糸井 |
みうらじゅんとリリー・フランキーの間に
何歳くらい差があるんですか? |
リリー |
みうらさんが6才年上です。 |
糸井 |
6才上か。ってことは
みうらの歳までは笑わせられるってことだね。 |
リリー |
前にそんな話をみうらさんとしてて、
俺が30代後半くらいのころ、
みうらさんに、
「俺いくつになるまで、
チンコとウンコがおもしろくできますかね?」
聞いたことがあるんです。
そしたらみうらさんは
「俺はもう、荒俣の道しかないんだ」って。
何かこう絵をスクラップにしても、
もう量を増やしてゆく美意識というか。
だからもう、戻るとか戻れないとかじゃなくて、
それを集積していくっていうか。
※もちろん荒俣宏さんのこと。
荒俣の道は後継者がそんなにいない。
小学生から癖がないと狙えないから
ポストがすごく空いてる。
とも語っている。
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糸井 |
だからみうらは
もう完全に仕事になったんですよね。
仕事っていうか、何だろう。
飯食う種になったんですよね、
みうらであることがね。 |
リリー |
最初に糸井さんところにみうらさんが来て、
勝手に自分のカセットをかけだした時から
やってることは同じなんですけど(笑)。
そのデタラメな感じが、
もう仕事として成立したっていう。
※こちらのページをご覧になると
その頃のことがよくわかる。 |
糸井 |
荒俣っていうのはよく分かるんだけど
でも、明らかにやっぱりある年からね、
身の回りにおもしろいことが
起こりにくくなるんですよ。 |
リリー |
はい。 |
糸井 |
それはたぶん、
ウンコを踏まないような歩き方を
身につけちゃうからなんですよね。
若い時には踏んじゃうんですよね。 |
リリー |
今たぶん、ウンコ踏んでも
苦笑いしちゃうと思うんです。
その場で苦笑いしたやつって、
そのことを文章書いてもおもしろくないんですよね。 |
糸井 |
そうだね。 |
リリー |
怒ったりとか
恥ずかしがったりしてる、
そのウンコにその瞬間を捕われた
ジタバタ感がないと。
でも大人になると、
ウンコも当然踏まないし、
ウンコを踏んでも苦笑いだし。 |
糸井 |
そうだよね。それはもう、
ネタにならなくなるんですよね。
さんま御殿に出てる時期が昔あって。
あの番組は事前に話すエピソードについての
アンケートを取るんですよ。
ある時、そのアンケートにだんだん
答えられなくなってる自分に
気がついたんですよ。
だから、
「聞かれてて答えて
おもしろいようなことが
僕の回りにもう起こらないんで無理です。」
と、アンケート用紙に書いちゃったんですよ。 |
リリー |
はははは。 |
糸井 |
そっから出演はなくなったんですけど(笑)。
無理ですって本気で書いたんですよね。
無理な人を出す意味はないし、
僕もそこで無理だけど出演させてください。
とお願いするつもりもないんで。
「あ、こういうことは
お別れなんだな」と。
そんな気持ちで書いたんだけど、
おもしろいのは、笑えない部分での話の方が
おもしろくなってきちゃったんですよ。 |
リリー |
やっぱり若い時におもしろいことっていうのは
ほんとに、畳の隙間につまってる
小さいところを引っ張り出して笑うようなもので。
糸井さんが突然、
「これからは農業だよ。」
って言って笑うようになるとか、
「お金だよ。」とか、
もっと、でかいものを、
笑えないところにいかないと。 |
糸井 |
遊びは今でも盛んなんですよ。
今まで以上にフルに遊んでると思うんだけど、
それを人にどうやって分からせるかっていうよりも、
人手が欲しい時に人手を呼び、
金が欲しい時に金を呼びっていう方法を
本気で考えた方がいいんで、
笑ってる暇があったらちょっと耕せよ
っていうところがあって。
そうなった時にはたぶん、
エッセイストではなくなってるんでしょうね。
でもそれはね、
松尾スズキ、リリー・フランキー辺りで、
僕はもう、「はあー、道が遠くなった」というか、
「あ、もう取り戻せない」と思ったんだよ。
みうらのやってることは見てたんで。 |
リリー |
あはは。リアルタイムで。 |
糸井 |
うん。見てたんでね。
その道は俺は違うって思ったんだけど、
おもしろいものはもう無理だって
思ったのはその辺ですよね。
これもある意味では、
その他のセットは誰も持ってないから、
ハリウッドごといるみたいなものじゃないですか。 |
リリー |
はい。 |
糸井 |
そう考えるとやっぱり凄いよ。
九州大陸は(笑)。
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リリー |
今までウンコを食べてる人のことを
書いてた俺が
おふくろのことを書くのが
おもしろくなったのも、
成り立ちとしては違うのかもしれないけど、
糸井さんが「農業だよ」って言った時に、
俺すごいおもしろかったから(笑)。 |
糸井 |
はははは。 |
リリー |
その闇雲にデカい感じっていうか。
もう小ネタじゃなくて
大きなもので笑えるっていうかね。 |
糸井 |
そうね。表現する前に
済んじゃってるおもしろさですよね。
まじめにやってるもんねえ。
50種類くらいの野菜の
種まきから収穫までを延々と撮影した
ドキュメンタリービデオを撮ってるんだけど、
映像技術が発達してるからできるんで、
本でそういうことをやった人は
いるかもしれないけど
DVDを作った人なんか
世界でもいないと思うんですよ、
それを作ってるっていうのは
実は俺は生まれて初めて世界で
初めてのことしてるんじゃないかな
っていう気持ちもあるんで、
冗談としては笑ったりはしないんだけど、
何だろう、妙におかしいんですよね。
しかも全編ハイビジョン映像ですからね。 |
全員 |
(笑) |
糸井 |
おかしいですよね。
可能性としてはフランス人が買おうが、
ナイロビの人が買おうが、
そのビデオは役に立つんですよね。
そんなこととかね。何だろうね。
(つづきます!)
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