糸井 いまは映画が封切られるということで
精力的に外へ出ている時期だと思うんですが、
もともとは、あんまり、出たくないんですか?
三谷 僕は、子どものころから
どちらかというと内向的な人間だったんです。
でも、僕は、自分がじつはもっと
社交的だっていうことを知ってるんです。
ただ、それを表に出したことがなかったんですね。
で、これは、小学校のときに
思ってたことなんですが、
いつか自分の社交的な部分を
出したいと思うんだけど、
急に社交的になるとおかしいじゃないですか。
だから、なにかきっかけがないかなと思ってて、
たとえば、みんなの見てる前で
頭に何かが落ちてくるとか、
サッカーボールが飛んできて当たるとか、
そういうなにかのアクシデントが。
糸井 はっきりした理由が。
三谷 そしたら、そのつぎの日から
変えられるのになってずっと思ってたんです。
でも、けっきょくそういうことがなかったので、
内向的なまま大人になってしまった。
糸井 チャンスのないまま(笑)。
三谷 基本的には、いまだにそうなんです。
あまり外に出て行くタイプじゃない。
かといって、みんなから
無視されるのはイヤなんですよね。
糸井 (笑)
三谷 じつはさっきもそういう話を
八嶋(智人)くんとしてたんですけど。
あの、八嶋さんと戸田恵子さんが
よくご飯を食べてるっていう話を聞いて、
ふたりとも僕はよく知ってるんで、
「なんでそのとき僕に声をかけてくれないのか」
って言ったんです。
糸井 そういうセリフ、多いですね(笑)。
三谷 実際(笑)。
で、八嶋くんが言うには、
「いや、三谷さんに声かけても、
 どうせ来ないでしょう」と。
そうなんです。行かないんです。
糸井 はははははは。
三谷 行かないですけども、僕の理屈としては、
「声をかけられたけど断る」
というのが大事なことなので。
そのセオリーというか、
その流れをちゃんとみんなわかってほしいという。
糸井 わかってほしいですね。
三谷 昔は声をかけてくれてましたけど、
やっぱり僕がどこにも出向いていかないので
最近はかけられなくなっていて、
知らないあいだにみんなで集まってるらしい。
それはイヤなんです。
糸井 たぶん、設定でいうと、
三谷さんに役が与えられてないんですよね。
つまり、八嶋さんが監督だとして、
三谷さんという人に与える役を思いついてない。
だから、始末に負えないんですよ。
「声をかけようか、あ、でも、始末に追えないな」
ってなっちゃうんだと思うんです。
三谷 ああ、そうかもしれませんね。
糸井 そういうことでしょう、たぶん。
だって、みんなは、我慢しながら
「オレはこの役で」っていうことで、
不本意なんだけど「この役で扱っていいよ」
という気持ちで生きてるんです。
ところが三谷さんは贅沢だから、
複雑な自分のままで、
「オレに役をくれ」って言ってるんです。
三谷 そのとおりですね(笑)。
糸井 でも、つくり手の人って
どうしてもそうなりがちな気がするんですよね。
「こんなやんちゃなボク」っていうのを
言われればいつでもやるよ?
っていうつもりでいますよね。
三谷 そうですね。
糸井 やんちゃな男でも、スケベな男でも、
やれと言われればやるよと。
そういう仲間に呼ばれたら
オレは十分にスケベだぜと。
だけど、呼ばれるまえのところでは、
それは別に呼ばれてないんだから
表す必要ないっていう構造ですから。
三谷 そうですね。
糸井 なぜそれがわかるかっていうと、
ちょっと僕もそれ、あるんです。
三谷 (笑)
糸井 いま、僕は自分の話をしていたような(笑)。
やる気なんですよ、いつだって!
三谷 いや、本当にそういう状況を与えられれば、
僕はものすごい力を発揮するんですけどね。
なかなかそういう状況を
みんなが与えてくれないっていうのは
すべてのことにおいてありますね。
糸井 わかるわかる(笑)。
三谷 カラオケとかも好きじゃないし、
恥ずかしいし、自分から誘わないし、
当然、行っても自分から歌わないんですけども、
でも、どこか歌いたい気分になってきて、
だから、「順番ね」とかって言われると
すごくうれしいんですよね(笑)。
糸井 なるほど(笑)。
三谷 そうすると、歌う理由ができますよね。
いやでも自分の順番が来るんですから。
糸井 その気持ちもわかるなあ。
三谷さんとオレの違いはどこだろう‥‥。
ああ‥‥僕はちょっと我慢しますね。
つまり、カラオケで言えば、本当に歌いたければ、
照れくさいのをぐっと飲み込んで
「行こう」って誘いそうな気がしますね。
三谷 ああ、そうですか。
それは、けっこうすごいですね。
糸井 なぜかというと、
それをやらないと進まないから(笑)。
(続きます!)

2008-06-09-MON



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