むかしの暦で、いまを楽しむ。 旧暦と暮らす「ほぼ日」の12か月。
2006-09-19-TUE
旧暦:閏七月二十七日
いただいたメールをご紹介します!

「むかしの暦で、いまを楽しむ。」をお読みいただき、
どうもありがとうございます。
きょうは、このコンテンツにいただいている
メールを紹介させていただきますね。

まずは、「うちのほうでは、旧暦なんですよ」
というおたよりです。


沖縄で生活する者にはタイムリーな連載開始です!
こちらのお盆は旧暦の7月13日から15日まで。
今年は8月6日から8日までなんです。
6日にグソー(あの世)からウンケー(お迎え)した
ご先祖様の霊を、8日の夜にウークイ(お送り)します。

先月東京から赴任してきたうちのボスが、
8月16日に会議日程が組まれているのに気がついて、
お盆の週に予定を入れるなんて! と憤っておりましたが,
沖縄の風習を説明してなんとか理解していただきました。
夏休みの予定を変更させてしまって申し訳なかったです。

(Hajime Yamaguchi)

もともとお盆は
「初春と初秋の満月の日に、
 祖先の霊がもどってくるのを迎える」という行事だと
いわれていて、
旧暦の七月十五日(ということは満月ですね)に
行われていたようです。
新暦になってからは、
●旧暦の七月十五日にあたる日
●新暦の7月15日
●新暦の8月15日
というふうに、地方によってばらけてしまいましたが、
いまは新暦の8月15日に行なうところが多いですよね。
祝日ではないのですが、会社の「夏季休業」も
そのあたりにとられることが多いですし。
でも「盆踊り」はそもそも「満月」の日、
つまり、電気がない時代でも、夜が明るかった日に行なう
行事だったわけなので、
単純に1か月スライドさせちゃうと、
月の満ち欠けとは関係なくなっちゃいますね。
で、旧暦の七月十五日を守っている地域は
あまり多くない、のだそうですが、
沖縄は、その数少ない地域のひとつなんですね〜。
たしかに東京から赴任すると混乱しちゃうかも!

もう一通、沖縄出身のかたからのメールです。


「むかしの暦でいまを楽しむ。」いいですね〜。

私は沖縄の出身なのですが、
お盆の他にも、お墓やお仏壇・ご先祖様に関する行事は
旧暦で行うことがほとんどですし、
地域によっては今でも
新暦のお正月と旧暦のお正月2回するところもあります。
(その昔は2回お年玉を貰えたようです。
 今では新正月の1回みたいです。)

二十四節気も旧暦を見るとしっくりきます。
実際の気候とも合っていることが多いように思います。
清明・小満・芒種など
その意味合い通りの行事が行われていました。
故郷を離れて大分経ちますが、
子供の頃染みついた旧暦リズムは抜けていないようです。

馴染んではいるものの謎もあります。
それは閏月。一月の日数が今の暦とは違うので、
発生するメカニズムは納得しています。
でも閏何月になるのかという規則がよく分かりません。
実家の父母は「今年は閏○月があるから
天候が△△△になるだろうな」などという会話を
自然にしていますが、私はついて行けません。
機会があれば説明していただけると嬉しいです。

(しゅくれ)

お年玉が2回あった! なるほど!
新暦に変更した明治政府は、旧暦由来の閏月をなくせば
1か月分の給料が浮くということを考えたそうですが、
こどもたちのなかにはいつもより余分にもらっちゃった子も
いたんですね〜。経済効果あり、と言えなくもない。

なぜ沖縄に旧暦が残っているのかを
近松先生に訊いてみました。

近松先生
近松
新暦が導入された時に、
沖縄にはまだ県が設置されてなくて、
行政の通達などが行き届いていなかったのが
原因かもしれませんね。
でも、まあ、明治政府も強いて
行事を新暦にしろ、
という強制をしたわけではないのですよ

とのことでした。
調べましたら、山梨や新潟などでは「旧暦での盆を廃止」
という勧告がなされたそうです。
国全体で右へならえ! ではなく、
自治体によって、緩やかに決められたのだと思います。

ところでしゅくれさんの疑問の、
「閏月が何月に入るのか」ということについて、
いろいろと調べてみたのですが、
これ、すごく難しいことでした!
どうにもすっきりとした理解と説明がすぐにできません。
いずれ、わかりやすく説明ができるようになってから
おしらせしたいと思いますので、お待ちくださいませ〜。
(力不足で、すみません)

