進み‥‥、
大洋さんからついにこの連絡が来ました。
2013年9月5日のメールより
遅くなりましたが、かないくんの絵が仕上がりました。
やれるだけの事はやったつもりですが、
ちょっとココはイメージと違うなー、という声が
谷川さんや祖父江さんからあがれば手直しする所存です!
大洋
絵が完成!!
感激で倒れそうになりました。
みんなでいちどに拝見したかったので、
大洋さんに、青山の「ほぼ日」まで
絵を持ってきていただくことにしました。
これが2013年9月18日のことです。
↑ ほぼ日の窓側の「縁側」と呼ばれる場所に
大洋さんが1枚ずつ並べてくださいました。
↑ ほぼ日のスタッフがみんな寄ってきて見ました。
↑ 祖父江慎さんも「すごいねーすごいねー」と言っています。
↑ 糸井重里も真剣に見ています。
表紙や見返し、扉を含めて
絵は全部で27枚ありました。
↑ 表紙は、かないくんの横顔。
表紙のかないくんを見て
大洋さんは、こうおっしゃいました。
「この表紙に、
全体の8割くらいの力を使っていると思います。
表紙、しにものぐるいでした」
大洋さんは、俊太郎さんが
ひと晩で書いたこのお話を、
何度も何度も読んだそうです。
「少なくとも100回は読んでいると思うんで、
かないは身近です。
絵にするときに、
自分なりの解釈をしていくことになるから、
それで谷川さんはいいのだろうか、
という気持ちもありました。
けれど、結局、こうなりました」
糸井はこんなふうに言いました。
「大洋さん、ほんとにすごい。
驚きました。
そして、谷川俊太郎さんに改めて感謝します。
このすごい絵を、引き出す力が
あの原稿にあったということだから」
↑ 糸井はずーっと、絵に見入っていました。
↑ 「んーー」
ここで、絵を見ていた祖父江さんの背中が
止まりました。
↑ 大洋さんとふたりで相談をはじめています。
↑ 「紙の取り都合が」という声が聞こえます。
私はいつも驚くのですが──、
祖父江慎さんという方には、
瞬時に「書籍のページぐり」を
計算する力が備わっているのです。
私などがページの計算(台割)をしようとすると
「表でしょ、裏でしょ、扉は奇数ページでしょ、
ここは糊づけで、あそこは別丁で」
と、メモしながらでも混乱してしまいます。
しかし、祖父江さんの台割暗算は、すごいのです。
きっと頭のなかで本の立体が瞬間的に
できあがっているのでしょう。
祖父江さんのすばやい台割暗算のおかげで、
本としては2ページ分の絵が足りない、
ということがわかりました。
そして急きょ、絵を追加することになりました。
「それなら、ぼくが勝手に考えてやめたある絵を
描きなおして追加したいと思うんですが
どうでしょう」
と大洋さんは申し出てくださいました。
結果的に、その「追加した絵」は
とてもすばらしく、
『かないくん』の本のリズムを
完成させるものになりました。
その絵の完成は、この日から数週間あとになりました。
↑ 大洋さんから届いた追加の絵を見て
感動し呆然としている永田。
大洋さんは、この9月18日のことを振り返って
「ホボニチ、という会社が
ほんとうにあるんだと思ってびっくりしました」
とおっしゃっていました。
さて。
絵ができたところで、
ここからは祖父江慎さんの仕事です。
↑ 「さあ、がんばんなきゃー、わたしも!」
ステップ3、本作り、です。
「これは、印刷がいちばん苦手とする
タイプの絵かもしれませんね。
でも、だいじょうぶ。できます。
さぁ、この本の製版を、誰にお願いしましょうか。
そだ! 色彩の魔術師、みたいな人がいるから、
その人に連絡を取ってみる?」
色彩の魔術師。いったいどんな‥‥?
↑ 祖父江さんと俊太郎さんは、
このあと六本木で行われた
「スヌーピー展」の記者発表でお会いになりました。
この展覧会まわりのデザインのスケジュールが
最後には大忙ぎ系になっていたので、
俊太郎さんから「あの本は急いでつくってね」と
念をおされていました。
(つづく)
2014-02-19-WED
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