第八回 今、ウンコ踏んでも苦笑いしちゃうと思うんです
糸井 みうらじゅんとリリー・フランキーの間に
何歳くらい差があるんですか?
リリー みうらさんが6才年上です。
糸井 6才上か。ってことは
みうらの歳までは笑わせられるってことだね。
リリー 前にそんな話をみうらさんとしてて、
俺が30代後半くらいのころ、
みうらさんに、
「俺いくつになるまで、
 チンコとウンコがおもしろくできますかね?」
聞いたことがあるんです。
そしたらみうらさんは
「俺はもう、荒俣の道しかないんだ」って。
何かこう絵をスクラップにしても、
もう量を増やしてゆく美意識というか。
だからもう、戻るとか戻れないとかじゃなくて、
それを集積していくっていうか。

※もちろん荒俣宏さんのこと。
 荒俣の道は後継者がそんなにいない。
 小学生から癖がないと狙えないから
 ポストがすごく空いてる。
 とも語っている。


糸井 だからみうらは
もう完全に仕事になったんですよね。
仕事っていうか、何だろう。
飯食う種になったんですよね、
みうらであることがね。
リリー 最初に糸井さんところにみうらさんが来て、
勝手に自分のカセットをかけだした時から
やってることは同じなんですけど(笑)。
そのデタラメな感じが、
もう仕事として成立したっていう。

こちらのページをご覧になると
 その頃のことがよくわかる。
糸井 荒俣っていうのはよく分かるんだけど
でも、明らかにやっぱりある年からね、
身の回りにおもしろいことが
起こりにくくなるんですよ。
リリー はい。
糸井 それはたぶん、
ウンコを踏まないような歩き方を
身につけちゃうからなんですよね。
若い時には踏んじゃうんですよね。
リリー 今たぶん、ウンコ踏んでも
苦笑いしちゃうと思うんです。
その場で苦笑いしたやつって、
そのことを文章書いてもおもしろくないんですよね。
糸井 そうだね。
リリー 怒ったりとか
恥ずかしがったりしてる、
そのウンコにその瞬間を捕われた
ジタバタ感がないと。
でも大人になると、
ウンコも当然踏まないし、
ウンコを踏んでも苦笑いだし。
糸井 そうだよね。それはもう、
ネタにならなくなるんですよね。
さんま御殿に出てる時期が昔あって。
あの番組は事前に話すエピソードについての
アンケートを取るんですよ。
ある時、そのアンケートにだんだん
答えられなくなってる自分に
気がついたんですよ。
だから、
「聞かれてて答えて
 おもしろいようなことが
 僕の回りにもう起こらないんで無理です。」
と、アンケート用紙に書いちゃったんですよ。
リリー はははは。
糸井 そっから出演はなくなったんですけど(笑)。
無理ですって本気で書いたんですよね。
無理な人を出す意味はないし、
僕もそこで無理だけど出演させてください。
とお願いするつもりもないんで。
「あ、こういうことは
 お別れなんだな」と。
そんな気持ちで書いたんだけど、
おもしろいのは、笑えない部分での話の方が
おもしろくなってきちゃったんですよ。
リリー やっぱり若い時におもしろいことっていうのは
ほんとに、畳の隙間につまってる
小さいところを引っ張り出して笑うようなもので。
糸井さんが突然、
「これからは農業だよ。」
って言って笑うようになるとか、
「お金だよ。」とか、
もっと、でかいものを、
笑えないところにいかないと。
糸井 遊びは今でも盛んなんですよ。
今まで以上にフルに遊んでると思うんだけど、
それを人にどうやって分からせるかっていうよりも、
人手が欲しい時に人手を呼び、
金が欲しい時に金を呼びっていう方法を
本気で考えた方がいいんで、
笑ってる暇があったらちょっと耕せよ
っていうところがあって。
そうなった時にはたぶん、
エッセイストではなくなってるんでしょうね。
でもそれはね、
松尾スズキ、リリー・フランキー辺りで、
僕はもう、「はあー、道が遠くなった」というか、
「あ、もう取り戻せない」と思ったんだよ。
みうらのやってることは見てたんで。
リリー あはは。リアルタイムで。
糸井 うん。見てたんでね。
その道は俺は違うって思ったんだけど、
おもしろいものはもう無理だって
思ったのはその辺ですよね。
これもある意味では、
その他のセットは誰も持ってないから、
ハリウッドごといるみたいなものじゃないですか。
リリー はい。
糸井 そう考えるとやっぱり凄いよ。
九州大陸は(笑)。

リリー 今までウンコを食べてる人のことを
書いてた俺が
おふくろのことを書くのが
おもしろくなったのも、
成り立ちとしては違うのかもしれないけど、
糸井さんが「農業だよ」って言った時に、
俺すごいおもしろかったから(笑)。
糸井 はははは。
リリー その闇雲にデカい感じっていうか。
もう小ネタじゃなくて
大きなもので笑えるっていうかね。
糸井 そうね。表現する前に
済んじゃってるおもしろさですよね。
まじめにやってるもんねえ。
50種類くらいの野菜の
種まきから収穫までを延々と撮影した
ドキュメンタリービデオを撮ってるんだけど、
映像技術が発達してるからできるんで、
本でそういうことをやった人は
いるかもしれないけど
DVDを作った人なんか
世界でもいないと思うんですよ、
それを作ってるっていうのは
実は俺は生まれて初めて世界で
初めてのことしてるんじゃないかな
っていう気持ちもあるんで、
冗談としては笑ったりはしないんだけど、
何だろう、妙におかしいんですよね。
しかも全編ハイビジョン映像ですからね。
全員 (笑)
糸井 おかしいですよね。
可能性としてはフランス人が買おうが、
ナイロビの人が買おうが、
そのビデオは役に立つんですよね。
そんなこととかね。何だろうね。

(つづきます!)
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2005-08-16-TUE



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