続いては、九州です。



鹿児島では、季節の行事を
1ヶ月ずらして行います。
旧暦に行うべき物を
1ヶ月単純に遅らせているだけだと思います。
だから、8月7日が七夕。
夏休みの恒例行事です。
スーパーでも七夕飾りの材料は、
8月になってから本格的に売り出します。
主人は、4月3日生まれ。桃の節句です。
鯉のぼりは、6月にあげるので
梅雨にかかるのが残念です。
こんなやり方をちょっと素敵に思ってます。

(あっちい)

おお、鹿児島では「ばっさりと1か月ずらす」方式が
とられているのですね。
ことしの旧暦七月七日は新暦の7月31日でしたから、
約1週間の誤差ということになりますが、
それでも七夕には梅雨があけていて
織姫と彦星が会うことができますね。
鯉のぼりは、新暦の5月5日の青空に
似合うという印象も強いけれど、
もともとは、梅雨の時期の雨の日に、掲げられたもの。
「鯉の滝登り」にあやかって、武家の子の立身出世を
願ったものだそうですから、「それでいいのだ」らしいです。
(梅雨空にいたほうが、「泳いでいる」感じもしますね!)

つづいては岐阜のかたからです。


私の地元は岐阜県の中津川市なのですが、
そのあたりでは、ひな祭りは4月3日なのです。
というのも、そのあたりは気温が低めなので、
春が訪れるのが遅いです。
今現在の、新暦の3月3日では、
「桃の花」がまだ咲いていないのです。
なので、桃の花が咲く、4月に、ひな祭りだ‥‥
と教えられました。
もしかしたら、4月にひな祭りと言っていたのは
昔のことで、今はもう3月なんじゃないの?
と思っていましたが、
実際、雛人形も、4月まで飾ってありますし、
友人が勤めている保育園などでも
ひな祭りの行事は4月に行うのだそうです。

これも、旧暦に関係あるのですか?

ただ、私が聞いたのは、
「ここらは寒くて桃の花が咲くのが遅いから」と
いう理由だったので、
暦には関係ないのかもしれませんね。

(S・K)

ひな祭りは、旧暦の三月三日、
ちょうど桃の花の咲く頃の行事でしたから、
「桃の節句」とも呼ばれています。
(今年の例でいうと、旧暦の三月三日は、
 新暦の3月31日にあたります。)
ですから、S・Kさんのまわりのかたの説も
まちがいではないですし、
「旧暦に関係がある」のも正解です。
中津川あたりも、旧暦が新暦にかわるさいに、
旧暦由来の行事を「まる一か月ずらす方式」が
とられたのでしょうね。

続いては東北のかたから。


ちょっと季節外れな話ですが、
個人的に旧暦と言えば、お雛さまです。
子どもの頃のようにはとてもいかず、
年度末も近づき、仕事に追われて
しばしばお雛さまを
新暦の3月3日までに出しそびれます。
その度ごと、
「桃」の節句なんだし本来の旧暦でやるぞー、と思い、
周りにもいうのですが、できた試しがありません。
お雛さまごめんなさい、という感じです。
(ちなみに東北では旧暦でも桃の花にはちと早いのですが。)

一つ一つ箱をあけ、薄紙の中から、
お雛さまや、お道具を出すというのは、
思い出も一緒にとり出すようなもので、
幾つになっても良いものです。
大人になってしまえば、娘がいないと、
もしかしてなかなかやらないものだったのかも知れませんが、
一年に一度はお雛さまも日を浴びたかろうと思っています。
その余裕をなくしているのは、よくないですよね。

(す)

ひな祭りの起源は、平安貴族の子女の
「ひなあそび」にあそびにあるといわれています。
江戸時代になってから、武家の娘の嫁入りに、
災厄を人形に託す意味もつ「祭り」へと
変化したのだそうです。
旧暦といえど、暦はもともと
国が人民を統制するためのめやすにしたものなので、
全国統一の規格。京都や江戸にぴったりでも、
季節としてはすこしずれてしまう地域も
日本にはたくさんあったのだと思います。
すさん、来年は「旧暦の三月三日」にお雛さまをだして、
地元の桃の花が散るころまで飾る、というのも
よいかもしれませんよ〜!
ちなみに来年の旧暦三月三日は、
ほぼ日手帳によると「4月19日」です。

続いてはちょっと南にもどって、静岡から。


私の田舎は静岡の藤枝市というところなんですが、
うちの田舎周辺だけなのかもしれませんが、
物心ついたときから、
すべての行事が旧暦に沿って行われています。

ひな祭りにお盆、七夕など、ほぼ一ヶ月遅れです。
なので、東京に出てきてお盆が
7月にあるのにびっくりしました。

そして、私の彼は韓国人‥‥
なのでやっぱり彼の中では、自分の誕生日は旧暦‥‥(笑)

