本番直前! 準備がゼロでも‥‥まだ間に合う! 金環日食すべりこみ講座。 安全に楽しむためのポイントを 国立天文台・小野智子さんにうかがいました。
2012年5月21日の朝、 日本の広い範囲で「金環日食」が観察できます。 GW明け以降、 ニュースなどでさかんに報道されていますから そんな名前の天文現象が起きるってことは みなさん、わりとご存知ですよね。 でも、よく聞く「皆既日食とのちがい」とか 東京で見られるのは「173年ぶり」だとか 大阪で次、見られるのは「300年後」だとか 名古屋ではじつに「932年ぶり!」って聞いちゃうと がぜん、見ときたくなりません? でも、何も予習や準備をしていない‥‥大丈夫。 奥野・山口・ベイ・おーたの宇宙好きチームが 国立天文台の小野智子さんに いまからでも十分に楽しむためのポイントを 教えていただきました。 日食当日は、ほぼ日乗組員が日本全国に散って 各地のようすを テキスト中継しますので、そっちもお楽しみに。 2012年5月21日の朝、 日本の広い範囲で「金環日食」が観察できます。 GW明け以降、 ニュースなどでさかんに報道されていますから そんな名前の天文現象が起きるってことは みなさん、わりとご存知ですよね。 でも、よく聞く「皆既日食とのちがい」とか 東京で見られるのは「173年ぶり」だとか 大阪で次、見られるのは「300年後」だとか 名古屋ではじつに「932年ぶり!」って聞いちゃうと がぜん、見ときたくなりません? でも、何も予習や準備をしていない‥‥大丈夫。 奥野・山口・ベイ・おーたの宇宙好きチームが 国立天文台の小野智子さんに いまからでも十分に楽しむためのポイントを 教えていただきました。 日食当日は、ほぼ日乗組員が日本全国に散って 各地のようすを テキスト中継しますので、そっちもお楽しみに。
プロフィール
 
金環日食って、なあに? 2012-05-16
「ベイリー・ビーズ」をねらえ。 2012-05-17
金環日食を楽しもう! 2012-05-18
 
金環日食の最大(東京地方) 2012年5月21日(月) 午前7時34分30秒



本番直前‥‥でもまだ間に合う!
── 小野さん、本日は
どうぞよろしくお願いいたします!
小野 はい、よろしくお願いいたします。
── さっそくですが小野さん、
本日は、2012年4月16日の月曜日です。
小野 ええ。
── この先、
とくにゴールデンウィークが明けてからは
金環日食のニュースが
じゃんじゃん
報道されるようになると思うんです。

日食関連の本が売れていますだとか、
どこそこで、日食イベントが行われたとか。
小野 ええ、盛り上がって行きそうですよね。
私も、忙しくなると思います。
── しかしながら、本日うかがうお話は
金環日食の日の5日前(5月16日)から
3日間にわたって
連載しようかな、と考えているのです。
小野 ‥‥ずいぶん直前なんですね。
── なぜ、わざわざそんな直前かと言いますと
なんでもそうだと思うのですが、
直前にならないと
われわれ
あまり「本腰」にならないじゃないですか。
小野 ええ、まあ。
── とくに、連休明けで仕事がたまっている
社会人なんかですと
「金環日食」という珍しい天文現象が近いよと
ニュースで言われても
今日みたいな「本番5日前」くらいになってから
「え、週明けの金環日食って
 東京では173年ぶりの珍しい日食なの?
 見たい見たい見たい!」
と、慌て出す人も多いのではないかと。
小野 ‥‥そうかもしれません。
── ですから、われわれ「ほぼ日」では
そういう方々に対しても
「本番直前! でもまだ間に合う!
 これだけ知っておけば
 あなたも金環日食を楽しめます!」
‥‥的なコンセプトで
お届けできたらなと考えているのです。
小野 ‥‥わかりました。

できるだけ、たいせつなポイントに絞って
コンパクトにお伝えいたします。
── 恐れ入ります。
小野 それではまず、日にちも迫っていることなので
大急ぎでひとつ、言わせてください。

「金環日食を観察したいなと思っていたら
 おはやめに
 日食グラスの入手をお願いいたします」
── おお、いきなり実践的なアドバイス!
小野 のちほど、くわしくお話いたしますが、
金環日食にかぎらず、
肉眼で直接、
あるいは専用の減光フィルターをつけていない
望遠鏡やデジタルカメラ等で
太陽を見てしまうと
目が焼けてしまいますので。
── こわい‥‥!
小野 ですから、太陽を観察するときには
日食グラスが必須なのです。
── 望遠鏡や双眼鏡で太陽を覗いてはダメとは
知っていましたが
肉眼で、直接太陽を見るのも、ダメですか。
小野 ダメです。

以前「気合を入れてもダメですか」といった
質問をいただきましたが
いくら気合を入れてもダメです。

日食網膜症という目の障害を
引き起こすしてしまう可能性があるのです。
── なるほど‥‥気合の問題ではない、と。
メモですね。
小野 今回の金環日食を観察しようと思っていて
まだ日食グラスをお持ちでないなら、
ぜひ今週中に、手に入れておいてください。

