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本番直前‥‥でもまだ間に合う! |
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── |
小野さん、本日は
どうぞよろしくお願いいたします!
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小野 |
はい、よろしくお願いいたします。
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── |
さっそくですが小野さん、
本日は、2012年4月16日の月曜日です。
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小野 |
ええ。
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── |
この先、
とくにゴールデンウィークが明けてからは
金環日食のニュースが
じゃんじゃん
報道されるようになると思うんです。
日食関連の本が売れていますだとか、
どこそこで、日食イベントが行われたとか。
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小野 |
ええ、盛り上がって行きそうですよね。
私も、忙しくなると思います。
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── |
しかしながら、本日うかがうお話は
金環日食の日の5日前(5月16日)から
3日間にわたって
連載しようかな、と考えているのです。
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小野 |
‥‥ずいぶん直前なんですね。
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── |
なぜ、わざわざそんな直前かと言いますと
なんでもそうだと思うのですが、
直前にならないと
われわれ
あまり「本腰」にならないじゃないですか。
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小野 |
ええ、まあ。
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── |
とくに、連休明けで仕事がたまっている
社会人なんかですと
「金環日食」という珍しい天文現象が近いよと
ニュースで言われても
今日みたいな「本番5日前」くらいになってから
「え、週明けの金環日食って
東京では173年ぶりの珍しい日食なの?
見たい見たい見たい!」
と、慌て出す人も多いのではないかと。
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小野 |
‥‥そうかもしれません。
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── |
ですから、われわれ「ほぼ日」では
そういう方々に対しても
「本番直前! でもまだ間に合う!
これだけ知っておけば
あなたも金環日食を楽しめます!」
‥‥的なコンセプトで
お届けできたらなと考えているのです。
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小野 |
‥‥わかりました。
できるだけ、たいせつなポイントに絞って
コンパクトにお伝えいたします。
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── |
恐れ入ります。
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小野 |
それではまず、日にちも迫っていることなので
大急ぎでひとつ、言わせてください。
「金環日食を観察したいなと思っていたら
おはやめに
日食グラスの入手をお願いいたします」
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── |
おお、いきなり実践的なアドバイス!
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小野 |
のちほど、くわしくお話いたしますが、
金環日食にかぎらず、
肉眼で直接、
あるいは専用の減光フィルターをつけていない
望遠鏡やデジタルカメラ等で
太陽を見てしまうと
目が焼けてしまいますので。
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── |
こわい‥‥!
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小野 |
ですから、太陽を観察するときには
日食グラスが必須なのです。
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── |
望遠鏡や双眼鏡で太陽を覗いてはダメとは
知っていましたが
肉眼で、直接太陽を見るのも、ダメですか。
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小野 |
ダメです。
以前「気合を入れてもダメですか」といった
質問をいただきましたが
いくら気合を入れてもダメです。
日食網膜症という目の障害を
引き起こすしてしまう可能性があるのです。
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── |
なるほど‥‥気合の問題ではない、と。
メモですね。
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小野 |
今回の金環日食を観察しようと思っていて
まだ日食グラスをお持ちでないなら、
ぜひ今週中に、手に入れておいてください。
なお、ふつうのサングラスや黒い下じきなども
太陽観察用ではありませんから
有害な光線が通り抜けてしまうので、NGです。
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── |
日食グラスは、
全国の家電量販店とか百貨店、書店、あるいは
Amazonなどネットでも購入できますね。
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小野 |
はい、今回の金環日食を楽しむための
マストアイテムです。 |
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金環日食と皆既日食との違いって?
