むかしの暦で、いまを楽しむ。 旧暦と暮らす「ほぼ日」の12か月。
2007-01-02-TUE
旧暦:十一月十四日
季節感がないからこそ、暦。


志の輔 先生、太陰太陽暦を使っていたのは、
日本だけですか? 
近松 日本で使われていた暦は、
もともと中国から来たものです。
志の輔 中国から。
近松 はい。
志の輔 太陰太陽暦を使ってるのは、
アジアのこのへんだけですか。
アメリカというのは、もちろん太陽暦?
近松 はい。アメリカは、独立したときから太陽暦ですね。
ヨーロッパですと、
ローマの時代は太陰太陽暦を
使ってたようなんです。
で、太陽暦に変えたのが、シーザーなんです。
志の輔 あ、そうだ。あ、習った、習った。
近松 習いました?
志の輔 カエサル。
カレンダー、これから、今日からカエサル。(笑)
え、今使ってるとこはどこもないですね。
近松 ええと、太陰太陽暦は、
民間レベルで使ってるところはありますよ。
志の輔 国としては?
国民全員が太陰太陽暦を中心に生きてます、
というところは?
近松 ちょっと私も調べてないんですけども、
たぶん無いと思います。
志の輔 もうないんでしょうね。
近松 でも、太陰暦を使ってるところはあるんです。
イスラムの国は、太陰暦です。
太陰暦と太陽暦のミックスじゃなくて、
今でも太陰暦のみを使っています。
志の輔 うわぁ。
近松 信仰のことに関しては、イスラム暦という太陰暦。
イスラムの暦というのは、
まさに、満月は1年必ず12回という暦です。
志の輔 必ず?
近松 ええ。13回の時はないです。
志の輔 それは?
近松 純粋に月の運行だけが関係する
「太陰暦」だからです。
糸井 月だけ。
近松 ですから、太陽暦と比べると、
1年に10日ずつずれていくわけですね。
3年でひと月ずれていって、
18年たつと、太陽暦と比較して、
半年違っちゃいます。
志の輔 どうしましょう。
近松 どうしましょう、なんだけども、
そう考えるのは、
志の輔さんが、日本に生きてるからなんですよ。
日本の場合は、
7月と1月では気候の違いがありますよね。
たぶん、イスラムの中東あたり行くと、
1月でも7月でもそんなに気候は変わらないので。
志の輔 なるほど。あまり気にならない(笑)。
糸井 それを想像するのは難しいですね!
そうか、俺らは四季があるんで、
1月と7月の違いとかを、
ものすごく意識するんですね。
4月に雪が降ったとかいったら、もう大騒ぎだもんね。
四季があるから、
「ずれる」という感覚があるんですよね。
近松 イスラムのほうの国々では、
「ずれている」という感覚はないんでしょうね。
年がら年中、ほぼ同じ気候だったら。
糸井 その人たちと普通に会話して、
こう「ずれちゃうんじゃない?」とか言ったら、
もうほんとにキョトンとされるんでしょうね。
そうか。
リズムがあったから、ズレがわかるわけで、
日本人はじゃあその意味では、
ものすごく微妙なリズムを認識してますね。
さっきの、忠臣蔵について語ってる、
ということ自体が、細かいじゃないですか。
「12月14日じゃなくて、1月30日」
「なるほど」って、
そんなの、冬でいいじゃん、みたいな。
中近東でそんな話したってね、通じないもんね。
近松 中近東はその意味で、暦が必要だったんです。
糸井 あ、逆に。
近松 中近東のほうでは、一年を通じて
気候が一定の地域が多いですから、
日付がないと、
今がいつだかを把握しにくいわけですね。
エジプトは大変ですよ。
一年のある時期に、ナイル川は必ず氾濫します。
それは、上流で雨が沢山ふる季節があるから、
川の氾濫が起こるんですね。
でも、河口にあるエジプトだと、
その「雨がふります」ということが
わからないんですよ。
だから、上流のほうで雨が降る時期はいつか、
ということを暦で把握するしかないんです。
糸井 つまり、寒いだの暑いだのでわかんないけども、
数字で測ってれば、
氾濫の時期がある程度予想できる。
近松 そうです。それが暦の始まりなんです。
でも、日本では
体系的な暦って必要なかったんですね。

(続きます。)

イラストレーター:玉井升一
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