志の輔 |
先生、太陰太陽暦を使っていたのは、
日本だけですか? |
近松 |
日本で使われていた暦は、
もともと中国から来たものです。 |
志の輔 |
中国から。 |
近松 |
はい。 |
志の輔 |
太陰太陽暦を使ってるのは、
アジアのこのへんだけですか。
アメリカというのは、もちろん太陽暦? |
近松 |
はい。アメリカは、独立したときから太陽暦ですね。
ヨーロッパですと、
ローマの時代は太陰太陽暦を
使ってたようなんです。
で、太陽暦に変えたのが、シーザーなんです。 |
志の輔 |
あ、そうだ。あ、習った、習った。 |
近松 |
習いました? |
志の輔 |
カエサル。
カレンダー、これから、今日からカエサル。(笑)
え、今使ってるとこはどこもないですね。 |
近松 |
ええと、太陰太陽暦は、
民間レベルで使ってるところはありますよ。 |
志の輔 |
国としては?
国民全員が太陰太陽暦を中心に生きてます、
というところは? |
近松 |
ちょっと私も調べてないんですけども、
たぶん無いと思います。 |
志の輔 |
もうないんでしょうね。 |
近松 |
でも、太陰暦を使ってるところはあるんです。
イスラムの国は、太陰暦です。
太陰暦と太陽暦のミックスじゃなくて、
今でも太陰暦のみを使っています。 |
志の輔 |
うわぁ。 |
近松 |
信仰のことに関しては、イスラム暦という太陰暦。
イスラムの暦というのは、
まさに、満月は1年必ず12回という暦です。 |
志の輔 |
必ず? |
近松 |
ええ。13回の時はないです。 |
志の輔 |
それは? |
近松 |
純粋に月の運行だけが関係する
「太陰暦」だからです。 |
糸井 |
月だけ。 |
近松 |
ですから、太陽暦と比べると、
1年に10日ずつずれていくわけですね。
3年でひと月ずれていって、
18年たつと、太陽暦と比較して、
半年違っちゃいます。 |
志の輔 |
どうしましょう。 |
近松 |
どうしましょう、なんだけども、
そう考えるのは、
志の輔さんが、日本に生きてるからなんですよ。
日本の場合は、
7月と1月では気候の違いがありますよね。
たぶん、イスラムの中東あたり行くと、
1月でも7月でもそんなに気候は変わらないので。 |
志の輔 |
なるほど。あまり気にならない(笑)。 |
糸井 |
それを想像するのは難しいですね!
そうか、俺らは四季があるんで、
1月と7月の違いとかを、
ものすごく意識するんですね。
4月に雪が降ったとかいったら、もう大騒ぎだもんね。
四季があるから、
「ずれる」という感覚があるんですよね。 |
近松 |
イスラムのほうの国々では、
「ずれている」という感覚はないんでしょうね。
年がら年中、ほぼ同じ気候だったら。 |
糸井 |
その人たちと普通に会話して、
こう「ずれちゃうんじゃない?」とか言ったら、
もうほんとにキョトンとされるんでしょうね。
そうか。
リズムがあったから、ズレがわかるわけで、
日本人はじゃあその意味では、
ものすごく微妙なリズムを認識してますね。
さっきの、忠臣蔵について語ってる、
ということ自体が、細かいじゃないですか。
「12月14日じゃなくて、1月30日」
「なるほど」って、
そんなの、冬でいいじゃん、みたいな。
中近東でそんな話したってね、通じないもんね。 |
|
近松 |
中近東はその意味で、暦が必要だったんです。 |
糸井 |
あ、逆に。 |
近松 |
中近東のほうでは、一年を通じて
気候が一定の地域が多いですから、
日付がないと、
今がいつだかを把握しにくいわけですね。
エジプトは大変ですよ。
一年のある時期に、ナイル川は必ず氾濫します。
それは、上流で雨が沢山ふる季節があるから、
川の氾濫が起こるんですね。
でも、河口にあるエジプトだと、
その「雨がふります」ということが
わからないんですよ。
だから、上流のほうで雨が降る時期はいつか、
ということを暦で把握するしかないんです。 |
糸井 |
つまり、寒いだの暑いだのでわかんないけども、
数字で測ってれば、
氾濫の時期がある程度予想できる。 |
近松 |
そうです。それが暦の始まりなんです。
でも、日本では
体系的な暦って必要なかったんですね。 |