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── |
そもそも「金環日食」という言葉じたい
聞きなれないと思うのですが、
よく聞く「皆既日食」との違いを教えてください。
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小野 |
基本的な現象としては、同じです。
つまり、太陽と月と地球が
その順番で一直線に並んだときに、
地球から見て
月が太陽を隠してしまう天文現象が
「日食」と呼ばれています。
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── |
はい、なるほど。
でも、それはなんとなく知っていました。
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小野 |
しかし、ここでポイントなのが
「月の軌道が楕円を描いている」こと。
そのことによって「月と地球との距離」は
一定ではなくて、
遠ざかったり、近づいたりしているんです。
つまり、月は「地球から見たときのサイズ」が
そのときどきによって、変わるんです。
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── |
あ、「スーパームーン」とか。
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小野 |
そうですね。
あれは「月がもっとも地球に近づくとき」と
「満月」が重なる、という現象ですね。
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── |
ははー‥‥そのために
月がもっとも遠く小さく見えるときと比べて
大きさが14%、明るさが30%増す、と。
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小野 |
ですから、同じように
太陽・月・地球が一直線に並んだときに
月が地球に近いところにあって
見かけ上、
太陽より月のサイズのほうが大きければ
月が太陽をすっぽり隠します。
つまりこれが、皆既日食です。
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2009年7月22日、硫黄島近海にて撮影された皆既日食。
撮影:福島英雄、宮地晃平、片山真人 |
── |
ははぁ。
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小野 |
そして、月が地球から離れた場所にあって
見かけのサイズが太陽より小さいと
太陽の「縁」が
月の周囲にはみ出して見える。
これを、金環日食と呼んでいます。
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── |
つまり「金の環(わ)」が見えるから
「金環日食」と。
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2002年6月11日、テニアン島にて撮影された金環日食。
撮影:福島英雄、坂井眞人
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小野 |
そのとおりです。
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── |
はじめ「金環」というからには
なにか「金星」が関係しているのかなと
思ったのですが、
そうじゃなく「金の環」なんですね。
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小野 |
はい。ちなみに今回の金環日食は、
欠けはじめから、元の太陽に戻るまでに
2時間半前後かかりますが、
「金環の状態」になっている時間は
長めの東京でも5分くらい、
最短ではほんの数秒の、極めて僅かな間です。
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金環日食は、どこで見られるの?
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── |
今回の金環日食ですが
東京で観察できるのは173年ぶり、
次、大阪で見られるのは300年後、
名古屋にいたっては
じつに932年ぶりだと聞きました。
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小野 |
はい。
ちなみに次回、日本国内で見られるのは
2030年6月1日の北海道です。
また今回のように、一部の地域だけではなく
日本列島の広い範囲で観察できる機会は
1000年以上前の
平安時代以来とも言われています。
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── |
つまり、そんな一大チャンスであると。
観察できる場所を教えてください。
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小野 |
こちらです。 |
※クリックすると拡大します。
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── |
つまり、この図の上で
「赤い線を中心とした帯の内側」であれば
金環日食が観察できる、と。
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小野 |
そうです。
もちろん、帯から外れた場所にいたとしても
「金環日食」ではないですが
「部分日食」を観察することができます。
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── |
部分日食。
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小野 |
はい、部分日食というのは
先ほどの図の「帯」から外れているために
太陽・月・地球が一直線に並ばず、
ようするに「月が、ややずれている」ゆえ
日食が「部分的に」起こる現象。
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── |
つまり「金の環(わ)」にならない、と。
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小野 |
先ほどの図を見るとわかりますが
今回は「札幌・仙台・福岡」などの都市では
金環にならず、部分日食となります。
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── |
では肝心の、金環日食が観察できる日時を
あらためて‥‥。
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小野 |
2012年5月21日、月曜日の朝。
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── |
金環日食があらわれる、と。
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小野 |
ええ、晴れていれば。
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── |
そうか、曇ってたら見られないのか‥‥。
好天を祈りましょう。
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小野 |
あと、気をつけたいのは
寝坊じゃないでしょうか。朝なので。
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── |
あー、それは、禁物中の禁物ですね。
ちなみに、太陽が欠けはじめる時間って
場所によって
ちょっとずつズレてるんですよね?
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小野 |
そうですね。
各地の具体的な時刻は先の図にありますが、
日本列島の西から東へ向かって
日食の開始が進んでいくようなイメージです。
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── |
なるほど、なるほど。
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小野 |
ちなみに、
金環日食の中心線が通過する最も西の陸地は
鹿児島県の竹島という
人口80名くらいのちいさな島なんですが‥‥。
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── |
はい、存じております。
数カ月前、今回の企画が持ち上がった時点で
とりあえず島の民宿を押さえました。
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小野 |
え、行くんですか竹島?
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── |
はい、弊社の「スガノ」という
ある意味、その道の猛者のような女性編集者を
派遣する予定です。単独で。
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小野 |
‥‥おひとりで?
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── |
はい。
孤独やとまどい、うっかり、ちいさな発見、
迷子などのアクシデントなどもふくめ、
ならではのテキスト中継を
じゃんじゃんアップさせていただく予定です。
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小野 |
島へわたるフェリーって、
3日に1本くらいしか出てないのでは!?
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── |
丸4日かけて、行って帰ってくるそうです。
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小野 |
金環日食のハイライトって
正味「4〜5分」しかないんですけど‥‥
そのためだけに?
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── |
はい、そのためだけに。 |
▲当日、鹿児島県の竹島では、金環日食に加え、
このような格好の女性が目撃されるかも知れません。
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<つづきます> |