土屋 |
毎分の視聴率を、
コンマ1でもあげていく日テレの手法が、
この十年間では視聴率という面で
いちおう勝っていたわけです。
この前の年度で、フジテレビが
プライムタイムでうちを抜きましたが、
「コンマ1でも…」
の視聴率主義の勝利が
このまま続いていたとしたら、
テレビはもっと
ヤバイことになっていたと思うんです。
だから、三宅さんが
フジの中で広げようとしている
「やっぱり、おもしろいものがいいんだ」
という潮流みたいなものが、
間に合ってよかった……という気持ちは、
ちょっとあるんです。
こんなこと、本当は
言っちゃいけないんだろうけれども……。 |
三宅 |
ありがとう。
そういうのを
日テレの方から言われるのは、
うれしいですよ。
今でも若い連中が、
さんまさんと番組をやりだしたり、
『水10!』の連中にしても、
『めちゃイケ』の連中にしても、
ここ半年ぐらいで、フジが
いい雰囲気になってきていることは確かです。 |
土屋 |
ただ、この前たまたま見た
『お台場 明石城』では、
さんまさんにプレゼンをする
ディレクターたちが、
テレビの悩みやはらわたを、
出しきっちゃってる感じがしたんです。 |
三宅 |
うん。 |
土屋 |
「なんかそこは、
がんばって見せないようにしようよ」
とは思いました。 |
三宅 |
わかります、わかります。 |
土屋 |
さんまさんに対して、
フジテレビのバラエティを作りたい連中が、
テレビを使ってプレゼンをする。
そこのことを、会社として
場まで作って許してしまっていることには
「あれ?」という気持ちが、正直ありまして……。 |
三宅 |
おっしゃること、わかります。
あれは若手が企画を出す番組ですし、
ぼくは制作にタッチしてないんですけど、
まぁ、見には行ってるので
アドバイスはするんです。 |
糸井 |
「見には行ってる」んですか(笑)。
タフだなぁ。 |
土屋 |
(笑) |
三宅 |
見て、いろいろ言うんです。
若手はがんばって
企画を作っているんですけど、
企画をおもしろくしちゃ
いけないんですよね。あれは、
「若手ディレクターが
さんまさんに企画を出す番組」
と捉えてやっていればいいわけですから。
「企画を出すという雑談」に
しないといけないんですよね。
大マジだと恥ずかしいし……。 |
土屋 |
やっぱりどこかで、
バラエティの作り手や
テレビの作り手って、
しいたげられていないと
いけないような気がするんです。
「きみたちディレクターには
こういう場が与えられているから、
さんまさんと
一緒に出演してみたらどうですか?」
という番組を作って、
その場に部長とかがちゃんといて、
見守っちゃっている構図が見えている。
しかもそれが
メシの種として成立しているというと、
ぼくは
「そんなに甘やかしちゃいけないでしょう」
と思っちゃうんです。 |
三宅 |
たぶん、そういうふうに映るのは、
そこに出てくる
若いディレクターや部長役の港が、
役に徹していないんですよね。 |
糸井 |
なるほどね。
(註:この取材の後、三宅ディレクターは
「明石城」に大目付という役で
出演するようになり、
三宅ディレクター役をこなしている) |
三宅 |
『反省会』とか、
スタッフが出る場でも
ぼくはよく言うんだけど
「おまえら、出演者なんだから」
という一言なんですよ。
つまり、ふつうの部長ではなく
「港部長役」をやらなきゃいけないし、
ふつうのディレクターではなく、
「若手ディレクター役」を、やるべきでしょう。 |
糸井 |
うわぁ、
この三宅ディレクターは、やっぱりすごいね。 |
土屋 |
あー、なるほど。 |
三宅 |
だから、土屋さんのおっしゃるのは、
そのとおりなんです。
反省会でも、出る以上は出演者ですから。 |
糸井 |
三宅さん、仕事してましたもんねぇ。 |
土屋 |
ええ。
ちゃんと「三宅ディレクター役」でした。 |
三宅 |
ぼくは、やっています。
なんかひっかかることをやっていかないと、
ただの素人ですからね。
それじゃ、演者さんに
失礼なことだから、ダメなんです。 |
糸井 |
役割は、
そこにあるわけですからね。
それを素人なりにでも、
演じないといけないわけですね。
「さんまさんだけは、
どの場面でも必ずカタチにしてみせます」
というところで、つい
ぼくはあの番組を見ちゃうんだろうなぁ。 |
三宅 |
あそこにも
いいキャラクターはいるんです。
小さいときに親に逃げられて
父親がいないというディレクターがいる。
だったら、それが
そいつのキャラクターだから、
そこをつっこんで
「父をたずねて何千里、
という番組をやりたいです。
実は自分は……」
と企画にすれば、成立するんですよね。
自分のほんとうにやりたいことなんて、
どうでもいいことなんだから、
「あの番組の中で成立するおもしろい企画」
にしないといけない。
そこをみんなが
マジでやっちゃっているから、
土屋さんが見たように
映るんだろうなぁと思いました。 |
糸井 |
演じることって、
どういうものでしょう?
……たとえばぼくたちは、
本職はテレビに映る人ではないのに、
人に知られているじゃないですか。
「三宅さんのことは、
ひょうきん族の頃から、
存じあげています」
「土屋さんのことは、
電波少年のT部長として
存じあげています」
存じあげられちゃってることが、
おかしいですよね? |
三宅 |
糸井さんには、
ひょうきん族のときに
出ていただいたのですが、
ただ、あのときも、絶対に、
糸井さんには
「演じていただいていたはず」なんです。 |
糸井 |
そうなんですか?
例えば、T部長はいいんです。
「後ろ姿」という約束を作ってあるし、
土屋さんなのに「T部長」という
名前にしたじゃないですか。
ペンネームがついたおかげで
できることがあるでしょう?
ぼくは本名のままで来ているから、
たまにテレビに出ていても、
いつでも、
演じているかどうかがわからないんです。 |
三宅 |
いや、絶対に
演じてないといけないんですよ、たぶん。
もちろん、本業のときは本業でしょうけれど。 |