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三谷 |
うーん、今日は、なんだか勉強になりますね。 |
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糸井 |
いや、変なこと言ってたら、すいません。 |
三谷 |
いやいやいや。 |
糸井 |
映画をね、すごく真剣に観ちゃったものですから。
いや、本当におもしろかったですよ。 |
三谷 |
うれしいです。ありがとうございます。 |
糸井 |
あの、真剣に観られて、しかも笑えるっていうのは
そんなにあることじゃないですから。
なんていうのかな、『THE有頂天ホテル』って
すごくおもしろかったんですけど、
僕はこんなに丁寧に観られなかったんです。
なんていうか、ジェットコースターに乗せられて、
どのくらいおもしろかったか
というのを感じてる間もなく、
つぎのシーンで笑っているというような感じで。
あの、これは完全に余談ですけど、
僕はジェットコースターを
設計している人に会ったことがあって、
いいジェットコースターというのは、
どのくらい怖いかというのを自分が全部
わかりながら怖がることができるんですよ。
ところが、ヘタなジェットコースターって、
「いま、なにがあったんだっけ?」というのが
わからなくなる怖さなんです。
僕は河口湖にある「フジヤマ」という
ジェットコースターが大好きで、つくった人に
「フジヤマはそのあたりが上手ですね」と言ったら
「それをわかっていただけると本当にうれしい」
っておっしゃってたんですけど。 |
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三谷 |
へぇーーー。 |
糸井 |
で、映画の話にもどると、『THE有頂天ホテル』って
もう大ヒットする映画だったと思うし、
本当に大笑いしてたんですけど、
なにがおもしろかったかを味わう時間を与えられず
つぎの笑いに行ってた気がするんです。
でも今度の『ザ・マジックアワー』は、
味わいつつ、つぎに行けたんです。
まぁ、そこが、いまの若いお客さんなんかだと、
「それ遅い」って言うのかもしれないっていう
ちょっとした怖さもあるんですけど。 |
三谷 |
そうなんですよね。
それも、談志師匠との話に出てきたんですけど、
どんどん笑うタイミングが
早くなってきているというか、
もう、出てきた瞬間に笑いたい!
みたいになってきてるなかで、
こういう映画が成立するんだろうか、というか、
「観てくれるんだろうか?」っていうのは
やっぱり不安なところなんですよね。 |
糸井 |
あの、興行収入としてのランキングと、
それから、映画としてよくできてたねっていうのと
両方をやんなきゃいけないんでしょうけど(笑)。 |
三谷 |
はい(笑)。 |
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糸井 |
「おもしろいよ」っていうことを
言ってくれる人が、ちゃんと街にいれば、
たぶん、大丈夫だと思うんです。
あの、すばらしく映画を味わいつつ、
最後のあたりは、泣いてるのか笑ってるのか
わからないっていうような時間を過ごしましたよ。
そのへんは本当にうまくいってたなあ。 |
三谷 |
ああ、うれしいですね。 |
糸井 |
あと、「喜劇です」っていう振る舞いというか、
喜劇の演出をこれだけしっかりと
ストイックに守り続けるって、
やっぱり相当ブレない、
強い意志が必要だったろうなと思ったんです。
「笑えちゃったからこっちでいいや」っていう
テイクの拾い方をしてるわけじゃなく、
ものすごく厳密にやってるように思えたんです。 |
三谷 |
やっぱり、1年半前に脚本を書きはじめたときに、
できあがったものをお客さんに
観てもらうことを想定しましたからね。
舞台の脚本って、そうじゃないんですよ。
幕が開いてからも、お客さんの反応を見ながら、
いくらでも変えられるんです。
そういう「あとでなんとかなる」という意識が、
いままで監督した映画3本には
ちょっと残ってたかもしれなくて、
映画はなんとかならないのにね。
そこが反省点だったんですけど、
今回の『ザ・マジックアワー』は、もう本当に、
「ここでお客さんは笑うんだ」
「そのためには、どうすればいいか?」
みたいなことを、カット割りを含めて、
全部想定しておいてクランクインしたんですね。 |
糸井 |
なるほど、なるほど。 |
三谷 |
それでもやっぱり予想しなかったことは
起こったりしましたけども、
少なくともこれまで撮った映画の中では、
もっとも台本に近いというか、
僕の頭に描いたものに近い形で
できあがったという気はします。
だから、それ以外のものは、
できるだけ排除したし、現場で盛り上がって、
ちょっとしたセリフを足したりもしたんですけど、
結果的にはほとんど編集でカットしました。 |
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糸井 |
ああ、それはすごいですね。
「おもしろいだろう?」っていう映画は
世の中にいっぱいありますけど、
やっぱり不愉快なのは、現場の「酔い」が、
イヤな匂いとして紛れ込んでることなんですよね。
まぁ、知っててわざとやるという
そうとう高度なテクニックもあるんでしょうけど、
観るほうからしてみるとやっぱり
「どっちかにしれくれよ」って思いますから。 |
三谷 |
そうですね。 |
糸井 |
この映画では、それをかなり
意識的に排除しているってことですよね。
そのストイックさはすごいなぁ。
だって、資料で読んだんですが、
西田敏行さんに、アドリブを禁じたんでしょ?
極端にいえば、あの人のアドリブが欲しくて
オファーする人もたくさんいるでしょうに。 |
三谷 |
あの、西田さんって、禁じてるのに、
なにかおもしろいことを
ついおっしゃってしまうんですよ。
しかも、やっかいなことに、
それがおもしろいんです(笑)。 |
糸井 |
(笑) |
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三谷 |
だから、現場でみんな笑うんですけども、
今回は「本当にお願いします!」というふうに。
それでも、なにか言っちゃうんですけどね。 |
糸井 |
今回も、最後のほうでは‥‥。 |
三谷 |
あそこはもう、アドリブOKなんです。
ラストの10分だけはアドリブOKにして
思いっきりやってもらったんです。 |
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(続きます!)
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