酪農をやっている我が家にとって、
犬は欠かすことのできない存在です。
いまも2匹のおじいちゃんが元気いっぱい
つとめを果たしてくれています。
ですがこれは、そんな2匹の前にいた犬の思い出です。
それまでいわゆる「雑種」と呼ばれる犬しか
飼ったことのなかった我が家に、
血統書つきのゴールデンレトリバーがやってきたのは、
私がまだ中学生の頃。
でも血統書つき‥‥なーんて犬本人には関係なくて、
我が家に来て早々に汚れた牛舎の中でハシャぎ、
あっという間に藁と牛臭さにまみれた彼。
愛嬌たっぷり、でも穏やかで賢く
ほんとうに優しい犬でした。
「銀二郎」と名づけました。
自宅敷地内に放して飼っていたのですが、
どんなに自由でも、
ニンゲンの家の玄関が開けっ放しでも、
その敷居をまたぐことはありませんでした。
だけどそんな彼が一度だけ、
その玄関をくぐり、家の中まで入ったことがあります。
その日、家の中には足の自由が利かず、
車椅子で生活をしていた祖父だけがいました。
その祖父の足元まで彼は進み、
そして何度か頭をなでてもらい、
また玄関から外に出ていったそうです。
祖父は犬が好きでした。
でも老いて体の自由が利かなくなってからは、
犬にふれることはありませんでした。
だから銀二郎が家の中まで入ってきたことに
とても驚いてはいたけれど、
同じくらいたのしそうにうれしそうにしていました。
そしてその数日後、車椅子に座ったまま
祖父は静かに息を引き取りました。
銀二郎には祖父に残された時間が少ないことが
わかっていたのかもしれません。
だから、さようならを言うために
踏み入ることのなかった家の中まで
自ら入ってきたのかなぁ、
なんて彼が逝ってしまって10年が経ついまでも
家族の間で話題に上ります。
ほんとうに不思議な子でした。
いまはきっと、空の上で祖父と並び
2代目・銀二郎の働きぶりを眺めているのかな(笑)。
(こ かなこ)
うん、そうですね、
犬や猫は匂いでわかりますね。
どこかの病院で
腫瘍を嗅ぎ分ける猫がいるって
聞いたことがあります。
人間よりそうとう鋭いんだなぁと思った。
(つづきます)
2015-03-18-WED