免許証にはっきり、6月○日と書いてあっても、
自分の誕生日は毎年5月になったり
7月になったり変動しています。
が、私には毎年誕生日が変わるのは不思議なんですが、
彼にはそれが普通のことらしいです。

そして私は俳句をたしなみます。
この真夏の最中に、もう秋の句を詠みます。
変だなーと思うことも多いのですが、
旧暦って、人の生活の身近にあるような気がします。

もっと見直されてもいいかなって思います。

今後の連載、楽しみにしています。

(トッティ)


えっ! ぼく(シェフ)は静岡市出身なんですが
うちは旧暦ではなかった!
いま母に訊いてみたら、
「藤枝とか、岡部のあたりは旧暦よ」だそうです。
知らなかったなあ‥‥。
そして韓国も旧暦を併用しているんですね。
旧正月もちゃんと祝日(三連休)になるそうですね〜。
バーゲンセールも旧暦の年末前なんだそうですね〜。

俳句の季語のおはなしは、
いずれご紹介しますのでおたのしみに〜!

さて誕生日を旧暦で祝うという習慣、面白いです。
しかしこれって、新暦は太陽暦なので、
誕生日って「太陽としては、同じ日」ですよね。
旧暦で祝うということは
「月としては、その日じゃないんだよ」ということか。
じゃあ太陽の祝いと月の祝いを両方すればいいのかな?
自分ので調べてみましたら、
1966年3月12日は旧暦二月二十一日でした。
そして来年のぼくの誕生日は4月8日になります。
決めました。太陽の誕生日(新暦)と月の誕生日(旧暦)で、
2回、祝うことにしました。

続いては台湾のようすです。


ほぼにちわ。
以前台湾に住んでいましたが、
「旧暦」での生活がまだ残っています。
「中秋の名月」は
日本ではテレビの天気予報で言われないとわからないけど、
あちらのカレンダーを見ると「中秋節」がはっきりわかる
(と言うより、休日になります)ので、
ちょっとした優越感があります。

でも正月も旧暦の正月でお祝いするので、
あちらでは太陽暦の12月は31日まで仕事、
1月は1日だけが休みで2日から学校や仕事なので、
「皆コタツでテレビ見てるのに‥‥」
なんて思っていました。
だから、あちらにいる間、
日本の正月に併せて帰国したことはありません(涙)。

(おもろ)

日本と外国とをむすぶ仕事をなさっているかたは
時差になやまされるといいますが、
暦のちがいにも悩まされちゃうんですね!
ぼくらも旧暦を併用すれば
アジアの国々とはもうちょっとスムースに
仕事ができるかも。
「ほぼ日ストア」の商品も
中国などで製造しているものがありますから
そのあたり、実務的に知っておくとよさそうです。
「ほぼ日ストア」のチームに伝えておきます。

次は、中国レポートです。


七夕の話に思わず反応してしまいました。
中国の情人節(バレンタインデー)は
2月14日以外にも、
旧暦の七月七日があると、
中国留学中の友人から聞きました。
そして、
旅行で旧暦の七月七日に中国に行っていたのですが、
街中には大きな花束を持った男の子が
たくさんいました。
しかも今年は閏月がある為、
七月が2回あるらしいので、
中国では3回バレンタインデーが
あるってことになるのかなぁ?
中国や韓国では、
まだまだ旧暦が残っているみたいです。
このコンテンツをきっかけに日本も
旧暦感覚が復活したらいいなぁと思います。

(hiro)

バレンタインデーのことを「情人節」っていうのも
すごいけど、七夕もそういう日になってるんですね!
七夕はもともと中国の行事ですけど、
最初は魔よけ的な意味で、のちに織姫と彦星の伝説から
機織りの上達を祈る行事に変化してきたんだそうです。
そこからさらに、
恋愛系の願掛けになったのかもしれませんね。

さて、まだまだいっぱいメールをいただいているのですが、
長くなっちゃいましたので、今日はここまで。
またあらためて、紹介させていただきますね。
「うちのほうでは、こんなだよ〜」というレポートや、
近松先生に訊いてみたいことなどありましたら
どうぞメールをお寄せください!

次回から、
“「ほぼ日」でもおなじみのあの噺家さん”こと
立川志の輔さんと、近松先生と、糸井重里による
“旧暦鼎談”をおおくりします。
どうぞ楽しみにお待ちくださいませ。

イラストレーター:玉井升一
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