糸井 |
メールで
「新月の日に何かことを始めると、
うまくいくと言われて、
私は何かやるときには、
新月から始めるようにしてます」
という人がいたんですけど、
そんなふうなことを、
昔はみんな考えてたんでしょうね。 |
近松 |
そうかもしれませんね。 |
糸井 |
そのメールの意味はつまり、
新月は真っ黒のところから、
徐々に明るくなってくるから、
末広がりだ、ということですかね。 |
近松 |
そうだと思いますよ。 |
糸井 |
増えていくということに対して、
増殖していくということに対して、
すごい信仰があった、ということですね。
増殖信仰ですね。 |
志の輔 |
そういうことでしょうね。 |
糸井 |
いや、それは農業だってさ、
増えていくということを
アテにしてやっているわけだし、
芸人さんとかは、
お客さんが増えていくみたいなことを考えて、
きっとゲン担いでたんでしょうね。 |
志の輔 |
かもしんないですね。
だから、お祭りなんて
みんなそうだったんじゃないですかね。
月夜の晩にやるでしょう、絶対。
満月の晩の明るい夜に。 |
近松 |
絶対そうですね。
月明かりがなくて暗かったら、
踊れないというのもあるんですが。(笑) |
志の輔 |
タヌキだってね。(笑) |
近松 |
タヌキだって踊れないです。
月のない夜に。 |
志の輔 |
新月タヌキ城とかないもんね。 |
近松 |
真っ暗ですよ。
本当に暗かったはずですから。 |
糸井 |
でも、盆踊りって15日だとしたら、
末広がりじゃないとも言えるね。
そのあとは、新月に向かう。 |
近松 |
あ、そういう意味では違いますね。
ピークになったところが満月ですね。 |
糸井 |
あ、宴の後ですね。徐々にしぼんでる。 |
近松 |
またひと月、半月待とう、と。 |
糸井 |
祭りの切なさは、そんなところからも
来ているのかもしれませんね。 |
近松 |
祭りは、一番いいときにやるんです。
二十四節気の「立春」や「立夏」も
ピークになったところ、という考え方ですよ。
例えば、立春の場合は、
「もうこれ以上寒くなりませんよ」
という日のことを指します。
寒さのピークが次の始まりだ、ということです。
今日まで寒いのでガマンしていきましょう。
このあとは、もう暖かくなっていく一方です。
という。 |
糸井 |
それも「満月、新月」っぽい考えですね。 |
近松 |
そうですね。「満ちる」というポイントが
重要なんですね。
そこからさまざまな分岐が始まる。 |
糸井 |
ここからこっち行ったらもう。
明日から春だから、と。 |
志の輔 |
陰と陽の考え方ですかね? |
糸井 |
昔の人のその陰陽な考え方というのは、
おもしろいですね。
みんなそうなってますね。 |
|
志の輔 |
いま、月の満ち欠けが入っている
カレンダーって売れてるらしいですね。
バイオリズムみたいなこと、
気になるんでしょうかね?
丸の黒い部分と白い部分の割合で、
何かがわかっていくっていうのを
うすうすわかってるんでしょうか? |
糸井 |
その意味では、諸行無常だの、
栄枯盛衰だのっていう、
この黒と白が順番に同じ分量来てるよ、
という思想が非常に生まれやすいですね。 |
近松 |
そうですね。 |