第七回 今回はボビーがK-1に出たみたいなものです
リリー BJ(リリーさんのマネージャー)が
この間、糸井事務所にお邪魔した時に、
糸井さんが
「こういうのはあんまり褒めちゃダメなんだ。」
『家族解散』を書いた時の自分の経験から
「こういうのをあんまり褒めると、
 リリーが照れくさくなるから。
 あんまりそんな褒め方をしても。
 一回書いたところで
 もう終わってるんだし。」
と、おっしゃってたっていうのを聞いて。
糸井 うん。
それはものすごく言いたいんですよね。
リリー 一度、糸井さんが
「すごい嫌だなあ」
と思いながら書いて、
その照れくささとかを
経験したからなんでしょうね。


糸井 僕はね、リリー・フランキーという人は
小説の器よりも
大きい人だっていうふうに思ってるんです。
これは褒めてるっていうよりか、
法則として言ってるんだけど、
鶴瓶さんが落語を真剣にやんないようにと
俺、思ってるんですよ。
重要なのは鶴瓶の方が落語よりデカい。
つまり、鶴瓶がやる落語っていうのは、
鶴瓶の一部であると。
落語の中にはそれだけを渡しとけばいいんで、
落語と一緒に心中する必要は全然ないと。
リリー・フランキーの小説も
たぶんそうだと思うんですよ(笑)。
リリー・フランキーが、
褒められてるような世界にいる人に
なっちゃったら、
近所でウンコしてる人を
発見できないじゃないですか(笑)。
リリー インタビューとかでも、
「これからはどうされるつもりですか?」って。
今まで通りでしかないですよね(笑)。
何かこの1冊で
今までの人生が転換なんかするわきゃないし、
本単体として見てもらいたいだけで、
ここが何かの転機のみたいなことになると
すごく困るんです。
「おでんくん」に関しては、
ほんとに読んでください、
見てくださいっていうのに
何の抵抗もないんですよね(笑)。

※NHK教育テレビで毎週金曜日夕方
 「天才ビットくん」の中で放映中。
 小学館「おでんくん」WEB
 「おでんくん」アニメ公式WEB
 2種類のサイトに加え、
 世田谷公園前で
 おでん屋台を経営してた時期があった。
 (屋台は現在閉鎖中。)
糸井 「おでんくん」は表現として表現したけど、
これは表現になる寸前のものまで入れた方が
表現になると思って書いたものだから、
本人はとにかく
書き終わったんだというところで
俺は楽にしてあげたいですよ(笑)。
リリー たぶん、この本は今までの
俺の本を読んでくれてた人の半分は
「何だこんなの、こんなの求めてねえよ」
って人がいると思うんですよ。
でもまあ、常に、
僕は天の邪鬼じゃなくて
「そうあるべきだ」
みたいなのがちょっとあって。
糸井 うんうん。
リリー このタイミングでほんとに
もう下ネタの集大成みたいなのを今出したら、
それはサービス満点なんだと思うんですよ。
サービス精神で、
会った時にたくさんサインをするとか
そういうのはあるけど、
その人たちを満足させるために
当て込んでものを作ってたら
自分で飽きちゃうっていうか
そういう抵抗を繰り返して
おでん君をやったりしてるうちに、
すごく平凡なものをやることが
一番抗ってる俺の感じであるとか。
今までと違って1あったことを
どれだけ10おもしろくするか
っていうことだけど、
1を1のまま書くストレスっていうか
そうしていかないと
なるべくケレンを持たないようにしないと、
自分で嫌になるっていうか、
そういうやり方をしないときつい。

糸井 それはだけどさ、
今までプロレスを
さんざんやってきてるわけだからさ、
疲れるでしょう。
リリー それまでプロレスやってたのが
急に今、プライドやってるみたいな
ものですからね。
糸井 おおーっ。
リリー だからプロレスに
普通に戻るって感じですからね。
糸井 いやまあ、
おもしろい経験をしたってことなのかなあ。
リリー 俺の思いの中に
今まではすごい対象と
距離をとってたんだけど、
今回1回ちょっと丸出しで出たのも、
ボビーがK-1に出た
みたいなことなのかもしれないです(笑)。
糸井 ああ。あれはやっぱり
おもしろかったもんねえ。
「ボビー、
 どこまで持たせるつもりだろうな」
って思ったね(笑)。
リリー あははは。
俺、あの後ボビーは
K-1は常に参戦するのかと思った。
でも、普通にテレビタレントに戻った(笑)。
糸井 (真似して)ジョーダンジャネエヨ。
マジカヨ。
あれが今だと思うんですよね。
もう即断ってたよね。
リリー (笑)
糸井 コロスキカヨってのもあったよね。
いや、あれはほんと拍手喝采だなあ。
二度と出ないことが最高の価値ですよね。

(つづきます!)
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2005-08-14-SUN



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