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糸井 |
いつも三谷さんはスーツですか。 |
三谷 |
こういう場では、だいたい、そうですね。 |
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糸井 |
それは意識的に? |
三谷 |
映画を撮り始めるまでは
ネクタイなんか締めたことなかったんですけど、
映画の現場行ってみると、
あまりにもみなさんがラフな格好されてるので、
なにかちょっと自分なりのスタイルを
見つけなきゃいけないなと思って。
ヒッチコックとか背広でやってますもんね。
昔の映画監督はちゃんとネクタイしてたんだなと思って。 |
糸井 |
そういうことばっかり絶えず考えてるわけですね。 |
三谷 |
(笑) |
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糸井 |
僕が、あの映画(『ザ・マジックアワー』)を
観た直後だからそう思うのかもしれないですけど。
ほら、あれって、「映画の映画」じゃないですか。 |
三谷 |
そうですね。 |
糸井 |
もう、おもしろかったですよ。
いやぁ、おもしろかったー。 |
三谷 |
ありがとうございます(笑)。
なんか『THE有頂天ホテル』のときも、
「初のヅラ(カツラ)映画だ」という
独特のほめ言葉をいただきまして。 |
糸井 |
あれもおもしろかったです。
いろんな意味で、カツラの映画でした。
ご本人としては
「ヅラ映画」という評価はどうですか。 |
三谷 |
うれしかったです。 |
糸井 |
『有頂天ホテル』がヅラ映画だったとすると、
今度の『ザ・マジックアワー』は
ヅラを外したヅラ映画ですね。 |
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三谷 |
そう、そうなんです。 |
糸井 |
もう見事で。 |
三谷 |
本当のヅラでいうと、たぶん僕よりも、
伊丹(十三)さんのほうが先でしょうね。 |
糸井 |
あ、なるほど。 |
三谷 |
伊丹さんの映画にも、
すごい頭の人がいっぱい出てきますからね。
僕はそれを観て、
「あ、この特殊メイクはいいなあ」と思って、
お願いして紹介していただいたんです。
江川悦子さんという方なんですけど。 |
糸井 |
伊丹作品を手がけている人と同じ方なんですか。 |
三谷 |
同じ人なんです。 |
糸井 |
伊丹さんについては、きっと三谷さんは
たくさんの思いがありますよね。 |
三谷 |
そうですね、いろいろお世話にもなったし。
『ラヂオの時間』を撮っているときは
現場に遊びに来られたんです。
で、その年にお亡くなりになったので、
とてもびっくりしましたね。 |
糸井 |
ああ、そうですか。
『マルサの女』を撮ったあと、
『マルサの女2』を撮るときに、
僕は伊丹さんにお会いしたことがあって。
そのとき、伊丹さんは2本の映画の
プロデュースの構造について教えてくれたんです。
「『マルサの女』をこうだとするだろ?」
って丸をひとつグルッと描いて、
「この外側にまだ観てないお客さんがいるんだよ。
で、『マルサの女2』っていうのは
この丸の外側にいる人を狙ってるから、
丸の真ん中の『1』を見た人は、
ちょっと不満なんだよ、おそらく。
だけど、面積としては外側のほうがずっと多い。
僕は『2』でそれを狙ってるから」
ということを図まで描いて説明してくださって。 |
三谷 |
ああ、なるほど、さすがですね。 |
糸井 |
三谷さんの映画を見るたびに、僕は、
伊丹さんが説明してくれたことなんかを
ぼんやり思い出すんです。 |
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三谷 |
僕は、映画づくりのことを
ぜんぜん知らなかったので、
伊丹さんから教わったことは多いんです。
たとえば、伊丹さんは、
「スクリーンの中に
映ってるものだけがすべてなんだ」
「だから、撮影現場では
モニターの中だけを観てればいいんだよ」
っていうことをよくおっしゃっていて。
そうじゃない監督さんもけっこういらっしゃって、
むしろ古くから映画を撮ってらっしゃる方は、
俳優さんを目で見て演技指導をして、
っていうふうにする方も多いんですが、伊丹さんは
「そんな必要はない。
とにかくモニターだけを見てなさい」って。
僕は、そのことばが残ってるもんですから、
いまも、ずっとモニターの前にいますね。 |
糸井 |
きっと、最初は腑に落ちてなかったというか、
たんに、言われるがままにやってたんでしょうね。
そういうことが腑に落ちるまでっていうのは
けっこう長くかかりましたか。 |
三谷 |
やっぱりかかりましたね。 |
糸井 |
ああ、そうですか、やっぱり。 |
三谷 |
10年ですね。僕、この
『ザ・マジックアワー』が4本目ですけど、
やっと、やっと手習いの時期が終わったみたいな。
まだ、お試し期間の最終章ぐらいな感じかな
っていう気もしますけど。 |
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(続きます!)
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