なお、ふつうのサングラスや黒い下じきなども
太陽観察用ではありませんから
有害な光線が通り抜けてしまうので、NGです。
── 日食グラスは、
全国の家電量販店とか百貨店、書店、あるいは
Amazonなどネットでも購入できますね。
小野 はい、今回の金環日食を楽しむための
マストアイテムです。
金環日食と皆既日食との違いって?
── そもそも「金環日食」という言葉じたい
聞きなれないと思うのですが、
よく聞く「皆既日食」との違いを教えてください。
小野 基本的な現象としては、同じです。

つまり、太陽と月と地球が
その順番で一直線に並んだときに、
地球から見て
月が太陽を隠してしまう天文現象

「日食」と呼ばれています。
── はい、なるほど。
でも、それはなんとなく知っていました。
小野 しかし、ここでポイントなのが
「月の軌道が楕円を描いている」こと。

そのことによって「月と地球との距離」は
一定ではなくて、
遠ざかったり、近づいたりしているんです。

つまり、月は「地球から見たときのサイズ」が
そのときどきによって、変わるんです。
── あ、「スーパームーン」とか。
小野 そうですね。

あれは「月がもっとも地球に近づくとき」と
「満月」が重なる、という現象ですね。
── ははー‥‥そのために
月がもっとも遠く小さく見えるときと比べて
大きさが14%、明るさが30%増す、と。
小野 ですから、同じように
太陽・月・地球が一直線に並んだときに
月が地球に近いところにあって
見かけ上、
太陽より月のサイズのほうが大きければ
月が太陽をすっぽり隠します。

つまりこれが、皆既日食です。

2009年7月22日、硫黄島近海にて撮影された皆既日食。
撮影:福島英雄、宮地晃平、片山真人
── ははぁ。
小野 そして、月が地球から離れた場所にあって
見かけのサイズが太陽より小さいと
太陽の「縁」が
月の周囲にはみ出して見える。


これを、金環日食と呼んでいます。
── つまり「金の環(わ)」が見えるから
「金環日食」と。

2002年6月11日、テニアン島にて撮影された金環日食。
撮影:福島英雄、坂井眞人
小野 そのとおりです。
── はじめ「金環」というからには
なにか「金星」が関係しているのかなと
思ったのですが、
そうじゃなく「金の環」なんですね。
小野 はい。ちなみに今回の金環日食は、
欠けはじめから、元の太陽に戻るまでに
2時間半前後かかりますが、
「金環の状態」になっている時間は
長めの東京でも5分くらい、
最短ではほんの数秒
の、極めて僅かな間です。

金環日食は、どこで見られるの?
── 今回の金環日食ですが
東京で観察できるのは173年ぶり
次、大阪で見られるのは300年後
名古屋にいたっては
じつに932年ぶりだと聞きました。
小野 はい。

ちなみに次回、日本国内で見られるのは
2030年6月1日の北海道です。

また今回のように、一部の地域だけではなく
日本列島の広い範囲で観察できる機会は
1000年以上前
平安時代以来とも言われています。
── つまり、そんな一大チャンスであると。
観察できる場所を教えてください。
小野 こちらです。

※クリックすると拡大します。
── つまり、この図の上で
「赤い線を中心とした帯の内側」であれば
金環日食が観察できる、と。
小野 そうです。

もちろん、帯から外れた場所にいたとしても
「金環日食」ではないですが
「部分日食」を観察することができます。
── 部分日食。
小野 はい、部分日食というのは
先ほどの図の「帯」から外れているために
太陽・月・地球が一直線に並ばず、
ようするに「月が、ややずれている」ゆえ
日食が「部分的に」起こる現象。
── つまり「金の環(わ)」にならない、と。
小野 先ほどの図を見るとわかりますが
今回は「札幌・仙台・福岡」などの都市では
金環にならず、部分日食となります。
── では肝心の、金環日食が観察できる日時を
あらためて‥‥。
小野 2012年5月21日、月曜日の朝。
── 金環日食があらわれる、と。
小野 ええ、晴れていれば。
── そうか、曇ってたら見られないのか‥‥。
好天を祈りましょう。
小野 あと、気をつけたいのは
寝坊じゃないでしょうか。朝なので。
── あー、それは、禁物中の禁物ですね。

ちなみに、太陽が欠けはじめる時間って
場所によって
ちょっとずつズレてるんですよね?
小野 そうですね。

各地の具体的な時刻は先の図にありますが、
日本列島の西から東へ向かって
日食の開始が進んでいくようなイメージです。
── なるほど、なるほど。
小野 ちなみに、
金環日食の中心線が通過する最も西の陸地は
鹿児島県の竹島という
人口80名くらいのちいさな島なんですが‥‥。
── はい、存じております。

数カ月前、今回の企画が持ち上がった時点で
とりあえず島の民宿を押さえました。
小野 え、行くんですか竹島?
── はい、弊社の「スガノ」という
ある意味、その道の猛者のような女性編集者を
派遣する予定です。単独で。
小野 ‥‥おひとりで?
── はい。

孤独やとまどい、うっかり、ちいさな発見、
迷子などのアクシデントなどもふくめ、
ならではのテキスト中継を
じゃんじゃんアップさせていただく予定です。
小野 島へわたるフェリーって、
3日に1本くらいしか出てないのでは!?
── 丸4日かけて、行って帰ってくるそうです。
小野 金環日食のハイライトって
正味「4〜5分」しかないんですけど‥‥
そのためだけに?
── はい、そのためだけに。

▲当日、鹿児島県の竹島では、金環日食に加え、
 このような格好の女性が目撃されるかも知れません。

  <つづきます>
  2012-05-18-FRI

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